アメリカの女性作家で、死後にピューリッツァー賞を受賞した唯一の作家であるシルヴィア・プラスの人生を描いた韓国発ミュージカル『シルヴィア、生きる』が、2026年4月に東京で開幕。演出を俳優・歌手の藤岡正明さん、主演シルヴィア役を平野綾さんが務めます。

10年に一度の「生き直し」。生を探し求める物語に

ミュージカル『シルヴィア、生きる』は、作家のシルヴィア・プラスが残した詩や小説を彼女自身の人生と重ね合わせながら「生きる」ことについて問いかける物語です。

韓国のクリエイター集団「JakJak」に所属するチョ・ユンジさんが脚本・作詞を、キム・スンミンさんが作曲を手掛けた本作は、デビュー作でありながら韓国ミュージカル・アワーズの大賞にノミネート。

2人はこれ以降も境界性人格障害をテーマにした『キキの境界性人格障害ダイアリー』や絵画の展示にミュージカルを組み合わせた『ダリ、ガラ企画展』など独自の創作活動に取り組み、今や韓国だけでなく海外でも大きく注目されています。

では、新進気鋭のミュージカル・コンビがスポットを当てたシルヴィア・プラスとはどんな人物だったのでしょうか。

1932年にアメリカ・ボストンで生まれたシルヴィアは幼い頃より詩や物語を書き始め、10代で作品が雑誌に掲載されます。1963年には社会の閉塞感や生きていくうえでの苦悩を鮮烈に描き出した自伝的小説『ベル・ジャー』を別名で出版。しかし、同年2月11日に自ら命を絶ってしまいます。

その後、唯一の長編小説となった『ベル・ジャー』は、イギリス・アメリカで430万部を売り上げるほどの大ベストセラーに。さらに、1982年に夫であり詩人のテッド・ヒューズが編集した詩選集『The Collected Poems』でピューリッツァー賞を受賞。生前よりも死後に小説家・詩人として高く評価されたシルヴィアですが、生涯で3度自殺を試みたといわれています。

ただ、その行動は死へ向かうためではなく、生き直すために必要だったのではないか。そんな視点から、本作では架空のキャラクターを通じて「何者でもなく、何者かになる」という“生”への想いを音楽とともに紡ぎます。

<あらすじ>
両親に無理やり「第九王国」行きの汽車に乗せられたシルヴィアは、青い目の女性との出会いからその旅に疑問を感じて途中下車を試みようとする。時間は流れ、優秀な大学生に成長したシルヴィア。ロンドンに留学し、やがて夫となる天才詩人テッドと出会う。しかしテッドとの生活の中でシルヴィアは、亡くなった父親と、そして彼女の人生を縛りつけた母親との記憶に苛まれる。それと同時に文壇から認められることのない自分と才能に溢れるテッドとの間で孤独に葛藤し続け、まるで“ベル・ジャー(小さなガラスの鐘)”の中に閉じ込められているように感じる。そんなシルヴィアの側には、いつからか彼女を誰よりも理解する女性、ヴィクトリアがいた。そしてヴィクトリアに導かれるように強く生きようとするシルヴィアに運命の1963年2月11日が訪れる。

多才な俳優が日本版の演出に挑む

今回、舞台や映像コンテンツを企画プロデュースするconSeptが3ヶ月連続で公演を行う『conSept2026:シーズンReBORN』の第3弾として、ミュージカル『シルヴィア、生きる』が日本で初演されます。

日本版の演出を手掛けるのは、俳優であり歌手としての顔も持つ藤岡正明さん。2005年のミュージカル『レ・ミゼラブル』のマリウス役を皮切りに、『ミス・サイゴン』『ジャージー・ボーイズ』『タイタニック』など数々のミュージカル作品で活躍しています。過去には、conSeptが企画・製作・主催したミュージカル『いつか~one fine day』と『HUNDRED DAYS』で主演を務めました。

また、2026年1月10日に開幕した舞台『ピアフ』にも出演中です。さらに主宰する演劇ユニット「青唐辛子」では脚本から演出、音楽、出演まで担う多才ぶりを発揮。実は藤岡さんにとって本作が初めての外部演出になるとあって、ますます期待が高まります。

5名のキャストで魅せるミュージカル

本作の主人公であるシルヴィアを演じるのは、声優として人気を博す一方で、舞台を中心に俳優としての活躍も光る平野綾さん。主な出演作にミュージカル『レ・ミゼラブル』『レディ・ベス』『モーツァルト!』『この世界の片隅に』などがあり、優れた歌唱力と生き生きとした演技で確かな存在感を放っています。

また、シルヴィアと一心同体である不思議な女性・ヴィクトリア役に、俳優・歌手・声優と多彩に活動する富田麻帆さんがキャスティング。ミュージカル『アニー』のモリー役でデビューしてから子役時代を経て、さまざまな舞台やミュージカルに出演してきました。物語のキーパーソンといえるキャラクターをどのように解釈して演じるのか、大いに気になります。

シルヴィアの夫で才能ある詩人のテッド役は、映像作品でデビューして以来、舞台やミュージカルでも躍進する鈴木勝吾さんです。ミュージカル『憂国のモリアーティ』シリーズや舞台『鋼の錬金術師』など2.5次元作品にも多数参加しており、直近では2025年12月までミュージカル『SPY×FAMILY』に出演。2023年には饗宴『世濁声〜GOOD MORNING BEAUTIFUL MOUSE』で初めて作・演出に取り組み、枠にとらわれず挑戦を続けています。

さらに、映画にドラマ、舞台と幅広く俳優としてのキャリアを重ねている伊藤裕一さんが、アルバレス役ほかとして登場。MCを担当したり脚本・演出を担当したりと、ジャンルを問わず活動を続ける中で磨かれた柔軟な表現力に注目です。

そして、近年のミュージカル界で実力を発揮している原田真絢さんがルース役ほかを務めます。2025年だけでもミュージカル『ジャージー・ボーイズ』『H12』『SIX』といった話題作に出演し、熱量ある演技で観客の心を掴んできました。2026年2月まで全国ツアー中のミュージカル『十二国記 -月の影 影の海-』では、圧倒的な歌声で舒栄(じょえい)役を好演しています。

ミュージカル『シルヴィア、生きる』は、2026年4月2日(木)から26日(日)まで東京都・中野区のTHE POCKETにて上演されます。チケットや公演に関する詳細は公式HPをご確認ください。

もこ

シルヴィア・プラスの人生を悲劇で終わらせるのではなく、「生きる」ことへの願いにつなげようとする物語は、現代社会に生きる私たちの心にも響くのではないでしょうか。