2018年9月から新国立劇場の芸術監督を務める、翻訳家・演出家の小川絵梨子さん。小川さんの芸術監督としてのラストを飾る、新国立劇場のフェスティバルが動き出します。
短編・中編作品を中心とした、古典から現代、日本国内や海外のあらゆる演劇作品をアンソロジーとして上演する『20の物語-週末を、劇場で-』が2026年7月16日(木)から8月2日(日)まで上演されます。
3週にわたり、木曜日から日曜日まで上演される本フェスティバルは「演劇に出来る限り気軽に触れて、より多くのお客様に劇場に足を運んでいただきたい」という小川監督の願いから実現しました。そのラインナップには、岡本健一さん主演のリーディング公演『マクベス』など、上質な演劇作品が目白押しです。本記事では、『20の物語-週末を、劇場で-』の見どころと、全作品の概要をご紹介します。
『20の物語-週末を、劇場で-』の4つの見どころ
上質なのにリーズナブルな価格設定
まず見どころとしてお伝えしたいのが、チケット価格がリーズナブルに設定されているところです。
『20の物語-週末を、劇場で-』には20の作品が登場しますが、3つの料金体系に分類されています。
A料金に該当するのは、リーディング公演『マクベス』、そして『チョコレート・アンダーグラウンド』。こちらの公演は、全席指定で税込み5,500円です。上演時間は90分から100分前後が予定されています。
上記以外の公演はB料金に該当し、全席指定で税込み3,300円で観劇可能です。上演時間は40分から60分前後で、A料金より短めとなっています。
さらに、『ベッカンコおに』、読み聞かせ『くまの子ウーフ』、『ごっちん』は無料で観劇できます。この3作品は4歳から入場可能ですが、事前申込制(抽選)となりますのでご注意ください。
また、各日程で昼・夜の時間帯ごとに2公演ずつをセットにしたお得な「半日券」も販売されています。たとえば、A料金+B料金で10%オフの8,000円となり、B料金+B料金では6,000円で観劇できるチケットです。
上質な演劇だけではなく、オペラ、バレエなどあらゆる舞台芸術を上演し続ける新国立劇場で、これほどリーズナブルな料金で観劇できる機会はなかなかないかもしれません。
今まで新国立劇場の演劇を観に行ったことがないという方にとっても、気軽に劇場に足を運べる絶好の機会です。
夏休みの「親子観劇デー」を楽しめる
『20の物語-週末を、劇場で-』の公演期間は、2026年7月16日(木)から8月2日(日)となります。お子さんの夏休み期間に重なっているという方も多いのではないでしょうか。
本公演では、観劇をしたいけど、お子さんの預け先がないという方にも、嬉しいサービスや演目が揃っています。
7月25日(土)と8月1日(土)には、新国立劇場の託児室<キッズルーム『ドレミ』>(予約制)がご利用いただけます。利用料金は、3ヶ月から1歳のお子さんは2,500円、2歳から12歳のお子さんは1,500円です。
さらに、託児室を使える2日間には読み聞かせ『くまの子ウーフ』(推奨年齢4歳から8歳)や『ごっちん』(推奨年齢10歳以上)など、お子さんも楽しめる演目が上演されます。観劇を楽しんだ後、お子さんと一緒に無料公演を観劇する「親子観劇デー」にしてみるのはいかがでしょうか。
古典から近代劇まで、珠玉の名作を堪能できる
さらに見どころとして触れておきたいのが、20作品のラインナップの多彩さです。
シェイクスピアの古典作品『マクベス』はもちろんのこと、アーサー・ミラーやソーントン・ワイルダーなど近代の優れた劇作家たちの作品を楽しめます。
特にミラーの『ラスト・ヤンキー』やワイルダーの『ロング・クリスマス・ディナー』は、『セールスマンの死』(ミラー)、『わが町』(ワイルダー)とは違い、日本でも頻繁に上演される作品ではありません。この機会に、ぜひ楽しんでいただきたい作品です。
そして別役実や岸田國士など、長く愛される日本の名演劇や、戦後を代表する作家・秋元松代の作品が観られるのも本フェスティバルの醍醐味です。どのような演劇作品が日本の演劇界を長く支えてきたのか、気軽に体感できる機会と言えるでしょう。
シンガポール・台湾の演劇作品に出会える
