2013年、2016年に上演され好評を博したオフ・ブロードウェイ・ミュージカル『Forever Plaid』が2020年の中止公演を経て、今年ファイナル公演として帰ってきました!全部で25曲、一緒に踊りながら楽しめる、疾走感あふれる本作のゲネプロ・取材会の様子をお届けします。

4人の絆が奏でるハーモニー ハッピーで少し切ない物語

『Forever Plaid』はスチュワート・ロス脚本で、1990年の初演以来アメリカ各地で上演されてきたオフ・ブロードウェイ・ミュージカルです。舞台は、1964年のアメリカ。高校の同級生のフランキー(川平慈英)、ジンクス(長野博)、スパーキー(松岡充)、スマッジ(鈴木壮麻)は男性4声のコーラスグループを結成し、大スターになる夢に向かって奮闘します。すると、運良くビッグショーに出られるというチャンスが!

写真:山本春花

しかし、ショーに向かう最中に悲劇が起きます…。4人を乗せたバスが事故に遭い、全員が即死してしまったのです。ところが、果たせなかった彼らの想いと、天空の様々な条件がマッチ!実現出来なかったパフォーマンスを披露すべく、4人は地上に舞い戻り、ショーが終わらないことを願いながら歌い踊ります。

コロナ禍というこの時代に上演するからこその工夫

60年代のアメリカのショーステージを彷彿とさせる舞台セットに、バンドの生演奏で、自然と心躍るミュージカル『Forever Plaid』。タイトルロールにもあるPlaid(プラッド)とは格子柄のことを言い、ドラムや小道具など、至る所に格子柄が使用されています。舞台上で使われる消毒液のボトルも、格子柄。今の時代ならではの演出です。

消毒液と同様、コロナ禍の今上演するからこその工夫は至る所に散りばめられています。これは演出の板垣恭一さんとプラッズの4人で意見しあって考えられたそう。コールアンドレスポンスの代わりに、「心の中で唱えて!読み取るから!」と松岡さん演じるスパーキーが呼びかけたり、一緒に振りを踊ったり。コロナ禍でも、“客席と一緒に楽しむ”ことが考えられた作品となっています。

写真:山本春花

見どころは、エド・サリヴァン・ショーを約3分間で再現するというシーン。エド・サリヴァンショーは1948年〜1971年まで放送された、「番組を見逃すと日常会話に支障をきたす」と言われたほどの人気番組。放送内容は、ゲストとのトークと、ゲストによる芸の披露。様々な分野での人気のある人をゲストとして迎えていました。本シーンではジンクスが「Lady Of Spain」を歌う傍ら、フランキー、スパーキー、スマッジの3人が様々な扮装をして代わる代わる登場します。物凄いスピードでの早替えで様々なゲストになって登場するので、一曲終わる頃には3人はヘトヘトに。

写真:山本春花

作品全体で披露される楽曲は全部で25曲あるのですが、軽快なMCと共に次々と曲を披露していくため、フィナーレまではあっという間。スピード感も速く進んでいきますが、ただのショーで終わらない理由は4人の個性的なキャラクターにあります。

フランキーはグループのリーダー。面倒見が良く、「MCで話せない…」「フリが思い出せない…」と悩むメンバーを親身に励まします。シャイで高音を出すと鼻血が出てしまうジンクス、お調子者のスパーキー、真面目で心配性なスマッジ、それぞれのキャラクターが立っていて、見せ場もあり、この4人だからこその空気感を感じました。

初演から9年、奇跡の再演に「人生は瞬間瞬間の積み重なり」

写真:山本春花

奇跡のハーモニーグループ“Forever Plaid”(フォーエバープラッド)を演じるのは、初演から変わらない4名。ミュージカル作品に出演経験が豊富で、今年8月に上演を控える『スラムドッグ$ミリオネア』への出演が決定している川平慈英さん。V6のメンバーとして長年活動してきた傍ら、舞台・ドラマ・バラエティとジャンルを問わず活躍している長野博さん。高い歌唱力と表現力から『キャッチミーイフユーキャン』等のミュージカル作品で主演経験のある松岡充さん。そして、元劇団四季で高いスキルを持ち、現在も舞台を中心に活躍されている鈴木壮麻さん。違った魅力を持つ4名の奏でるハーモニーが、初演から人気の理由の一つです。

フィナーレを歌う前に感極まっていたのは、スマッジ役の鈴木さん。初日を迎える想いを聞かれて、「稽古を重ねていく中で、この4人でしか紡げない色や音をすごく感じて、再々演に辿り着けたことを感謝しています」と話すうちに、また鈴木さんの目に涙が。「みんなでハーモニーを作ろうってなる瞬間がもう…。人生は瞬間瞬間の積み重なりということを、この現場ではすごく実感する。これをみなさんにお伝えしたい」と話しました。

その後、川平さんが「稽古再開まで間が空いてしまったけど、一瞬にしてブランクは消えました。中止になった回も含めて4回完成させているので」と再演までの軌跡を語っていると、鈴木さんがまた涙。そんな鈴木さんを、3人で抱きしめにいく場面も。4人の絆の強さが伺えました。

写真:山本春花

ファイナル公演に、「有終の美を飾りたい」

2020年は稽古途中で公演中止になったため、上演は2016年から6年ぶり。還暦を迎える川平さん、2020年に還暦を迎えられ、今年62歳になる鈴木さん。そんな彼らが演じているのは20代!松岡さんは「年齢は関係ないのだと、すごく希望を与えますよね」と年齢を超えた作品の魅力を語ります。 初演当初から変わらないカンパニーの関係性について長野さんは、「まさにフォーエバーなもの」とコメント。お互いにリスペクトがあり、寛容さに溢れたカンパニーであることが取材会の言葉1つ1つから垣間見ることができました。

更に松岡さんは、「色々な作品や人に、出会いたくても生きられなかった先輩方もいる。そう考えると、舞台一本一本がどれだけ大切か」と感慨深く作品との出会いについて語りました。一期一会で生まれた本作も、ついに今回がファイナル。この4人での“フォーエバープラッズ”が見られるのは最後になります。4人の勇士を目に焼き付けて下さい!

写真:山本春花

ミュージカル『Forever Plaid』は5月14日(土)〜5月31日(火)まで、大手町よみうりホールにて上演。その後全国8都市を周り、最後に6月30日(木)に東京凱旋公演として、有楽町よみうりホールで大千秋楽を迎えます。公演スケジュールの詳細はこちらから。4人が生前に出来なかったショーを披露する作品なので、ミュージカルというよりもコンサートに近い感覚で観ることができます。ミュージカル初心者の方にもおすすめの作品です。

ミワ

舞台上に4人だけにも関わらず、後ろで小芝居をしている2人も見たい!など目が足りなくなりました。川平さんが「おもちゃ箱をひっくり返したような作品」と話されていましたが、まさにその通りで、とてもハッピーになれる作品。最後の『Forever Plaid』ぜひ劇場で見届けてください!