ふぉ〜ゆ〜の福田悠太さんが主演を務める舞台「KOKAMI@network vol.19『ウィングレス(wingless)ー翼を持たぬ天使ー』」が5月1日(月)に東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで幕を開けました。今回は、開幕に先立って行われた本作の取材会とフォトコールでの様子をお届けします。
本当の意味で「救う」とは。翼を捨てた元天使が人間を救う戦いに挑む!
『ウィングレス(wingless)ー翼を持たぬ天使ー』は、鴻上尚史さんが作・演出を手がける「KOKAMI@network」シリーズの第19弾。「KOKAMI@network」とは劇作家・演出家として活躍する鴻上尚史さんが、さまざまな人たちと出会い、公演するために作ったユニット。毎回、出演するメンバーは異なり、鴻上さんの作・演出(場合によっては、演出のみ)で制作するプロデュース・ユニットです。
鴻上さんが書き下ろした、約2年ぶりとなる渾身の新作は、現代社会を鋭い視点で切り取ったリアルとファンタジーが何層にも織り重なる物語。翼を捨てた元天使が人間を救う戦いに挑む冒険を描いた、思い切り笑って泣ける、歌もダンスもありのエンターテインメント作品となっています。
物語は、天使が自殺をしようとした女性を救う所から始まります。天使のルールは人間に対して決して何かをしないこと。見つめることしか許されないにもかかわらず、天使は女性に惚れてしまっていたのです。
助けた女性から「なんで天使なの?人間だったら好きになっていたのに」と言われた天使は、神様に頼んで人間にしてもらいます。しかし、彼女に会いにいくと「天使の時はかっこよかったけど、人間になったら、なんかふつう」とあっさりと振られてしまいます。
ショックを受けた元天使は、また神様に天使に戻して欲しいと頼みますが、「そんなお前の都合でぽんぽん戻せるか!一人の人間を本当の意味で救ったら天使に戻そう」と条件を出されます。こうして、元天使は、「天使本舗」という会社を作り、人間達の救済を始めます。
しかし、人々の悩みを解決しても、「本当に救う」ことにはなりません。そんな時、元天使は夜の公園で小学三年生の麻衣と出会います。彼女の母親は、スピリチュアル的陰謀論の「宇宙の声」にはまっており、麻衣を放っています。麻衣を救うために、元天使は「宇宙の声」代表の神山秀雄と戦うことに…!
人間の女性に恋をして翼を捨てるも即失恋。もう一度天使に戻るため人間達の救済を始める元天使・榊原一郎役を務めるのは、確かな演劇力から演出の鴻上尚史さんにオファーされたという、ふぉ~ゆ~の福田悠太さんです。
共演には、榊原が恋をした女性・絹田玲菜役に大野いとさん。フリーライターで玲菜の元恋人の芝隆太役に鈴木康介さん。元夫のDVから逃げ出した森川彩子役に田畑智子さん。
森川彩子の娘・麻衣役は、三上さくらさんと中川陽葵さんのWキャスト。榊原が戦いを挑むスピリチュアルグループ「宇宙の声」代表・神山秀雄/神様役(二役)を渡辺いっけいさん。「宇宙の声」代表の第一秘書・岩波大介役を小南光司さんが演じます。
フォトコールでは物語冒頭の3つのシーンが披露されました。
1つ目のシーンは、屋上で飛び降りようとしている玲菜のもとに天使が現れるという出会いのシーン。天使に励まされた玲菜は、頑張って生きることを誓い去っていきます。
スクリーンには、映像が投影されます。アニメーションで絵本のような可愛らしい雰囲気の映像と、舞台で繰り広げられる芝居とが上手くリンクしている演出。コミカルな福田さんの芝居に心を掴まれます。
2つ目のシーンでは、舞台は天界へと移ります。神様が登場し、掟を破った天使に雷が落ちます。
天使が神様に「人間にして下さい」と懇願するとまた雷が…。
初共演にして息がぴったりな福田さんと渡辺さんの芝居に、釘付けになること間違いなし!渡辺さんがスピリチュアルグループの代表として登場して、お二人が丁々発止やりあうシーンもあるそうで、鴻上さんからは「上手い2人がやりあうところは延々と観ていられる」と高評価。
3つ目は、森川彩子と娘・麻衣のシーン。公園で、ベンチに座りスマホを見て独り言を言っている森川彩子。娘の麻衣が現れても気づくことはありません。
