ミュージカルファンの読者の方が多いAudience。小劇場演劇を観たことがない方や、たくさん上演しているものがあり、どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、Audience編集部が独断と偏見で5月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

全作品生演奏で上演。東京芸術劇場進出!サルメカンパニー5周年記念公演『スウィングしなけりゃ意味がない』

サルメカンパニーは、2017年に結成され、今年で5周年を迎える劇団。2019年日本演出者協会主催の若手演出家コンクールでは第5位を受賞。佐藤佐吉演劇賞2021では最優秀演出家賞を含む6部門受賞しました。

サルメカンパニーの特徴は、全作品生演奏での上演。キャスト全員が楽器を演奏したり、プロアーティストとコラボレーションをしたりと演劇・音楽が共存した作品作りに挑んでいます。


また、メンバー全員でシェアハウスをし、その様子やバンド演奏の動画をYouTubeチャンネルで100本以上投稿。コロナの影響による世間のライフスタイルの変化に応じて、作品発信の方法を模索しながら、継続して芸術を発信し続けています。

『スウィングしなけりゃ意味がない』は、旗揚げ当時から劇団員全員がいつか上演したいと思っていたという作品。サルメカンパニーのルーツとなるものが詰まった本作を5周年記念公演として上演します。

本作の題材となっているのは、エンスラポイド作戦(類人猿作戦)という名でも有名なハイドリヒ暗殺事件。1941年、ドイツ占領下のチェコ、プラハ。自由チェコ軍の若き士官と兵士たちが狙うのは、ヒトラー・ヒムラーに次ぐナチスナンバー3の高官ラインハルト・ハイドリヒです。

自由チェコ軍をチェコの一般市⺠たちが助け、ハイドリヒ暗殺計画は確実に進行していきます。祖国のため命を投げ捨てる覚悟で計画を実行した若き彼らの行く末とは…。サルメカンパニー5周年記念公演『スウィングしなけりゃ意味がない』は、2023年5月18日 (木)〜2023年5月21日 (日)に東京芸術劇場シアターウエストにて上演されます。公式ホームページはこちら

被害と加害、Wの狭間を描く。劇団チャリT企画『Wの悲劇』

劇団チャリT企画は、 主宰の楢原拓さんを中心に、早稲田大学演劇研究会を母体として1998年に旗揚げされました。現在は社会人劇団として、都内を拠点に年2〜3回の本公演を中心とした活動を行っています。

鋭い人間観察とシニカルな社会批評の視線を持ち、時事ネタや社会問題などのシリアスな題材を、独特なセンスで軽妙に笑い飛ばす「ふざけた社会派」として小劇場の中でも注目の存在です。

昨今、映画・演劇業界などで過去のパワハラやセクハラ行為を暴露され謝罪や活動停止に追い込まれている事例を度々目にするようになりました。東京オリンピックでも、開閉会式に携わっていたアーティストが、昔のイジメや差別的表現を発端に辞任に至ったことは記憶に新しいでしょう。


もちろん肯定されるべきことではないイジメや差別、ハラスメントですが、少年期や何十年も昔の行為、あるいは問題意識の乏しかった時代の行為はどこまで裁かれるべきなのでしょうか。本作では、「性暴力の被害者がイジメの加害者であった」という複雑で過激な状況を描きます。

被害と加害の狭間で混乱するコミュニティやそれに翻弄されていく人々の姿を通して、一筋縄ではいかない人間社会の有り様をふざけた社会派ならではのブラックユーモアで舞台作品へと昇華します。

『Wの悲劇』の舞台はとある芸能事務所。所属タレントが巨匠映画監督による性暴力被害を訴えようとしていました。しかし、監督の最新作に別の所属タレントが出演しており、被害が表沙汰になると作品はお蔵入りになってしまいます。訴えを阻止しようと事務所内は大騒ぎ。そんな時、被害者にまつわるスキャンダラスな情報が寄せられ…。

劇団チャリT企画/旗揚げ25周年記念公演 第一弾『Wの悲劇』は、5月17日(水)〜5月21日(日)に下北沢・駅前劇場にて上演です。公式HPはこちら。 

〈光〉と〈音〉をテーマにリニューアル!じおらま『たいない』

アートチーム・エリア51で演劇作家、演出家として活動している神保治暉さん。演劇人コンクール 2021 奨励賞や第 12 回せんがわ劇場演劇コンクール劇作家賞といった受賞歴を持ちます。神保さんが新たに立ち上げた劇団じおらまは、都市生活から生まれる演劇創作に取り組んでいます。また、劇団のスローガンである「ハラスメントのない創作環境づくり」で、安全で豊かな演劇創作をめざす劇団です。


じおらまの旗揚げ公演として、演劇人コンクール 2021 にて奨励賞を受賞した作品『胎内』をリニューアルした形にて上演します。「本作品は“分け合う”ことへの強いメッセージがあり、新たな環境で、もう一度、この作品と向き合ってみたいと思った」という本作。

上演にあたり、神保さんは以下のようにコメントしています。

「半年近くにわたりじっくり対話していくことで、劇場は〈光〉と〈音〉をみせるために〈闇〉と〈静寂〉を必要とするという普遍的なテーマに行き着きました。
原作である三好十郎の『胎内』は戦後すぐの物語ですが、今作では「過去のようにもみえる未来の物語」へとアレンジします。こまばアゴラ劇場、東京という真っ暗な空洞に、コエを、響かせます。そこがさまざまな人にとっての光ある場所になるよう、願いを込めて」

過去のようにもみえる未来の話、『たいない』。
とある取材をして以降、家に閉じこもるようになってしまった私。無断欠勤をしてから数日が経った夜、停電した町に〈闇〉と〈静寂〉がおとずれ、私はトビラの外へ出ます。
同じ町に暮らすコンビニ店員や高層ビル建設の現場監督、園長先生…。人々はふとしたコエでつながって、コエを介して”対話”をはじめます…。

じおらま『たいない』は、5月19日(金)〜5月28日(日)上演時間は、約90分を予定しています(5/10時点)。公式HPはこちら

ミワ

気になる作品で溢れている5月。ここに載せた3作品だけでなく、日々のAudienceの記事の方でも小劇場作品を今月は多く紹介しているのでぜひチェックしてみてください!