6月21日にシアター1010にてプレビュー公演の幕を開けた音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』。モーツァルトの名作オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』誕生の背景にある、詩人ロレンツォ・ダ・ポンテの人生を描くオリジナルの新作音楽劇です。 今回は、本作のゲネプロと取材会の様子をお届けします。(作品について詳しくはこちら)
「君としか作れない」モーツァルトとダ・ポンテが共作した儚くもかけがえのない4年半の歳月
音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』は、モーツァルトの名作オペラ『フィガロの結婚』『ドン・ジョバンニ』『コジ・ファン・トゥッテ』誕生の影の立役者、詩人口レンツォ・ダ・ポンテの人生を描く新作の音楽劇です。
革新的なオペラ3作品が生まれるまでの過程と、これまで舞台であまり表現されていなかったダ・ポンテの知られざる物語の脚本を手がけるのは、ドラマ『1リットルの涙』や『凪のお暇』『妻、小学生になる』など話題作を生み出している脚本家の大島里美さん。本作が初のオリジナルの音楽劇の執筆になります。
演出を手掛けるのは、劇団四季オリジナルミュージカル『バケモノの子』でも演出を担当されている青木豪さん。音楽は劇団四季『恋に落ちたシェイクスピア』、音楽劇『星の王子様』で青木さんとタッグを組んできた作曲家の笠松泰洋さんです。
音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』は、晩年のロレンツォ・ダ・ポンテが自身の生涯を振り返るところから物語が始まります。
時間は遡り、1781年のウィーン。故郷ヴェネツィアを追われてしまったダ・ポンテでしたが、その才能でウィーンの宮廷劇場詩人の座までのぼり詰めます。しかし、宮廷作曲家のサリエリの指示に従って書いたオペラの処女作は酷評。
そんなダ・ポンテの前に現れたのが、作曲家のヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。二人は意気投合し、革新的なオペラを作ることを決意します。
ダ・ポンテがモーツァルトと出会い、共同制作をおこなったのは、4年半という短い間。しかし、その時間はダ・ポンテの人生において最も輝いた、儚くもかけがえのない時間だったのでした。
従来のイメージを覆す!“このキャストだけの”オリジナルなキャラクター像に注目
囲み取材には、本作の主人公ダ・ポンテ役の海宝直人さん、モーツァルト役の平間壮一さん、サリエリ役の相葉裕樹さん、フェラレーゼ役の井上小百合さん、ナンシー/オルソラ役の田村芽実さん、コンスタンツェ役の青野紗穂さん、皇帝ヨーゼフ二世役の八十田勇一さんの7名が登壇しました。
完全新作ということで、海宝さん、平間さん共に「お客様からどんな反応があるか凄く楽しみ」と話します。
本作の見どころは、まず、なんと言っても豪華な衣装。ミュージカル界のプリンスと称されることも多い海宝さんでさえ「僕もこんなにキラキラしたことないかもしれない」というほどキラキラしたビジューや装飾で美しく縁取られていました。
そして、誰もが知るモーツァルトの名曲をモチーフにしたナンバーとオリジナル曲を合わせて30曲以上ある楽曲。「それぞれソロがあって、それぞれの想いが伝わるような楽曲になっているので楽しんで頂けたら」と海宝さん。
音楽家としての仕事ができれば満足というモーツァルト。対して、生まれの影響もあり「何者かになりたい」ともがく野心家のダ・ポンテ。2人の性格の差なども楽曲に表れていたのが興味深いポイントでした。
海宝さんが「(見どころは)他にはない?」と聞くと、相葉さんが「あと一つ言うなら海宝直人の色男っぷりを」と付け足しました。田村さん、青野さんは、ダ・ポンテが何人もの女性を誘惑していくシーンを稽古場でニヤニヤと見ていたそう。
海宝さんのあまりにも素敵な誘惑する姿と溢れ出る色気に青野さんは「普段からやっているのでは?」と疑いの目。相葉さんは「ドキドキしちゃうよね」、田村さんも「女性の方たちはみなさんメロメロになっちゃうんじゃないかと」と応戦。
