4月、新宿に新たに誕生した劇場「THEATER MILANO-Za」。オープニングシリーズとして7月にアングラ演劇の巨匠・唐十郎さんの名作『少女都市からの呼び声』が上演されます。出演者には、唐作品に出ることが念願だったという安田章大さん、ストレートプレイに初挑戦の咲妃みゆさんらを迎えます。
言葉の美しさと、独特の世界観が人々を魅了する唐十郎作品の名作『少女都市からの呼び声』
4月14日(金)に新宿に新たに開業した東急歌舞伎町タワー。その6階に誕生したのが新劇場「THEATER MILANO-Za」です。オープニングシリーズとして、5月に『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』で柿落とし公演、そして6月には『パラサイト』と話題作の上演が発表されています。
そして7月から上演されるのは、アングラ演劇の巨匠であり、新宿とも縁の深い唐十郎さんの名作『少女都市からの呼び声』です。
本作は1969年初演の『少女都市』を改作し、1985年に、新宿スペースDENにて唐さん主宰の劇団状況劇場が初演。その後、1993年に、劇団状況劇場出身であり、今回の上演で演出を務める金守珍さんが、自身が主宰する新宿梁山泊公演で上演、文化庁芸術祭賞を受賞しました。
物語は手術室から始まります。親友・田口の見舞いに病院へとやってきた有沢とその婚約者のビン子。看護婦から、田口のお腹の中に女性の髪の毛が発見されたことを聞かされ、以前田口が「自分の中に自分以外の女性がいるような気がする」と言っていたことを思い出します。
一方、田口は夢の世界で行方不明になっていた妹・雪子を探す旅に出ていました。田口は雪子と再会を果たしますが、フィアンセであるフランケ醜態博士によって体をガラスに変える手術を施されていたのでした。雪子は温かな肉体の世界に憧れを持ちはじめ…。
本作は、“紅テント”で演劇界に革命をもたらした劇団「唐組」主宰の唐十郎さんの作品。唐十郎さんは岸田國士戯曲賞を初め、鶴屋南北戯曲賞や読売文学賞など日本での賞を多数受賞している他、韓国の文学賞を受賞するなど、海外でも高い評価を得ています。脚本家としてだけではなく小説家としても数多くの作品を発表しており、芥川賞を受賞した経歴も。
(テント芝居のススメ、記事はこちら:https://engeki-audience.com/article/detail/4735/)
今回演出を務めるのは、前出の劇団・新宿梁山泊主宰の金守珍さん。唐十郎さんと蜷川幸雄さんに師事し、アンダーグラウンド演劇の代表とも言える演出家2人から直接指導を受けた人物です。1987年に自身が主宰を務める新宿梁山泊を旗揚げし、テント空間、劇場空間を存分に使うダイナミックな演出で人々をしています。
金さんはBunkamuraシアターコクーンで、蜷川幸雄さんの遺志を継ぎ『ビニールの城』の演出、そして『唐版 風の又三郎』、『泥人魚』と、唐さんの名作を野外テントから劇場空間に甦らせてきました。
今回は、新宿に新たに誕生したTHEATER MILANO-Zaで唐さんの名作『少女都市からの呼び声』を甦らせます。本作が新宿梁山泊を旗揚げするきっかけになった作品だという金さん。
作品について、「日本人は何処からきて何処へ行こうとしてるのか?アジアを侵略してまで築き上げた“満州帝国”とは何だったのか?未だに彷徨う旧日本軍の連隊長の亡霊を通して、経済発展に猛進する日本のありようを問いながら、決して色あせない永遠の友情や“愛”の価値を描く、時空を超えたロマンあふれる作品」と話します。
初の唐十郎作品への出演かつ初めて金さんの演出を受ける安田章大さん、咲妃みゆさん、三宅弘城さんについては、「お三方とも音楽のセンス、身体の切れも抜群で、唐ワールドの表現者としての資質は抜群!正に唐さんが提唱した“特権的肉体論”を体現できるスーパースター達。おかげで新しいイメージがどんどん湧き出し、(6月に上演する)新宿梁山泊・花園神社公演とはまったく異なる演出になり、自分でもワクワクしています」とコメントしています。
出演者の風間杜夫さんは本作の上演に関して、「唐さんの作品は詩の世界を飛翔するような劇空間の中、時間と空間を自在に行き来して翻弄されながら、楽しんで演じることが出来る。そして、金さんは状況劇場時代から唐作品を肌で感じて理解している人。難解ではありますが、金さんは誤読OK と言ってくれるし、その難解さを力業で演出していくのが魅力。金さんだからこそ唐さんの作品が出来ると思っています」とコメント。
唐十郎さんの作品と金さんの演出が力を持っていることが伺えます。
“演劇人の誰もが憧れる”唐作品。安田章大、咲妃みゆ、三宅弘城が満を持しての初挑戦!
