2019年にオフ・ブロードウェイで話題となった舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』。娘・レイチェルが摂食障害を患ったことで浮き彫りになる家族のすれ違いと苦悩を描いた作品が、2025年4月に日本で初上演されます。レイチェル役を務めるのは、数々のスターを生み出してきたミュージカル『ロミオ&ジュリエット』でジュリエット役を務め、TBSテレビ 日曜劇場『御上先生』に出演、3月に公開されるディズニー実写映画『白雪姫』ではプレミアム吹き替え版で白雪姫役の声優を務める吉柳咲良さん。今ミュージカルファンのみならず多くの人から注目を集める吉柳さんにお話を伺いました。

今の時代だからこそ、観てほしい作品

−舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』上演決定時のコメントでは「少し驚きというか、構えた自分がいました」とお話しされていましたが、台本を読んでみていかがでしたか。
「もちろん摂食障害について凄く考えさせられましたが、そんなに遠くないというか、誰もがなりうる可能性のあるものだと思います。なぜレイチェルが摂食障害になったのかというのを紐解いていくと、家族のちょっとしたすれ違いが見えてくるし、そういったことで摂食障害になることもあるのだなと学びもありました。今の時代だからこそ、観てほしい作品だと感じました」

−レイチェル役をどのように創っていこうと思われていますか。
「ト書きがしっかりしていて、細やかな動作や繊細な気持ちの動きを読み取れる台本でしたし、彼女の悩みに共感できすぎると思うくらいでした。だから構えすぎずに、等身大で向き合ってみて、彼女が立ち上がるためには何が必要なのか、彼女の根底にある生命力の強さを大事にしたいと思います」

−演出を務める稲葉賀恵さんはどのような印象ですか。
「稲葉さんからは、「レイチェルの心の奥には凄く強い生命力があって、強い赤い色が見える人じゃないと出来ないと思うけれど、『ロミオ&ジュリエット』の映像を観てそれがある人だと思った」と言っていただけたので、そのお言葉を自信に変えてやっていけたら良いなと思います。最終的に「お客様に手を差し伸べられるような作品にしたい」とお話しされていて、私もとても共感できたので、これから良いものが創れる予感がしました」

−レイチェルの母・ジョーンを寺島しのぶさん、父・ピーターを松尾貴史さんが演じられます。
「恐れ多い大先輩のお2人とお芝居させて頂くことに緊張はあるのですが、全力でぶつかっていくことこそが礼儀だと思っているので、変に遠慮したり構えたりせず、素直にレイチェルとしてぶつかっていけることが一番だと思っています」

語尾やト書きから人となりを探る

−役作りをする時に大事にされていることはありますか。
「台本を読む上では語尾やト書きに書かれているところから、彼女がどうしてその行動を取るのか考えます。語尾って人となりが出ると思っていて、どのように話して、そこからどう行動を起こしていくのか。ということは、どういうタイプなのか、好きな色や食べ物は何なのか、というところまで考えていくようにしています。好きな色や食べ物は想像でしかないけれど、そういった小さなところを埋めていくとパーツがはまっていく感じがするので、台本から汲み取れるその役の情報を間違い探しのように探すというのをやっています」

−確かに語尾は人によって違いがありますね。どうしてそういったことをやろうと思われたのですか。
「人によってどんな単語や語尾を使うか、どんなスピードで話すかが違うじゃないですか。私は結構話すのが速いので、情報量が多くて「一回待って」と言われることもあります。でも凄くゆっくり一つ一つの言葉を丁寧に発する人もいますよね。言葉をどう発するかというところから人となりが見えるのは面白いなと思って、そこを大事にしていたら、自分と役が分離しそうになった時にもその役を見失わないようになったので、継続してやるようにしています」

生で伝えるエネルギッシュな舞台が好き

−近年ではミュージカル『ロミオ&ジュリエット』、TBS日曜劇場『御上先生』、ディズニー実写映画『白雪姫』プレミアム吹き替え版と多方面で活躍の幅が広がっていますが、役者としての変化を感じていますか。
「色々な役を演じさせて頂けることで、どこかで得た経験がまた別の場所で活きるというのを感じます。10代の頃に出演した『ピーター・パン』の時には出なかった高音が、20歳になって出演した『ロミオ&ジュリエット』で出るようになり、それがなければ『白雪姫』は出来なかったと思います。一つ一つの言葉や動作に着目できるようになったのも、ドラマを積み重ねてきたからだと思うし、ドラマと舞台の両方に取り組むことで、塩梅の取れたお芝居を探すようになりました。全ての経験が活きている実感があります」

−そんな中で、舞台に出演する醍醐味はどのような部分に感じますか。
「やはり生の良さというのを毎回感じます。私達演者側も生で伝えるからこそ、客席から返ってくるエネルギーに圧倒されたり、感動したりすることがありますし、生で伝えるには熱量が必要です。舞台上全体を観られるので嘘がつけなくて、テクニックだけじゃどうにもならない部分もあります。その難しさやエネルギッシュさが、私が舞台を好きな理由だと思います。物語を通して演じるので、役としても生きやすいです」

−ご自身が最近観に行かれて印象に残っている舞台作品はありますか。
「『ロミオ&ジュリエット』で共演した岡宮来夢さんが主演されていた『「進撃の巨人」-the Musical-』はとても衝撃を受けました。ダンスが本当に揃っていてエンターテイメントとしても凄く面白かったです。原作でのキャラクターの個性が守られながらも生きている人としてお芝居をするというのは難しく、エネルギーのいることだと思います。岡宮来夢さんはエレンそのものでした。巨人の見せ方にも色々と工夫が施されていて、立体機動装置もフライングの技術を使って現実になって目の前に現れた感覚がして、度肝を抜かれました。ニューヨーク公演でも大きな反響があったそうで、本当に素晴らしいと思います」

−最後に、舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』を通してどのような演劇体験をしてもらいたいですか。
「全然遠くない話だし、誰もが実は知っている感情がきっといっぱい入っている作品になっていると思います。他人事とは思わず、隣合わせの状態にあるような感覚で観ていただけたら嬉しいです。私は同じような感情を持ったことがありますし、だからこそ救われる部分も多かったです。私と同じように救われる方がいれば良いなと思いますし、家族や相手を本当に自分が尊重できているのか、考えたり見つめ直したりするきっかけにもなると思います。色々な角度から「考える」ということを楽しんで頂けたら嬉しいです」

舞台『リンス・リピート ―そして、再び繰り返す―』は2025年4月17日(木)から5月6日(火・祝)まで紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演されます。2月19日よりホリプロステージにてチケット一般発売開始。公式HPはこちら

Yurika

続々と話題作に出演し、注目を集める吉柳さん。お若いながら、落ち着いた雰囲気で役について深く語られる姿が印象的でした。