今月から渋谷のBunkamuraシアターコクーンにて、『アンナ・カレーニナ』が上演されます。当初予定されていた2020年の公演は、新型コロナウイルスの影響で全て中止になっていました。「シアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む」というコンセプトのDISCOVER WORLD THEATREシリーズでもある本作。2023年、満を持して幕を開けます。

様々な愛の形、そして問われる「生きること」の意味。

文豪トルストイの言わずと知れた名作『アンナ・カレーニナ』が原作となっている本作。あらすじは以下の通りです。

舞台は19世紀ロシア。主人公アンナは、格式高い政府高官の夫カレーニンと、1人の幼い息子と共に暮らしていました。恋を知らないまま若くして嫁いでいた彼女は、ある日偶然出会った若い将校ヴロンスキーと一目で惹かれ合います。

妻の浮気に気づき、忠告するカレーニン。それでもアンナは「ヴロンスキーを愛している」と自分に芽生えた初めての恋心を明かすのでした。離婚が成立しないまま、やがて彼女はヴロンスキーとの間に娘をもうけます。しかし周りから冷ややかな視線を注がれ、精神的に追い詰められていきます。

一方で、アンナの兄オブロンスキーの旧友リョーヴィンは、アンナの兄の妻ドリーの妹キティに求婚し断られていました。キティも将校ヴロンスキーへの恋心を打ち砕かれていましたが、リョーヴィンからの2度目のプロポーズを受け入れます。

堅実な愛を手に入れたリョーヴィン夫妻とは対照的に、不安定になっていくアンナ。ヴロンスキーは献身的に支えますが、アンナは彼に新しい女性の影を感じていました。猜疑心を拭いきれないアンナは街を彷徨い‥‥

演出家フィリップ・ブリーンによる、新解釈版。

映画やバレエ、舞台などで過去に何度も題材になっているこの『アンナ・カレーニナ』。今回は、イギリスの演出家フィリップ・ブリーンによる新解釈版という点が見所です。

22歳のときにプロデビューしたブリーンは、ロイヤルバレエやロイヤルシェイクスピアカンパニー(RSC)、ウェストエンド、オフブロードウェイなどで多くの実績を踏み、Off Broadway Stonys, Stage Awards and The Holden Street Theatre Awardなど様々な演劇賞を受賞もしくはノミネート。蜷川幸雄さんの招聘によりディレクティングをしたこともあり、彼の手掛けた作品はNY、LA、東京、シドニー、ドバイなど世界各地で上演されています。

また、このDISCOVER WORLD THEATREシリーズに最も多く登場している彼。今回はリョーヴィン夫妻の希望を感じさせる「純愛」と、アンナの破滅に向かう「愛」を対照的に描くそうです。一体どのような演出で魅せてくれるのでしょうか。

こんなに贅沢な舞台は、今しか見られない。

申し分ない原作と演出に加え、キャスト陣も豪華な方が勢揃いです。タイトルロールを務めるのは、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を5度受賞した宮沢りえさん。

リョーヴィン役は、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012)をはじめ映像でも舞台でも活躍する浅香航大さん。

ヴロンスキー役は、ドラマ『やんごとなき一族』(22・CX)などにも出演し今回が2度目の舞台となる渡邊圭祐さん。

キティ役は、連続テレビ小説『おちょやん』(20・NHK)などにも出演し着実に実績を積んでいる土居志央梨さん。

ドリー役は、元宝塚歌劇団宙組トップスターの大空ゆうひさん。

シチェルバツカヤ公爵夫人役は、舞台『ザ・ウェルキン』やドラマ『マイファミリー』など話題作への出演が続く梅沢昌代さん。

オブロンスキー役は、数々の作品で確かな存在感と味を残す梶原善さん。

カレーニン役は、安定感のある芝居で最優秀男優賞などを受賞している小日向文世さん。若手からベテランまで層が厚いこのカンパニーで、最高の舞台をお届けしてくれるはずです。

本作は、2023年2月24日(金)~3月19日(日)、Bunkamuraシアターコクーンにて上演予定。2023年3月25日(土)~27(月)は大阪の森ノ宮ピロティホールでも上演されます。公式HPはこちら。この贅沢な舞台を、お見逃しなく。

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宮沢りえさんがアンナ・カレーニナを演じる、と聞くだけでテンションが上がってしまうのは私だけでしょうか。不倫のドロドロした物語というイメージを持たれている方も多いと思いますが、今回の新解釈版で「愛とは」「生きるってなんだろう」と深いテーマについて考えさせられるのではないでしょうか。