ももいろクローバーZの映画『幕が上がる』の原作者でもある平田オリザ氏率いる劇団・青年団。今の時期にピッタリ(?)の、オリンピックを題材にした短編『コントロールオフィサー』と『百メートル』の2本立て公演を観てきました。(2021年1月・アトリエ春風舎)

勝負の後の男たちの気まずい会話劇

『コントロールオフィサー』は水泳の代表選考会のドーピング検査控室が舞台。すでに競技を終え、勝敗を決した後の気まずい雰囲気の中、検尿のために尿意を待つ選手同士の何気ない、しかし心情の垣間見える会話がユーモアを交えて描かれます。

後ろに待機するコントロールオフィサーと呼ばれる検査員は、「中立の立場なので」と会話に参加しませんが、選手たちのやり取りにつられて思わず笑ったり、「こういう顔なんです」ととぼけたりと、しっかり聞いている様子がおかしく、競技後のだらけたやるせない空気を上手く作り上げていました。

走る男たちの控室での空中戦

『百メートル』はオリンピック代表選手を決める100m決勝の控室が舞台。こちらはレース前ということで、一転して張りつめた空気が漂います。選手たちがそれぞれ集中力を高める中、若手選手のコーチが、天然なのか策略なのか、ドブと川の違いを力説したり、与太話を熱弁して場をかき乱します。

苛立ちながら次々に選手が去っていく中、先ほどまでの騒々しさから一転、「何も考えず、ピストル鳴ったら走りゃいいんだから」と若手選手に淡々と語るコーチ役の永井秀樹さんの緩急のついた好演が印象的でした。

Shinpei

会話の裏に流れる思惑をじっくりと鑑賞する、青年団ならではの楽しさをあらためて実感できた60分でした。