性について、大人と子供について、社会の抑圧について…。様々な議題を投げかけてくる名作ミュージカル『春のめざめ』が、浅草九劇で上演。小劇場らしい臨場感ある空間に、若者たちの熱い歌声が響き渡りました。(2022年7月・浅草九劇)作品についてはこちら

“問題作”として『春のめざめ』が投げかけ続ける議題

今や子供でも世界中の情報にアクセスできる時代ですが、『春のめざめ』の舞台である19世紀ドイツでは、大人や学校からの情報が全て。文学から知識を得たメルヒオールが社会の矛盾や抑圧に気づきつつある中、落第寸前のモーリッツ、母親に“子供はどうやったら出来るのか”と尋ねても答えてもらえないヴェントラ、父親から暴力を受けるマルタらは、限られた狭い世界への疑問に困惑するばかり。大人が子供たちを尊重するのではなく、支配しようとしたことで、子供たちの運命は悲劇に向かっていってしまいます。

日本でも教育における課題は多くあります。『春のめざめ』の主軸にある性教育というテーマは、知識を持っていなければ取り返しのつかない事態に陥るにも関わらず、未だ解決されていない大きなトピックスでしょう。また、1つの正解のみを覚えるのではなく、自ら学び考える力をどう養うか。このテーマも日本において大きな議題だと感じます。『春のめざめ』の舞台は一見異世界のように感じますが、現代の日本で上演されるにとても相応しい作品なのではないかと感じました。

心奪われる音楽と、シーンを印象付ける演出たち

『春のめざめ』はトニー賞受賞のロック・ミュージカル。子どもたちの心の内にある叫びを美しく描いた音楽が印象的です。また時にキャストが木や墓を表現するのも演劇らしく、芸術的な演出。大人から押し付けられた言葉、子どもたち同士で交わした言葉を、紙を持つことで表現し、紙を破りひらひらと舞い落ちるシーンも印象的でした。

本作はWESTチームとEASTチームの2チームでの上演。今回観劇したのはWESTチームで、メルヒオール役・石川新太さん、モーリッツ役・瀧澤翼さん(円神)、ヴェントラ役・栗原沙也加さん、イルゼ役・二宮芽生さんの歌唱力の高さが光りました。一方で、演技と歌との乖離が少し気になるところ。歌では作品に大きく入り込んでいるように見えたため、演技でもあと一歩、踏み込んで役の情熱を伝えてほしいと感じたのが本音でした。キャスト全員で1列に並び歌うシーンは、『RENT(レント)』の「Seasons of Love」を彷彿とさせます。彼らの強い眼差しに、才能ある役者たちがこの劇場から大きな世界へと旅立っていくのだ、と希望を感じさせられました。

『春のめざめ』は7月31日まで、浅草九劇にて上演予定。作品の公式HPはこちら

Yurika

上部にあるセットから、生演奏が降り注いでくるのがとても素敵でした。色々と考えさせられる作品ですが、音楽はとても美しく力強い作品です。