シンガポール発の作品『ナディラ』や、台湾の劇作家・鴻鴻さんによる『煙草のハイ(High)について-吸煙對身體有High-』も重要な見どころです。
筆者個人の意見ですが、日本でアジア圏の演劇作品が取り上げられ、上演されることは、英米の演劇に比べるとまだ少ない状況にあると感じています。
2025年にアメリカ・ニューヨークで行われた第78回トニー賞では、韓国発のミュージカル『メイビー、ハッピーエンディング』が作品賞を含む6部門を受賞するなど、アジアの演劇やミュージカルへの関心が高まる昨今、アジアの国々の優れた作品を上演することは大きな意義があるのではないでしょうか。
『煙草のハイ(High)について』では、台湾の社会問題を演劇視点で描き出し、『ナディラ』では「共生」がテーマになっています。現代の社会を生きる私たちにも響くメッセージが込められているはずです。
古典から現代劇まで。アンソロジー作品の一覧
それでは、『20の物語-週末を、劇場で-』にはどんな作品が名を連ねているのでしょうか。ここからは、20作品の概要、公演日やスタッフ、主な出演者をご紹介します。
『ラッツォクの灯』
熊谷達也さんの連作短編集『希望の海 仙河海叙景』 を原作に、東北に生きる人々を通して3.11からの再生を描く物語。
公演日:2026年7月16日(木)、7月18日(土)、7月19日(日)
脚本・演出:赤澤ムック
出演:永嶋柊吾 ほか
『水のほとりの女』
戦死した夫の帰還を信じて静かに暮らす未亡人きよと、同じく未亡人でありながら奔放に生きるみち。正反対のふたりの会話から生まれるものとは。
公演日:2026年7月16日(木)、7月19日(日)
作:田中澄江
演出:小林七緒
出演:町田マリー ほか
リーディング公演『マクベス』
シェイクスピアの四大悲劇『マクベス』。新国立劇場の「歴史劇シリーズ」メンバーが挑むリーディング公演。
公演日:2026年7月17日(金)、7月18日(土)、7月19日(日)、7月24日(金)、7月25日(土)、7月26日(日)
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:小田島雄志
構成:小田島創志
演出:鵜山仁
出演:岡本健一、中嶋朋子 ほか
2本立て『トイレはこちら/或日の一休和尚』
別役実と武者小路実篤の作品を2本立てて上演。それぞれに対照的なユーモア溢れる作品を楽しめます。
公演日:2026年7月17日(金)、7月18日(土)
作:別役実(『トイレはこちら』)/武者小路実篤(『或日の一休和尚』)
演出:西沢栄治
出演:佐野陽一(『トイレはこちら』)/原金太郎(『或日の一休和尚』) ほか
2本立て『ストロンガー/トライフルズ』
女優のミセス・Xが語る幸福に潜む真実(『ストロンガー』)。夫殺しの容疑者・ミニーが下した決断(『トライフルズ』)。2つの部屋で交錯する女性たちの視線が、真実を静かに暴いていく。
公演日:2026年7月18日(土)、7月19日(日)
作:ヨハン・アウグスト・ストリンドベリ(『ストロンガー』)/スーザン・グラスぺル(『トライフルズ』)
翻訳:一川 華(『ストロンガー』)/浦辺千鶴(『トライフルズ』)
演出:万里紗
出演:森川由樹(『ストロンガー』)/板橋廉平(『トライフルズ』)ほか
無料公演『ベッカンコおに』
小劇場ホワイエがステージに変身。心優しい「おに」と、目が見えない孤独な少女のものがたり。
公演日:2026年7月18日(土)、7月19日(日)
原作:さねとうあきら
脚本:ふじたあさや
演出:小林七緒
出演:チョウヨンホ ほか
2本立て『命を弄ぶ男ふたり/口に花を持つ男』
岸田國士とピランデルロ。日本とイタリアの巨匠がそれぞれに描く、生と死の境界線にいる男性二人芝居。
公演日:2026年7月23日(木)、7月25日(土)
作:岸田國士(『命を弄ぶ男ふたり』)/ルイジ・ピランデルロ(『口に花を持つ男』)
翻訳:小川絵梨子(『口に花を持つ男』)
演出:大澤 遊
出演:寺内淳志 、渡邊りょう
『不毛ドライブ』
蓬莱竜太さんが作・演出を務める会話劇。行き先のないドライブの行方はどうなるのか。
公演日:2026年7月23日(木)、7月25日(土)、7月26日(日)
作・演出:蓬莱竜太
出演:濱仲 太、関口アナン