森川彩子がスマホで見ているのは、明らかに怪しい宗教団体の動画。洗脳され始めている彩子は、娘の麻衣が話しかけても応じず、残された麻衣には悲壮感が漂っていました。今も話題になっている“宗教2世”の問題について考えさせられます。
物語の始まりの3シーン。これからの物語の展開が非常に楽しみに感じるフォトコールでした。
「今回特におすすめだと自信を持っている」
囲み取材には、福田悠太さん、大野いとさん、田畑智子さん、渡辺いっけいさん、鴻上尚史さんが登壇されました。
福田さんが「今回天使役ということで、生まれた時からずっと天使役をやってみたいという思いがあったので今回天使役を頂けて本当に嬉しいです」と話し、鴻上さんが「本当かよ!」と突っ込み、和やかな雰囲気で始まった取材会。
「天使役ということで、今までの役とは少し違って、少し浮いているような、世を達観しているような感じです。羽のように、今回の舞台を期に、役者として羽ばたいていくんだなと思っています」と話しました。
鴻上さんが「とても良いメンバーが集まって、今回特におすすめだと自信を持っている」という本作。
昨年、福田さんの出演する舞台を見て、上手い俳優がいるなと思いオファーしたという鴻上さん。福田さん自身も「鴻上さんの芝居にはいつか出たいなと思っていた」とのことで、念願のタッグが実現しました。
実は、渡辺さんも念願の鴻上作品への出演。というのも、「35年前に、鴻上さんの劇団・第三舞台のオーディションを受けて落ちた」のだそう。
「今回、このチームに呼んでいただけて非常に嬉しく、しゃかりきに頑張りました。ベテランだからあまりダメ出しはしないと言われていたのですが、ダメ出しを受けたくていろんなことをしました。その結果が披露できるのが嬉しいです。福ちゃんとか関係ないです、僕は僕のためにこの芝居を頑張ります」と意気込みました。
大野さんは、事前に鴻上さんの本を何冊か読んでから稽古に望んだそう。
「会話が濃厚でセリフの量も多い印象だった。今回挑戦するにあたって、私は普段話すスピードがゆっくりなので、その速度を上げたり、気持ちを高めたりというところですごく苦戦しました。なんとか、無事今日ここにいるので、見ていただけたら嬉しい気持ちでいっぱいです」と課題を乗り越えた姿を見せました。
そして、実際に2歳と4歳の男の子の母親である田畑さん。「母になってから母親役というものをやってきたか考えた時に、あまりやっていなくて。今回は子供ができて、母親になったからこそできる役なのではないかと日々稽古で感じていました」と話しました。
田畑さんは、自宅で稽古動画を見ていると、息子さんたちに「これ何?」と聞かれたのだそう。「羽がついているでしょう?天使なんだよ」と福田さんのことを説明すると、「天使ということは悪魔も出てくる?ママ、悪魔と戦っているの?」と息子さんたち。稽古から帰ると「今日も悪魔に勝った?」と聞かれることが奇跡のような時間に感じるのだと、癒されるエピソードを話してくれました。
母親像について、鴻上さんから「もう少し関西のおばちゃんみたいな感じで」と言われていたそう。田畑さんご自身も関西の出身。ですが、「京都なので、ぐいぐい感というものが私の中にないようで…。大阪の印象を引っ張り出して、関西のグイグイしたノリを出せるように頑張りました」と、新喜劇の末成映薫さんを参考に役作りをしていたことを明かしました。
KOKAMI@network vol.19『ウィングレス(wingless)ー翼を持たぬ天使ー』は、5月1日(月)〜5月21日(日)まで東京・紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて、5月27日(土)・28日(日)に大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演です。公式HPはこちら。
フォトコールで披露されたシーンでは、まだダンスシーンなどはなかったので、どのような歌い踊るシーンが出てくるのか興味深かったです。コミカルな芝居の中に、考えさせられる要素が散りばめられている作品でした。ぜひ、劇場に足をお運びください!