密室劇の原点であり、歴史的傑作と名高い『十二人の怒れる男』。TVドラマから始まり、映画化、そしてそこから世界でインスパイアされ続けています。そこで今回は、本作の原点を辿りながら、日本での影響や舞台についてご紹介していきます。
手に汗を握る、極上サスペンス
舞台は、父親を殺害した容疑で裁かれようとしている少年の裁判。有罪が決定的と思われたその時、12人の陪審員のうち1人が無罪を主張しました。そうして改めて審議が行われることになり…。陪審員8番の無罪の主張は、残りの11人の有罪という決断を変えることができるのでしょうか? 密室での白熱する議論に目が離せない作品です。
本作は、原作者であるレジナルド・ローズさんが実際に殺人事件の陪審員になったことがきっかけで物語となったそう。始まりは1954年に放映されたアメリカのテレビドラマですが、高評価を受け1957年に映画化されました。ドラマも映画版も数多くの賞を受賞し、評価され続け、歴史に残る功績を残しています。
インスパイアされた劇作家たち
成功をおさめた本作は、2004年にブロードウェイでの公演を果たし、ドラマデスク賞演劇リバイバル作品賞とトニー賞演劇リバイバル作品賞を受賞。快挙はアメリカに留まらず世界各国でリメイクされ映像化、舞台化されています。
日本では、筒井康隆さんが『十二人の怒れる男』のオマージュとして雑誌『GORO』に小説として書いた『12人の浮かれる男』という作品が、1978年に舞台化されました。この作品では、「もし日本で陪審員制度が復活したら?」という設定で描かれています。また、本家とは違う結末を用意しているのも印象的です。
さらに、三谷幸喜さんも同様に『十二人の怒れる男』のオマージュとして、自身が主宰する劇団のために『12人の優しい日本人』を執筆しました。1990年に上演、翌年には中原俊監督により映画化されています。こちらの作品では、タイトルのように日本人特有の性格設定の男たちで議論が進んでいくのが特徴です。
また、劇作家だけでなく漫画家の手塚治虫さんも、インスパイアされたひとりだと言われています。その作品が漫画『七色いんこ』の中に収録されている「12人の怒れる男」という題のエピソード。こちらの作品も本家とは違う流れのストーリーになっているようです。日本でも、名だたる巨匠たちに影響を与えてきた『十二人の怒れる男』。同じパロディ・オマージュとは言えど、それぞれの世界観が楽しめます。
ど迫力の会話劇が魅力の舞台
今もなお、さまざまな劇団により繰り返し上演され続けている本作ですが、来月も開催!2022年5月13日から、下北沢の本多劇場にて上演されます。舞台上での『十二人の怒れる男』の迫力のある会話劇、ぜひ体感してみては!?舞台情報はこちら
この作品が一般社会にまで影響を与えているということに、作品の偉大さを感じました。黒を白に導く心理戦が垣間見られる会話劇は、仕事でのスキルとして心理学の教材にもなっているのだとか。 確かに、あらすじを見ただけでもどんな風にして有罪という見解を無罪に持っていくのか、凄く興味深いなと関心を抱いてしまいました。そして、その心理劇は国によっても大きく変わってくるのでは?と思いました。 ひとつの部屋、会話のみでの展開。そんな単純な設定にも関わらず、さまざまな点からみても、好奇心を掻き立てられてしまう。それこそが本作の魅力であり、「脚本が良ければ場所は関係ない」と言わしめる証なのかもしれません。