劇団イキウメ主宰・前川知大さんの代表作『聖地X』を、桐谷健太さん、和希そらさんらを迎えてPARCO劇場で上演。宝塚歌劇団で活躍後、『ジキル&ハイド』『SIX』『SPY×FAMILY』『梨泰院クラス』などに出演してきた和希さんは本作で初のストレートプレイへと挑みます。ドッペルゲンガーの出現をきっかけに、とある土地の秘密に迫る不思議なSFコメディ。本作にかける思いを和希さんに伺いました。
不思議さとリアルさが交錯する初めての世界観

−脚本を読んでみて、どのような印象を抱かれましたか。
「どういう展開になるのか全然読めなくて、本当に普通に楽しみながら作品を読んでいったという感じでした。自分が想像していなかった終わり方だったので、こういう風にまとまっていくのかと驚きました。私は初めてのストレートプレイとなるので、相槌だけで日常的な会話が繰り広げられていくのが新鮮でしたし、どのように場面転換がされていくのかなど、気になることがたくさんあります」
−ストレートプレイ初挑戦の心境はいかがですか。
「ずっと挑戦したかったものなので、不安はなく、楽しみな気持ちと、どんなことを吸収できるんだろうというワクワクがあります。もちろんミュージカルにもお芝居はあるのでそこまで構えた気持ちはありません。今まで歌と踊りとお芝居をやってきて、どれも大好きなんです。宝塚歌劇団の下級生の頃は踊りが好きで、ダンスがいっぱいあったら嬉しいという感じだったんですけれど、そこから様々な経験を経て、歌もお芝居も好きになっていきました。お芝居について色々と学びたいと思っている時期にストレートプレイに挑戦できることが今すごく楽しみです」
−和希さんは山田輝夫の妹・要を演じられます。どのようなキャラクターとして捉えていますか。
「極めて普通な人というか、たとえば友達から相談されても違和感がないくらい、日常で当たり前に起こっていそうなことに苛立ったり悩んだりする人だなと思いました。そんな“普通な人”が不思議な体験に巻き込まれていくので、お客様からするとご自身と一番近い感覚で観ていただけるキャラクターなのかなと思います。
要は夫に嫌気がさして兄のいる実家に帰ってくるわけですけれど、離婚するかどうかの決断に迫られると、なかなか情を捨てきれない人間味もあります。今までは理解はできるけれど共感しづらい役が多かったのですが、今回はとても共感できますし、私だけではなく多くの女性が共感する役なんじゃないかと思います」
−兄とのくだけた掛け合いも日常的ですよね。
「私も実際に兄がいるのでよく理解できるのですが、親とはまた違う空気感というのを、桐谷健太さんとどうやってお芝居で作っていくのかが楽しみです。兄弟の繋がりがあるからこそ遠慮がなかったり、妹がちょっと強かったりするのはリアルだなと思いました」
考え方次第で結果は変わる、人間の脳の面白さ

−桐谷さんの印象はいかがですか。
「今まで色々な作品で拝見してきて、映画『ラーゲリより愛を込めて』は映画館に観に行ったすごく好きな作品です。本当に素敵なお芝居をされる俳優さんだなと思って拝見してきたので、兄妹役ができるのが嬉しいです。頼れる兄という雰囲気を既にお持ちの方だと思います」
−作・演出を手がける前川知大さんの印象はいかがでしょうか。
「私が出演していた作品を観にきてくださって、ご挨拶させていただきました。今回『聖地X』を出演するということが発表された時、他の作品で共演した芝居巧者の方々から口を揃えて“前川さんの作品に出るの?絶対楽しいよ”と言われたんです。周りの方からの反応を受けて、ますます楽しみになりました」
−前川さん独自の不思議な世界観が広がる作品ですよね。
「ホラー要素もあると聞いて、“ホラーは苦手だから”とおっしゃるファンの方もいらっしゃったんですけれども、“そういう意味のホラーじゃないから、ぜひ観に来てください”とお伝えしました。
人間の脳の考え方の話でもあって、それはすごく共感できるんです。今まで何でも考え方次第だと思って生きてきたところがいっぱいあったので、それが凄くこの作品の面白さだと思っています。いつも言っていたのは、たとえば30回腹筋しなければいけない時に、“しんどいのに”と思いながらやるのと、“どうせやるならここに効くようにやってみよう”と思ってやるのとでは絶対に成果が変わると思います。過去の作品で体力的にハードな作品でも、その日の公演が全て終わるまでは“絶対に口に出して疲れたとは言わない”と決めていました。疲れたと言うと、脳が疲れたと認識して、実際よりも疲れて感じてしまうと思ったからです。
『聖地 X』 を読んでもそういうことを思い出しました。人が想像するものが出現したり、ドッペルゲンガーが出てきたりという不思議な現象が起こりますが、その根源には自分が理解できる、知っているなと感じるものがあったので、そこが凄く面白いと感じました」
−さらにコメディ要素もある作品です。
「お笑い的な面白さというよりも、台詞の掛け合いや間合い、辛辣な返しで面白さがある作品です。普段生きていてもあるような、人間の辛辣さが重なって見える面白さがあるなと思います」
非日常と、生身の人間の温もりが感じられる演劇

