2月7日(土)から銀座 博品館劇場にて開幕するミュージカル『最後の事件』。名探偵「シャーロック・ホームズ」と、彼を生み出した作者「アーサー・コナン・ドイル」が、小説と現実の狭間で攻防を繰り広げる2人ミュージカルです。本作でアーサー・コナン・ドイル役を務める加藤和樹さんにお話を伺いました。
小説と現実が交錯するドラマチックな物語

−アーサー・コナン・ドイルが1893年に発表した短編集『シャーロック・ホームズの回想』の「最後の事件」をモチーフに、韓国で創作されたミュージカル『最後の事件』。加藤さんは2023年に司会を務められたイベント『K-Musical Roadshow in TOKYO』で本作のショーケースを観られています。稽古に入られて、本作の魅力を今どのように感じていますか。
「ショーケースで拝見した時から、どういう展開になるのだろうとワクワク感、ドキドキ感を凄く感じました。シャーロック・ホームズは架空の人物ですが、現実に現れ、アーサー・コナン・ドイルと共に事件を解決していく。ドイルは自分の夢との葛藤に苦しんでいくのですが、そこで紡がれる物語が非常にドラマチックで魅力的です。とにかく楽曲が良いですし、どんな結末を迎えるのか、観客の皆様にも楽しんでいただけると思います」
−楽曲についても詳しく教えてください。
「2人ミュージカルなので楽曲数が多く、難しさもあるのですが、キャラクターと芝居が体の中に染み込んでくると、より物語の中に入り込める楽曲ばかりだなという印象があります。ドイル以外の役柄を演じ分けるにあたっても音楽が表現している部分が多いので、そこに乗っかっていくことが重要かなと思います」
−2人ミュージカルへの出演は初めてということですが、やってみていかがですか。
「始まると本当にあっという間です。休憩を挟まずに物語を進めていくことで、役者もそうですし、多分観ているお客様もグッと世界観に入り込むことができると思います。やることは多いですが、すごく充実感がありますね」
ドイルが苦悩するのは「夢」があるから

−ドイル役を演じるにあたり、どのような役作りをされていますか。
「ドイルは歴史小説を書きたいという夢があって、医者としての夢、作家としての夢、何を選ぶのかという選択の連続なんです。この作品の中でドイルが何を目指していて、苦悩しているかというところを掘り下げていくのが重要でした」
−本作では、ドイルが歴史長編小説を描きたいと願う一方で出版社からは「ホームズが登場しない小説は必要ない」と拒まれ、世間からの期待と自身の夢がずれていく姿が描かれます。
「自分の名前より、自分が生み出したものの名前が知られていくのはすごく複雑な心境だと思います。劇中でも、“アーサー・コナン・ドイルを求めているわけじゃない、シャーロック・ホームズの作家を求めているんだ”といった台詞があるんです。でも自分でなければ、シャーロック・ホームズを生み出すことはできなかったはず。そこにやるせなさを感じます。シャーロック・ホームズを書き続けていれば富や名声が手に入るかもしれないけれど、その狭間で苦しむのは自分に夢があるからだと思います。自分がやりたいことを貫くというメッセージも込められている作品だと思いますが、ドイルとしては葛藤や苦悩が渦巻いています」
−加藤さんご自身が俳優として共感する、リンクする部分はありますか。
「やはり我々は作品に役として出演させていただく立場なので、有名な作品であればあるほどプレッシャーを感じますし、自分を知らない方が作品を観ていただいて、役を通して知ってくださるという機会も多いです。自分の名前より、役や作品が先行するという部分はどうしてもあると思います。それが知ってもらうきっかけになるところもあるので一概に弊害だとは思わないですが、キャラクターがあまりにも有名だと、驚きやもどかしさを感じることもありました」
−ドイルをトリプルキャストで演じる矢崎 広さん、髙橋 颯さんと役について話し合われることもありますか。
「基本的に稽古は一緒に進めているので、ドイルがなぜそういう行動に至るのか、行動原理について話し合うことがあります。まだ今は一緒にシーンを作っていっている段階ですが、ここからオリジナリティも出ていくと思います」
ドイルがホームズの相棒にも宿敵にもなる面白さ

