『幽霊はここにいる』は、作家として芥川賞をはじめ数多くの賞を受賞し、劇作家としても多数の作品を発表した昭和を代表する作家・劇作家・安部公房さんの作品です。1958年に田中邦衛さん主演で俳優座劇場にて初演され、戯曲は岸田演劇賞を受賞しました。翻訳版がヨーロッパなど世界各国で上演されている名作に、ジャニーズWEST 神山智洋さんが挑みます。
高度経済成長期最中の昭和33年、資本主義の世の中に物申す
『幽霊はここにいる』は、「前衛的」「不条理」「ナンセンス」といった言葉で表現される安部公房らしさに満ちた喜劇的な作品。通行人をコーラスに使うなど音楽的要素も効果的に取り入れられ、エンターテインメント要素の強い作品でもあります。
感染症や戦争などで「死」を身近に感じるようになった昨今。本作は60年以上前の作品ですが、「死」との向き合い方や、大切な誰かや何かを忘れずに思い続けて生きていく姿、過去の記憶にとらわれながらも現実を生きていく儚い姿を我々に教えてくれます。
戯曲が発表された1958年は、高度経済成長期の最中。白黒テレビ・電気冷蔵庫・電気洗濯機の「三種の神器」に見られるように、急速な技術革新がおこり、好景気に。それと共に、消費ブームが到来しました。大量生産・大量消費の時代になり、スーパーマーケットなどの大型量販店が出現しました。
こうした時代の流れの中で、一度立ち止まって考えようと作られたのが本作です。
資本主義の世の中で、人々は商品主義の社会に対し疑問を抱かずに暮らしています。けれども、人間も商材として消費されてしまう世の中なのです。それを当たり前だと思って、気がつかずに生きていることのグロテスクさにひっかかってもらいたいという安部公房さんの想いが物語に反映されています。
『幽霊はここにいる』は、元・上等兵で、いつも幽霊を連れているという不思議な男・深川啓介の物語。その幽霊は生きていた頃のことを覚えておらず、深川は幽霊の身許捜しをしていました。
とある街にたどりついた深川は、うさん臭げな男・大庭三吉と出会います。大庭は、深川が幽霊と会話出来るということを知ると、いい商売になると考えます。そして、「高価買います 死人の写真」というビラを町中に貼り、幽霊の身許捜しを兼ねた珍商売を始めます。それを怪しむ新聞記者・箱山が彼らの動きを探るも、町全体をどんどん巻き込み、一大事業に発展していくのでした。
ジャニーズWEST神山智洋を主役に、個性豊かな実力派が勢揃い!
本作の主人公・深川啓介は、幽霊を連れていて、会話ができるという謎の男。ジャニーズWESTの神山智洋さんが演じます。
現代の世相を考えると「決して遠い話ではない」と話す神山さん。「本当に大切な人や仲間を失った時に、“幽霊になっても出てきてくれないかな”と、今の時代でも思うはず。深川は、親友の死を負い目に感じているし、人間の弱い部分を受け入れられなかったんだろうな」と自身が演じる深川に共感できるところがあると言います。
本作の中の登場人物たちは幽霊がいるのかいないのか、疑う人も信じる人もいます。「観に来てくださるお客様にも、深川を信じたり、疑ったりしてみてほしい」とコメントしました。
そして、主人公・深川を取り巻く登場人物たちに、個性豊かなキャスト陣が勢揃い!深川が出会う怪しげな元詐欺師・大庭三吉には、バラエティ番組でも活躍を見せ、幅広い役を変幻自在に演じ分ける名バイプレイヤー、八嶋智人さん。
深川の幽霊話を信じようとしない新聞記者・箱山義一には、確かな演技力で、劇団☆新感線から新国立劇場での会話劇まで幅広く活躍している木村了さん。
三吉の娘・大庭ミサコには、映画『悪の華』でヒロインを演じ、ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』や『賭ケグルイ双』などの話題作に引っ張りだこの秋田汐梨さん。
三吉の妻・大庭トシエ役を、声の表現にも定評があり、ナレーターや声優としても積極的に活動している実力派女優・田村たがめさんが演じます。
舞台『幽霊はここにいる』は、12月8日(木)〜12月26日(月)に東京・PARCO劇場で上演。その後、1月11日(木)〜1月16日(月)に大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演予定です。公式HPはこちら。
戯曲の書かれた時代背景を調べて納得しました。現代は、より目に見えないものが商品として売買されている世の中です。観終わった時に一体何を感じるのかが楽しみな作品だと感じました。