カルト・ムービー『吸血鬼』を下敷きに、『エリザベート』『モーツァルト!』で知られるミヒャエル・クンツェ氏が脚本・歌詞、ロック界のワーグナーと称されるジム・スタインマン氏が音楽を手がけたミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』。2006年の日本初演以来20年目、6年ぶり6回目の上演が5月10日から東京建物 Brillia HALLにて開幕しました。初日記念会見とゲネプロの様子をお届けします。
“モラルもルールもまっぴら”
まずはそれぞれのゲネプロの様子をお届けします。クロロック伯爵役は、日本初演から本役を演じ続けてきた山口祐一郎さんと、新キャストの城田優さん。
クロロック伯爵の虜になるヒロイン・サラ役はフランク莉奈さんと中村麗乃さん。ヴァンパイア研究に身をささげるアブロンシウス教授の助手アルフレート役に太田基裕さん・寺西拓人さん、アブロンシウス教授役に石川禅さん・武田真治さんとWキャストで務めます。

舞台は、雪深いトランシルヴァニア。ヴァンパイア研究に生涯を捧げるアブロンシウス教授と若き助手アルフレートが吹雪に見舞われながら宿屋にたどり着くと、村人たちが「ガーリック、ガーリック」と歌い踊る姿を目にします。
ヴァンパイアの存在を確信する教授をよそに、お風呂が大好きな宿屋の娘サラに恋をするアルフレート。サラは父からの束縛にうんざりし、自由を望んでいました。そんなサラにクロロック伯爵が忍び寄り、お城へと誘います。

山口祐一郎さんは人間離れしたクロロック伯爵の存在を巧みに表現し、その唯一無二の歌声でサラを支配。囁くように歌ったかと思えば、ロックナンバーを劇場に響き渡らせ、その一挙手一投足が異次元なクロロック伯爵です。

フランク莉奈さんは、自由奔放で愛嬌のあるサラを生き生きと表現。“憧れの役だった”と語るサラは、フランクさんご自身のチャーミングさも存分に発揮された適役ではないでしょうか。可憐ながら実力派な歌声も必聴です。

アルフレート役の太田基裕さんは、純真で愛くるしいアルフレートを好演。サラにメロメロな姿や、教授に振り回される姿が印象的で、いざという時に勇気の出ない臆病さもキュートです。

石川禅さんは、研究に没頭しすぎて周囲が見えなくなってしまうアブロンシウス教授の変人っぷりをチャーミングに表現。2幕終盤には“後ろを見て!”と思わず声をかけたくなってしまうかも。太田基裕さんとのコンビがとても愛らしく、ヴァンパイアに翻弄される2人がコミカルに描かれます。

一方、城田優さんが演じるクロロック伯爵は彼の美学を感じさせるような力強さと佇まい、美しいマント捌きが印象的。歌声には安定感があり、伯爵の言葉につい聞き入ってしまいます。長くこの世界を見つめ続けるヴァンパイアから見た人間の醜さに、考えさせられる場面も。

中村麗乃さんは、サラのティーンエイジャーらしい自由への憧れをみずみずしく表現。舞踏会への憧れを目を輝かせて語り、可憐なヒロイン像を作り上げながらも、自由を渇望する姿にはサラの芯の強さが感じられます。

寺西拓人さん演じるアルフレートは、気弱な青年ながら教授への敬愛も感じます。しかしクロロック伯爵に、従ってばかりではなく自分の道を行け、と誘惑されると心の揺れ動きを繊細に表現されたのが印象的でした。

武田真治さん演じるアブロンシウス教授は、より論理的でしっかり者な教授のイメージ。寺西さんとのコンビはナチュラルな印象で、本作への案内人のような存在感が強まります。アルフレートとアブロンシウス教授はWキャストの組み合わせによって起こる化学反応が大きいコンビのように感じました。
各キャストの熱演はもちろん、本作と言えばロックな音楽と激しいダンスの数々。村の人々を賑やかに演じてから一転、ヴァンパイアたちの激しい群舞を繰り広げるアンサンブルの活躍に目を奪われます。バレエやアクロバットを取り入れたダンスナンバーも多く、ホラー的世界観ながら華やかさを感じる作品です。

