国内外で数々の映画賞に輝き、「おいくず」と呼ばれる熱狂的ファンを生み出した話題作『ひとくず』。児童虐待の実態に真正面から向き合った本作がついに舞台化し、2025年7月4日(金)から本多劇場で上演されます。私たちが目を向けるべき現実が、舞台となって蘇ります。
映像劇団テンアンツとは?国内外映画祭で受賞歴多数『ひとくず』を舞台化
映像劇団テンアンツは、映画監督として国内外の映画祭で数々の受賞歴のある上西雄大さんが主催する劇団です。
舞台作品だけではなく、年間に複数の映像作品を公開しているのが、他の劇団にはない特徴であり、今回の『ひとくず』も、2019年に製作され、2020年に劇場公開された同名の映画を舞台化した作品です。
映画『ひとくず』は、母親の恋人から虐待を受けている少女・鞠(小南希良梨さん)と、鞠の家に空き巣に入った金田(上西雄大さん)が出会うところから始まります。鞠に自分の境遇を重ねた金田は、鞠を虐待していた男を殺害してしまいます。その後、鞠の母親・凛(古川藍さん)と共に、3人での生活が始まるのですが……。
2020年に全国の映画館で上映開始されると、あまりの反響から観客による上映運動が巻き起こりました。その勢いはすさまじく、「おいくず」と称する熱狂的なファンが全国に広がったほどでした。
2019年度の熱海国際映画祭では最優秀監督賞(上西さん)、最優秀俳優賞(小南さん)を受賞したほか、同年度の賢島映画祭では特別賞、主演女優賞(小南さん)を受賞しています。
高い評価を得たのは、国内の映画賞だけではありません。
2019年度のフランス・ニース国際映画賞では、主演男優賞(上西さん)と助演女優賞(古川さん)、そして同年度のスペイン・マドリード国際映画祭では、最優秀助演女優賞(古川さん、徳竹未夏さん)を受賞しています。
さらにイタリア・ミラノ国際映画祭では、ベストフィルム(グランプリ)主演男優賞(上西さん)を受賞するなど、海外の著名な映画賞においても大きな反響を呼びました。
なぜ今『ひとくず』なのか?増加する児童虐待と世代間連鎖の問題
上西さんは、児童相談所で働く医師から児童虐待の実態を耳にしたことがきっかけで、本作品を書き上げたそうです。
日本の現状では、児童虐待相談に対し行政が非常に介入しにくく、さらに年々増加傾向にあります。
厚生労働省によれば、令和5年度に児童相談所が対応した子どもへの虐待の件数は、22万5550件を超え、これまでの集計では過去最多となったことがわかっています。
また、本作の登場人物である金田や、鞠の母である凛のように、自身も被虐待の経験を持つ人が自分の子どもに虐待をしてしまうという、世代間の連鎖があることも指摘されています。
あまりにも痛ましい現状ですが、『ひとくず』では、「虐待に苦しむ子どもたちの存在を世界に発信していきたい」と語られています。
映像劇団テンアンツ第59回『ひとくず』は2025年7月4日(金)~7月9日(水)まで、下北沢・本多劇場で上演されます。公式ホームページはこちらです。

児童虐待は、思わず胸が痛む苦しい社会問題です。しかし、実は私たちの身近なところにも、虐待に苦しむ子どもや、世代間の連鎖を止められない大人がいるのかもしれません。本作を観て、私たちに出来ることは何なのか、考え直したいものです。