−そしてドイル役だけでなく、シャーロック・ホームズ作品に登場する相棒のワトソンや宿敵モリアーティを演じられます。
「そこがこの作品の面白さの1つだと思います。作者であり、パートナーであり、宿敵であり。それをドイルが演じるということに意味があると思います。
演出のソン・ジェジュンさんからも、ワトソンを演じていてもどこかにドイルの部分があるように、と言われています。シーンごとに、ワトソンが何%、ドイルが何%かは変わっていく。後半に行けば行くほどドイルの人格が強まっていき、ある意味、本の中にドイルが入っていくようにも感じます。一方で、ホームズは現実世界に侵食してくる。そこを舞台セットの変化で見せていくのも面白いです。ホームズにとってのパートナーがワトソンであり、ドイルであるというのが凄くグッとくるポイントだとも思います。
モリアーティはドイルやワトソンとは全く違うキャラクター像ですし、ホームズと対峙する形になるのでそれもまた面白いです。難しさもありますが、演じ分けという意味では楽しんでやっています」
−シャーロック・ホームズを演じる渡辺大輔さん、太田基裕さん、糸川耀士郎さんの印象を教えてください。
「渡辺大輔くんは唯一僕より年上なので、どっしりとした、ある意味ではお手本のようなシャーロック・ホームズです。凄く面白くて、安心感もあるからこそ強敵です。太田基裕くんは彼の持つチャーミングさとスマートさが、ホームズの天才さ、名探偵らしさを現しているように感じます。糸川耀士郎くんは一番若いホームズなので、フレッシュさがありつつも頭が切れて、飄々としている掴みどころのない感じもあります。3人が持つ雰囲気も年齢も違うので、ドイルとしての感じ方も異なります。お客様にもぜひ色々な組み合わせで観ていただきたいです」
−本作の脚本・作詞・演出を手がけたソン・ジェジュンさんが日本版でも演出を務められます。ソン・ジェジュンさんの印象はいかがですか。
「ご自身が脚本を描かれているので、彼自身がドイルのような、生み出す苦しみを経験しています。それをヒントに演出をされていますし、物語のイメージが彼の中にはっきりとあるので、それを我々がどう昇華していくかというところだと思います。照明を効果的に使用していて、細かいこだわりがあるので、劇場に行かないと分からないこともあり、役者・スタッフは大変な部分もありますが、劇場で完成させるのが今は楽しみです」
−日本での上演にあたり、調整された部分もありますか。
「曲が一部分追加されているところがあります。物語がより分かりやすいよう、調整されているようです。翻訳・訳詞・演出補の福田響志くんも一緒に、言葉のチョイスというのはこだわりを持って、シーンをやっていく中で台詞を変えることもあります。日本語にした時にお客様に届く印象が、韓国語でお芝居を作っている時と変わらないよう、カンパニーとしてディスカッションを重ね、こだわりを持ってやっています」
“完璧”であるシャーロック・ホームズの魅力

−本作で改めてシャーロック・ホームズに向き合ってみて、シャーロック・ホームズはなぜ多くの人を惹きつけたと思われますか。
「彼が完璧であるところ。本作の中でも“完璧”という言葉が何度も出てくるんですけれども、完璧を求める孤高さ、唯一無二であるところが、側から見るといけ好かない感じに見えることもあるかもしれませんが、やはり彼が持つ魅力だと思います。そして創作物でありながらも人間らしいところ。現実に生きているかのように、想像力を掻き立たせるところが魅力なのかなと感じています。言動にミステリアスな部分があるのも、人を惹きつけるところだと思います」
−本作にはさまざまなメッセージが込められていると思います。どういったことを大切に演じたいでしょうか。
「ドイルとしては、自分のやりたい夢を追い続けることの大切さというのが、1つメッセージとして込められていると思います。そしてドイルとホームズのある意味、友情ですね。互いを認め合い、尊重し合うことの素晴らしさ。自分の欲望だけでなく、どうしたらその人との関係が上手くいくのか、相手のために自分がどう行動するべきか。そういったメッセージをキャッチしていただけるよう、演じていきたいです」

衣装クレジット:ジャケット¥195,800-、パンツ¥101,200-/Y’s for men(ワイズプレスルーム tel 03-5463-1540)、ニット¥37,400-、ベルト¥27,500-、靴¥99,000-/Yohji Yamamoto POUR HOMME(ヨウジヤマモトプレスルーム tel 03-5463-1500)
ミュージカル『最後の事件』は2026年2月7日(土)から3月8日(日)まで銀座 博品館劇場、3月13日(金)から3月16日(月)までサンケイホールブリーゼにて上演されます。公式HPはこちら
シャーロック・ホームズVSアーサー・コナン・ドイルという、ワクワクする物語!現実に小説の世界が侵食していく様が、舞台でどう描かれるのか楽しみです。



