海宝さん自身は「自覚はないですけど、でも知らない間に(色気が)出ているなら、それは良かったです」と話しました。
美貌で男性を翻弄していくファムファタール的な女性、フェラレーゼを演じる井上さん。自身の生まれ育った環境から這いつくばって現在の歌手としての地位を保つフェラレーゼは、華やかさの影に泥臭さがあり、力強く生き抜いた女性という印象を受けました。
自身は役と対極的と話しますが、共演メンバーからは「悪女っぷりが見どころ」「ギャップが魅力」と称賛されていました。
井上さんは自身だけでなく「みなさん意外なキャラクターを演じているなと思う」と話します。
今回描かれているそれぞれのキャラクターは、広く知られている歴史上の人物のイメージとは少し異なる姿。「みなさんの人柄がちゃんと役に投影されていて、オリジナルのものになっているんじゃないかなと。今回だけの、このキャストだけの、ものになっているのではないかなと思います」とコメントしました。
相葉裕樹さんは従来悪役として描かれることが多かったサリエリを演じます。「稽古していく中で、演出家の青木さんがコミカルなものを求めていることがわかり、方向性が変わっていった」と話します。自身もコミカルな芝居が好きという相葉さんが演じるサリエリは、どこか憎めないチャーミングなキャラクターに。歌唱披露イベントでも話題になった、サリエリが歌う「ヴィヴァ、イタリア!」は必聴です。(歌唱披露イベント:https://engeki-audience.com/article/detail/9531/)
コンスタンツェ役の青野紗穂さんは、「唯一ダ・ポンテに直接的に影響を与えない役。モーツァルトを妻として大きな愛で包み込んで最後まで支えられたらと思います」とコメントしました。「世界三大悪妻」とまで評されるコンスタンツェですが、本作ではモーツァルトの良き理解者であり、青野さんが話したように「大きな愛で包み込む」ような人物として描かれています。モーツァルトのことを尻に敷いているようなやりとりには思わずほっこりしました。
八十田さん演じるヨーゼフ二世は、音楽や芸術に理解が深い皇帝として描かれています。「やんちゃな二人のアーティスト、ダ・ポンテとモーツァルトを陰で支える3人目の男というか、プロデューサー的な立場ですので、その関係性もしっかり皆さんにお届けできたらなと思います」とコメントしました。
ダ・ポンテの継母のオルスラと、ダ・ポンテと後に結婚することになるナンシーを演じる田村芽実さん。オルスラの時は信仰深く忍耐強い中に弱さが見える女性、ナンシーとしては短い登場時間でもお転婆娘の様子が垣間見える少女の頃の姿、そしてダ・ポンテを大きく包み込むような年老いてからの姿と、演じ分けが素晴らしく魅了されました。
田村さんが「この作品に出演するにあたり、モーツァルトとダ・ポンテのオペラづくりを紐解いていく中で、作品作りは1人では出来ない、化学反応によって起きるものなんだなということをたくさん感じました。この作品の中でも、毎日毎日良い化学反応を出せるように一生懸命努めたいと思います」とコメントしたように、創作の起源を目の当たりにするような作品となっています。
音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』は、6月21日(水)~6月25日(日)に東京・シアター1010にてプレビュー公演、6月30日(金)・7月1日(土)に愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホールにて上演。そして、7月9日(日)~7月16日(日)に東京・東京建物Brillia HALLにて上演。7月20日(木)~7月24日(月)に大阪・新歌舞伎座にて上演です。
上演時間は途中20分間の休憩を含み、約2時間50分となっています。詳しくは公式HPをご覧ください。
従来作品のそれぞれのキャラクターたちのイメージがいい意味で覆される作品です。憎めない愛らしいキャラクターたち、有名な楽曲からオリジナル曲までがふんだんに散りばめられた本作をぜひ劇場でご覧ください。そして、9名しかいないとは思えない程の役柄を演じ分けているアンサンブルのみなさんにも大きな拍手です!