『フィガロの結婚』を始めとするモーツァルトの3本の傑作オペラの台本を書いた作家ロレンツォ・ダ・ポンテ。『逃げろ!』は、彼の奇想天外な“逃げる”人生を、ロック・アレンジされた音楽に乗せて描き出す音楽劇となっています。2月10日の初日を前に、都内で実施された公開ゲネプロ&取材会の様子をお届けします。

やりたいことを好きに“やっちゃえ!” 2人の天才が自由をロックに歌う

口が上手く、女好き・ギャンブル好きのイタリアの詩人ロレンツォ・ダ・ポンテ。ヴェネツィアを追われてウィーンに逃げ出す時、オーストリアの宮廷楽長サリエリ宛の紹介状を手に入れ、イタリア・オペラを好むヨーゼフ2世への謁見に成功。そこで出会ったのが、天才・モーツァルトでした。

モーツァルトが作曲し、ダ・ポンテが台本を書いた『フィガロの結婚』は大成功。自身も天才だと思い込んだダ・ポンテは、更にモーツァルトと『ドン・ジョヴァンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』を完成させます。名声を手に入れたダ・ポンテ。しかしヨーゼフ2世の逝去と共に、徐々に風向きが変わっていきます…。

撮影:塩川雄也

かの有名なヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトとその台本作家を描いた作品。クラシックなオペラの世界を描いているのですが、なんと本作はロックテイスト!舞台上ではオーケストラ、ではなくバンドが生演奏し、厳粛な拍手よりも陽気な手拍子で盛り上がれます。かき鳴らすギターの音と共にクールに、時に可愛らしく歌い踊る登場人物たち。その姿は、遥か昔の手の届かない天才たちの物語ではなく、いつの世も共通した、人生をもがきながらも自由に謳歌しようとする人々の物語なのだと実感させられます。

撮影:塩川雄也

そしてそこには、貴族に向けた伝統的なオペラではなく、市民のための革新的で“バカバカしい”オペラを作りたいという、モーツァルトとダ・ポンテの想いが投影されているのです。

舞台には大掛かりなセットはなく、音楽と劇、をとことん楽しむ約2時間。自称天才のダ・ポンテを橋本良亮さん(A.B.C-Z)、天才作曲家モーツァルトを佐藤流司さんが演じるほか、渡邉美穂さん、弓木大和さん、内河啓介さん、細見大輔さん、篠井英介さん、村井國夫さんの全8名が舞台上で躍動します。

撮影:塩川雄也

タイトル『逃げろ!』に込められた意味とは?

舞台は白いストリングカーテンが垂れ下がっているのみのシンプルな構成。橋本さんは「スクリーンから映像が飛び出してくる3D映画のような舞台体験。僕たち自身がセットのような」と表現します。「わかる?流司」と問いかけると、佐藤さんも「本当にその通り」と同意。

佐藤さんは「公演時間自体はそんなに長くないのですが、感情の起伏が目まぐるしく動き回る作品なので、(短い時間の中でも)楽しんでいただけるのでは」と力を込めます。渡邉さんは「音楽も楽しんでもらいたい」とコメント。座長の橋本さんからは「(役名の)ココ、元気か?寝たか?」と日々の稽古場で気遣いがあったのだそう。

2人の“天才”を演じる橋本さんと佐藤さんについて、細見さんは「2人の天才が稽古場からしのぎを削って作り上げておりますので、2人の天才を、ぜひ見てください!」と絶賛。さらに村井さんも「読み合わせの後、立ち稽古から2人が台本を持たずにウワーッと捲し立てて話した姿に圧倒されて。台詞・芝居が毎日変わっていくのを側で見ていて、2人の成長が楽しい毎日でした」と話し、作品同様に2人が刺激し合い、切磋琢磨していたようです。

本作を通じて感じたテーマとして、橋本さんは「この作品は、“ヤバくなったら逃げろ”という言葉がキーになっています。この言葉に自分も助けられたなと。例え辛いことがあっても、ヤバくなったら逃げても良いんだよ、ということを伝えたい」と語りました。

撮影:塩川雄也

音楽劇『逃げろ!』~モーツァルトの台本作者 ロレンツォ・ダ・ポンテ~は2月10日に福岡・キャナルシティ劇場での初日公演を迎え、東京公演は2月21日から新国立劇場 中劇場にて上演予定。詳細は公式HPをご確認ください。

Yurika

想像以上にロックで、心躍るサウンドが楽しい作品!どんなにずるい男だと思われようが、しなやかなに逃げるダ・ポンテの姿は、少し窮屈な世の中を生きる私たちの身体中の力を抜いてくれる感覚がしました。