久保田万太郎、岸田國士、岩田豊雄と名立たる文学者の発起により1937年に創立され、今年で85年となる「文学座」。日本の演劇に数々の歴史を生み出した名門の伝説的演目である、『欲望という名の電車』が35年ぶりに上演されます。
20世紀を代表する劇作家の最高傑作
20世紀を代表するアメリカの劇作家テネシー・ウィリアムズによって執筆された今作は、1947年にブロードウェイで初演されて以来、1951年に映画化、1998年には歌劇として上演。アメリカではTVドラマ化もされている、近代演劇の金字塔的作品です。作品が発表された当時のアメリカにおいて、「性」に関連した倫理観に深く踏み込んでいる内容になっており、大きな話題となりました。
文学座のHPのあらすじに記載されている、『「欲望」という名の電車に乗り、「墓場」という名の電車に乗り換え、「天国」という名の駅に下車』(文学座,2022,公演情報「欲望という名の電車」)という文は、冒頭のブランチの台詞が基になっており、作品を象徴する言葉となっています。
南部の大農園で育ち、上流貴族の娘であったブランチは、夫の死後、妹のステラを頼ってアメリカ南部・ニューオーリンズの下町、フレンチクォーターへと降り立ちます。ステラの夫・スタンリーとともに3人で貧しいアパートで共同生活をすることになりますが、元貴族ゆえに気高いブランチは、工場労働者で粗野なスタンリーと反りが合いません。そんななか、スタンリーの友人であるミッチと出会い、彼と結婚して自身の人生を一新しようと試みますが…。
日本演劇史を語るにも欠かせない重要演目
日本での初演は、1953年に文学座で行われました。ブランチ役(初演時はブランシ)は、文学座の看板女優であり日本演劇界を支えた女優、杉村春子さんが演じ、以後上演回数594回を記録する文学座の伝説的演目になりました。
文学座以外では、2000年には栗山民也さん、2002年に蜷川幸雄さん、2011年では松尾スズキさんなどが演出を担当するなど、日本の現代演劇としても重要な作品として上演されています。
また、秋山菜津子さんや大竹しのぶさん、樋口可南子さんなど名立たる女優陣がブランチを演じており、彼女の繊細ながらもどこか掴み切れない妖艶な人物像は表現者にとって非常に魅力になっているのではと感じます。
文学座『欲望という名の電車』は10月29日(土)から11月6日(日)まで、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演予定。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。
文学座のブログでは演者やスタッフの方が、稽古場の様子などを紹介しています!作品が作られている裏側もチェックしつつ、日本演劇史での重要作をぜひ観賞してみては。(すでにチケットがあと少しになっている日程もあるのでお早めに!)