芝居というと、基本的に屋内で上演されるイメージを持っている方が多いかもしれません。しかし、中には屋外施設や仮設劇場で行われる芝居もあります。とある神社の境内に出現する紅いテントも、立派な劇場のひとつ。垂れ幕の向こうにはどんな世界が待っているのか、気になりませんか?今回は、型にはまらない「テント芝居」の魅力と、その演劇スタイルを貫き通している劇団「唐組」について詳しくお話します。

「テント芝居」ってどんなもの?

「テント芝居」とは、その名の通り、テントを舞台に行われる公演です。始まりは1967年、東京の新宿にある花園神社。劇作家・演出家であり、俳優でもある唐十郎氏が神社境内にテントを建て、芝居を行いました。強烈な印象を与える紅色のテントは「紅(あか)テント」と呼ばれ、現在に至るまで劇団の象徴となっています。

テント芝居なら、劇場施設がない場所であっても舞台を設置できるだけでなく、自由自在に巡業することが可能です。場所に縛られない移動式の劇場は、演劇界において画期的な発明だったといえるでしょう。また、テント芝居では、水や火による大規模な演出もよく見受けられるようです。テント芝居は、従来の劇場ではできなかったことを実現し、演劇に無限の可能性を与えています。

紅テントで各地を巡業する「唐組」

紅テントと共に旅をし、唐十郎氏の理念を継承している劇団が「唐組」です。唐組では、役者と裏方が一丸となって舞台を作り上げていきます。テントの設営から本番まで、自分たちの手で芝居を育てていく姿勢が、観客を圧倒するエネルギーに変換されているのではないでしょうか。また、唐十郎氏の誕生日である2月11日には、毎年入団試験が行われます。花園神社を拠点としつつ、地方にも積極的に興行する「唐組」。あなたの住む街にも、紅いテントが突然現れるかもしれませんよ。劇団唐組公式HPはこちら

「唐組」の最新公演は?

現在、唐組は花園神社にて『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』を上演中。5月から6月にかけて東京で公演した後、長野にも巡回する予定です。第68回公演となる今作は、もともと唐組の前身劇団である「状況劇場」で初演された歴史ある作品です。

傘屋のおちょこは、修理を依頼してきた女性客のカナに思いを寄せています。そしてカナに「メリー・ポピンズの傘を持たせたい」と願い、試行錯誤を繰り返すように。おちょこの恋路にカナの過去や周囲の思惑が絡み、物語は進行していきます。傘を片手に飛んでくる、かの有名なメリー・ポピンズの明るい雰囲気とは、随分異なっていそうですよね。一体どんな結末を迎えるのか、あなた自身の目で確かめてみてはいかがでしょうか。『おちょこの傘持つメリー・ポピンズ』公演情報はこちら

もこ

筆者は劇場施設でしか観劇した経験がなく…今回の「テント芝居」にはとても興味をそそられました。神社に紅いテント、というアングラ感たっぷりの唐組に、いつか偶然出会ってみたいものです。