日本を代表する演出家、蜷川幸雄(1935-2016年)。数々の名舞台を創り上げ、「世界のニナガワ」と評された演劇界の巨匠。その人物像と作品ついて迫ります。

厳しさの中にある、本物の育成力

蜷川幸雄といえば、「稽古中に灰皿が飛んでくる」といった逸話があるほど、苛酷な演技指導で知られています。しかし藤原竜也を始め、その厳しさに鍛えられ磨き抜かれて、真の実力派として確固たる地位を築いた俳優は数知れず。

蜷川の舞台に立ちたいと渇望する舞台俳優は後を絶ちませんでした。これほどまでに恐れられ、また生涯の師匠として多くの人に慕われた演出家はいないでしょう。

蜷川幸雄とシェイクスピア

蜷川は、かのシェイクスピア作品も数多く手がけました。台詞に手は加えず、独創性あふれる演出で魅せるのが蜷川流。例えば世界的に高い評価を得た『NINAGAWA・マクベス』の舞台は日本の安土桃山時代。桜吹雪やお経など、小道具から音楽・照明にいたるまで日本のものを取り入れています。斬新な演出の中で、普遍的な人間心理を描き出す力はまさに天才的。シェイクスピアと蜷川の創り上げる世界に、誰もが惹き込まれます。

古典から現代劇まで幅広く手がけ、世界に通用する実力を発揮し続けた蜷川幸雄。その演出力で名舞台を、指導力で多くの一流俳優を生み出しました。蜷川の演出作品は、彼の名とともに演劇史に残り続けることでしょう。