『軽塵』
戦後日本を代表する劇作家、秋元松代の処女作。空襲が激化する昭和20年の夏を舞台に、家長としての重責に苦しむ主人公と家族を描く。
公演日:2026年7月24日(金)、7月26日(日)
作:秋元松代
演出:須貝 英
出演:猪野 学 ほか
『チョコレート・アンダーグラウンド』
世界から甘いものが消えた日、僕たちの戦いが始まった。新国立劇場の「こつこつプロジェクト」発、青少年向け公演。
公演日:2026年7月25日(土)、7月26日(日)、8月1日(土)、8月2日(日)
原作:アレックス・シアラー
翻訳:金原瑞人(『チョコレート・アンダーグラウンド』求龍堂・刊)
脚色・演出:鈴木アツト
出演:國崎史人 ほか
無料公演 読み聞かせ『くまの子ウーフ』
1969年にポプラ社から出版された絵本『くまの子ウーフ』。大人気シリーズからセレクトしたいくつかのお話を読み聞かせ。
公演日:2026年7月25日(土)、7月26日(日)
出演:土井真波、菊池夏野 ほか
『ロング・クリスマス・ディナー』
ある一族の90年を、一場の食卓で描き出す。『わが町』で知られるソーントン・ワイルダーの名作を上演。
公演日:2026年7月30日(木)、8月1日(土)
作:ソーントン・ワイルダー
翻訳:水谷八也
演出:宮田慶子
出演:浅野令子 ほか
『ラスト・ヤンキー』
精神病院の待合室で交わされる、2人の男の雑談。真の幸福とは何かを問いかける、アーサー・ミラー円熟期の傑作。
公演日:2026年7月30日(木)、8月1日(土)
作:アーサー・ミラー
翻訳:小田島創志
演出:蓬莱竜太
出演: 本折最強さとし 、石母田史朗
リーディング公演『パッシング・バイ』
1972年のニューヨークを舞台に、映画館で偶然出会った画家のトビーと元飛込選手のサイモンは心を通わせていく。人生の一瞬の鮮やかな輝きを描いた作品をリーディング形式で上演。
公演日:2026年7月31日(金)、8月2日(日)
作:マーティン・シャーマン
翻訳:広田敦郎
演出:山田由梨
出演: 長井健一 、森 かなた
リーディング公演『ナディラ』
他民族・他宗教国家であるシンガポールを舞台に、マレー系ムスリムのナディラが信仰と家族の絆や多文化社会の現実に直面する。「共生」に揺れる、家族の物語。
公演日:2026年7月31日(金)、8月2日(日)
作:アルフィアン・サアット
翻訳:一川 華
演出:小山ゆうな
出演: 渡邊真砂珠、小島 聖 ほか
『煙草のハイ(High)について-吸煙對身體有High-』
台湾の劇作家・鴻鴻さんが、チェーホフへのオマージュを込めて書いた一人芝居。禁煙を推進する側の人間でも医学博士でもない1人の女性が「煙草の害について」というテーマで語り出す。やがてそれは公権力への違和感や台湾を取り巻く状況へと繋がっていき……。
公演日:2026年8月1日(土)、8月2日(日)
作:鴻鴻
翻訳:山﨑理恵子
演出:小川絵梨子
出演:かんのひとみ
ボーナスプログラム リーディング公演『タバコの害について』
妻に命じられ「タバコの害」の講演を行うニューヒン。だが、彼の話は自身の惨めな結婚生活や自由への憧れへと飛躍していく。
公演日:2026年8月1日(土)、8月2日(日)
『煙草のハイ(High)について』のあとに上演
作:アントン・チェーホフ
翻訳:原 卓也
演出:小川絵梨子
出演:下総源太朗
無料公演『ごっちん』
生まれつき大きな体とすごく強い力を持つ、小学三年生の少女・ごっちん。普通って誰が決めるんだろう。周りから浮き出した自分の姿と、優しさという名の孤独を描く。
公演日:2026年8月1日(土)、8月2日(日)
作:岩井秀人
演出:鈴木アツト
出演:大谷亮介 ほか
上演時間、チケット料金、対象年齢については、新国立劇場による特設ページをご覧ください。
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個人的に注目したいのが、20作品中『命を弄ぶ男ふたり/口に花を持つ男』、『不毛ドライブ』、『ラスト・ヤンキー』、『パッシング・バイ』が男性の2人芝居であることです。何か意図があるのでしょうか?ぜひ劇場に行って確かめてみたいです。



