−和希さんが感じる演劇の魅力は何でしょうか。
「私は自分が観にいくのも凄く大好きなんですけれど、観に行くとどんなにリアルな題材だったとしても非日常を感じられる世界だなと思います。演じる側としても、経験したことないことを経験したり、新しい感情を知ったりするのが毎回毎回楽しいです。
生身の人間が実際に目の前で演じることによって温もりが伝わってきますし、リアルな感情を受け取ることができるというのが、演劇の魅力なのかなと思います」
−2024年に宝塚歌劇団を退団後、『ジキル&ハイド』『SIX』『SPY×FAMILY』『梨泰院クラス』『タイムトラベラーズ・ワイフ』など様々な作品でご活躍です。俳優としての変化を感じられていますか?
「特に意識としては宝塚在団中からそんなに変わっている感じはないんですけれど、新しくご一緒させていただく方が増えたので、お芝居の構築の仕方や舞台に対する姿勢は凄く影響を受けています。自分が大切にしたいことや、信念はそんなに変わっていないです」
−多彩な作品でご活躍されていますが、作品の選び方というのは何かあるのでしょうか。
「作品もそうですけれども、特に自分が演じる役のイメージが固まらないようにしたいという思いはあります。たとえば強い女性の役ばかりではなく、幅広い役をやれるように、というのは意識しています。自分がこの世界に入ったらまた新しい自分に出会えそうだなとか、この作品を経てどんな世界が広がるんだろうというワクワクがある作品を今まで選んできたかなと思います。
やはり自分がワクワクする作品に携わりたいという思いはあって、自分の趣味嗜好に偏りすぎるのではなく、“確かに自分では想像がつかないし、どうなるか分からないけれど挑戦してみよう”と思えるものを選んできました。その結果、今までやらなければ良かったという役は1つもないので、これからもこの気持ちを信じていこうと思います」
−ファンの方々も色々な作品に出会うことができますね。
「今回は初めてのストレートプレイということで、今まで私のファンでいてくださった方は普段はミュージカルを観るという方も多いと思うんですけれども、“一緒に新しい世界に行きましょう”とお伝えしているんです。すでに知っているよという方ももちろん多いとは思いますが、私が出演することで、ストレートプレイの面白さや魅力に気づいていただきたい。皆さんをストレートプレイの世界に連れて行きたいと思います」
−俳優として今後の目標は決めていらっしゃいますか。
「具体的なものというよりは、例えば今回『聖地X』を経験すると、経験しない世界線とはまた別の世界が広がっていると思います。そこで自分が何を感じ、何を選んで、今後をどうしていこうと考えるのかが楽しみです。そうやって1つ1つやっていっている感覚ですね」
−最後にメッセージをお願いします。
「今回初めて『聖地X』という作品に触れて、どんな作品なんだろう?というところから、どんどん不思議な世界に入っていって、最後は自分なりの答えが見つかるような作品でした。もちろんこの作品を既にご存知な方はもちろん、初めての方も、どういう意味なんだろう、どういう世界なんだろうと、色々なことを紐解きながら観劇を楽しんでいただければと思います。私は皆さんのお芝居の質感をたくさん吸収しながら、新しい挑戦として頑張りたいなと思っています」
PARCO PRODUCE 2026『聖地X』は2026年11月5日(木)から11月29日(日)までPARCO劇場、12月5日(土)から12月7日(月)までCOOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、12月19日(土)から12月20日(日)までシアターマド(丸亀市民会館) 大ホールにて上演されます。公式HPはこちら

衣裳:ジャケット¥82,500/Alunc、ワンピース¥110,000/ストラスブルゴ(ストラスブルゴ カスタマーセンター)、ブーツ¥42,900/ダイアナ(ダイアナ 銀座本店)、ピアス¥23,100/Jouete
気構えず、ナチュラルでありながらも新たな挑戦を続けていらっしゃるのが印象的で、だからこそ多くの方が和希さんのかっこよさに魅了されるのだろうなと実感しました。前川さんの描く不思議な世界観を、和希さんがどのように表現されるのか楽しみです。




