主演を務めるのは、関ジャニ∞の安田章大さん。アーティストとしてはもちろん、俳優としてもドラマ・映画・舞台で活躍。近年は、舞台『閃光ばなし』、映画『嘘八百 なにわ夢の陣』の出演や、日常の当たり前を見つめ直す番組『もやもやパラダイム』ではMCを担当しています。
「唐さんの作品をテントで初めて観た時にカルチャーショックを受けた」という安田さん。「憧れを抱いていた」唐作品に満を持しての初挑戦です。
「言葉が美しく、独特の世界観ではあるけれどその言葉にはきらめきがあり、吸い込まれて、こんな世界が世にあっていいんだと思えたのが感覚的にあったので、その世界に飛び込ませていただけることは自身の芝居観も変わるでしょうし、お芝居の振り幅も大きく広がる気がしています」とコメントしました。
ヒロイン・雪子を演じるのは、元宝塚歌劇団雪組トップ娘役で、『マチルダ』や『ニュージーズ』『ゴースト』『NINE』『シャボン玉とんだ宇宙までとんだ』とミュージカル作品を中心に活躍している咲妃みゆさん。本作で念願のストレートプレイに初出演となります。透明感溢れる歌声と佇まいは、まさにガラスの肉体を持つ少女・雪子にぴったりです。
「これまで私が出演する舞台を楽しんでくださっていた方々には、また一味も二味も違う世界へお連れできることを楽しみにしています。そして、これまで唐さんの作品やアングラの世界を愛してこられたお客様には“ほうほう、面白い役者がやってきたか、お手並み拝見”と思っていただけるように、精一杯努めてまいりたいと思います」と意気込みました。
そして、舞台はもちろん、多数の映画やドラマでも強烈な個性を放ち、教育番組や音楽バンドでの活躍などさまざまな顔を併せ持つ三宅弘城さんも、唐作品に初挑戦。「劇団健康」(現:ナイロン 100°C)に参加し、主要メンバーとして活躍する他、M&Oplays「鎌塚氏」シリーズでは主演を務める三宅さん。近年では、舞台『しびれ雲』、映画『よだかの片想い』『さかなのこ』、ドラマ『だが、情熱はある』に出演しています。
出演オファーの話を聞いた時は、“演劇人として憧れを抱かずにはいられない唐作品”に、嬉しくて食い気味に返事をしたという三宅さん。「新たな世代にも唐作品の面白さを伝えられたらと思います」とコメント。
さらに、『唐版 風の又三郎』『泥人魚』を経て今回3度目の唐十郎作品への出演となる風間杜夫さん。映画・ドラマに加え、『バンズ・ヴィジット』などミュージカル作品や、落語にも挑戦。読売演劇大賞最優秀男優賞、紫綬褒章受章、菊田一夫演劇賞大賞など多くの演劇賞・芸術賞を受賞しています。
6月に新宿・花園神社の紫テントでも上演される同作品。風間さんは、花園神社での上演、THEATER MILANO-Za での連続上演に、どちらも出演します。「状況が違う中でどうこの作品が変わるのか、変わらないのか、両方出演できることはとても楽しみです」とコメントしました。
THEATER MILANO-Za オープニングシリーズ/COCOON PRODUCTION 2023『少女都市からの呼び声』は、7月9日(日)〜8月6日(日) THEATER MILANO-Za(東急歌舞伎町タワー6 階)にて上演。その後、8月15日(火)〜22日(火) に東大阪市文化創造館 Dream House 大ホールにて上演です。東京公演のチケット発売は6月10日(土)10:00から。詳細は公式HPをご確認ください。
過去に花園神社に建った紅テントで『ビニールの城』を観てから虜になった唐作品。新たな劇場で、唐作品に初挑戦のメインキャスト3名を迎えての公演でどのように生まれ変わるのか、楽しみです。