また、サラの父・シャガールを演じる芋洗坂係長さん、シャガールの妻・レベッカ役の明星真由美さん、宿屋の女中・マグダ役の青野紗穂さんは三角関係を繰り広げ、青野さんは数々のミュージカル作品でその存在感を示してきた歌声で魅了。芋洗坂係長さんはコミカルにシャガールを演じます。

クロロック伯爵の召使クコールを演じるのは、駒田一さんと伊藤今人さん(梅棒)。幕間にも登場するのでお見逃しなく。
キャストが息をつく間もなく客席に降り、客席通路を駆け回る本作。客席にいる1人も逃さず本作の世界観に取り込んでやろう!というヴァンパイアたちの思惑にまんまとハマってしまう、中毒性抜群の作品です。

「皆様に一番元気をお届けすることのできるミュージカル」
初日記念会見には、山口祐一郎さん、城田優さん、フランク莉奈さん、中村麗乃さん、太田基裕さん、寺西拓人さん、石川禅さん、武田真治さんが登壇しました。

「この作品がようやく成人式を迎えて、良い婿が来ないかなと思っていたら来ました!私は幸せです」とWキャストの城田優さんの出演を喜んだ山口祐一郎さん。
城田さんは、圧巻のゲネプロを終えた直後でしたが「色々な課題と不安要素がありまして、感情が整理できていないのでネガティブなことをたくさん言いそう」とストイックな姿を見せます。「20年続いた『ダンス オブ ヴァンパイア』のクロロック伯爵というシンボル的なキャラクターを、自分なりに精一杯、日々向上心を持ち続けて全うし、最後まで生きられれば」と意気込みました。

フランク莉奈さんは「この作品を長年客席から観ていて、ずっとずっと憧れの作品だったので、やっと初めて舞台に立たせて頂ける喜びと、お客様と共有できる楽しみな気持ちでいっぱい」と笑顔で語ります。
中村麗乃さんはゲネプロを「皆さんに高揚感を感じて頂けるように頑張りたいなと思いながら挑んだんですけれど、緊張してしまった」と振り返りながらも、「母と父が名前を決める時に麗乃とサラで迷ったという話を聞いて、これはご縁かもしれないと思って、サラだった私をお見せできるので楽しみにしていただけたら」と明かします。
太田基裕さんは「劇場空間にお客様が入ってさらに濃くなっていく作品だと思いますので、互いに共有しながら、エンターテイメント要素たっぷりの作品をお届けしたい」と意気込みます。

寺西拓人さんは「これから東京公演が始まりますが、名古屋・大阪・博多座とたくさん公演があるので、夏はお客様と一緒に踊り狂いたいと思います」とご挨拶しつつ、「僕も最近親に聞いたら、名前の候補がアルフと拓人だったって…」とおどけて会場を沸かせました。
石川禅さんは6年ぶりの再演に、「実はこの作品は二度とお目にかかれないかなと思っていました。この作品って出演者全員が客席に降りるんですね。そしてお客様と近い距離でコンタクトを取れるので、この6年間で健康に留意するということを考える時代になってしまって、今でも医療の現場では大変な思いをされている方、後遺症に悩んでいる方もいるでしょうし。皆様とここでお会いできる機会があるということを幸せに感じながら頑張りたいと思います」と思いを語ります。
武田真治さんは「個人的には、初演の教授役が心の師匠である市村正親さんだったということで、その役をやらせて頂ける喜びを感じております」とコメント。石川さんに対しても「歴代のキャストが現役で演じて見せてくれているという一番理想的な形で稽古を進められたので、禅さんがいなかったら初日を迎えられなかったと思うくらい感謝しています」と語りました。
最後に山口さんから「2025年、皆様に一番元気をお届けすることのできるミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』、ぜひ劇場に足をお運びください」とメッセージが贈られ、会見が締め括られました。

ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』は2025年5月10日(土)から31日(土)まで東京建物 Brillia HALLにて上演。6月7月には愛知・御園座、大阪・梅田芸術劇場メインホール、福岡・博多座にて公演が行われます。公式HPはこちら

最後には客席も一緒に踊るカーテンコールがありますので、ぜひ振り付け動画を観てキャストと共に踊り狂ってください!