1978年に宮崎駿さんが初監督したアニメ『未来少年コナン』が舞台に。『ねじまき鳥クロニクル』などを手がけたインバル・ピントさんと、パフォーマーとしても活躍するダビッド・マンブッフさんが演出を手がけます。『ねじまき鳥クロニクル』にも出演し、本作ではインダストリアの有能な行政局次長モンスリー役を演じる門脇麦さんにお話を伺いました。

冒険・友情だけでなく、現代に重なる部分も見えてくる

−『未来少年コナン』が舞台化されると聞いた時の心境を教えてください。
「まずインバルが日本にまた来るんだというのが1番嬉しかったです。アニメを見返してみると『未来少年コナン』では山や海、砂漠など様々な自然が描かれるので、この世界観をインバルがどう創り上げていくのか大変興味深いし楽しみです」

−アニメを観られて『未来少年コナン』のどのような部分を魅力に感じられましたか?
「幼少期に見た時はコナンとラナの印象が強かったですが、大人になって見てみると戦争や震災といったテーマも印象に残りました。舞台でも冒険や仲間との友情だけでなく、現代のこの世界にも重なる部分が見えてくると、さらに深みが増すし、観て色々なことを考えていただけるんじゃないかなと思います」

−門脇麦さん演じるモンスリーはどのようなキャラクターだと現時点では捉えていらっしゃいますか?
「まっすぐで、勇気のある女性ですよね。敵だったコナンの味方になるというのは、自分で考えて、行動を起こす決断力のある女性だなと思います。それに優秀ですよね」

−共演者の皆さんについての印象はいかがでしょうか。
「今回、成河さん以外のキャストの皆さんとは初めましてなんです。特に楽しみなのは、椎名桔平さんですね。おじいとラオ博士の2役ですし、インバルの世界に桔平さんがどう馴染むのかがすっごく楽しみ。桔平さんって直線的なイメージなので、インバルの“ぐにゃぐにゃ”した世界観の中では、良い意味で異質になると思います。作品の中で絶対に存在感が出るはずです」

抽象的な表現なのに腑に落ちる。インバル・ピントが描く世界

−インバル・ピントさんとは『ねじまき鳥クロニクル』に引き続いてご一緒することになりますね。
「めちゃくちゃ楽しみです。またインバルの頭の中が見られると思うとワクワクしてしょうがないですね。毎回どうやって舞台化するのかと思うのですが…インバルはご自分でデッサンなさるので、そのデッサンを一度見せて頂いたんです。それを見たら、不安は一切消えました。大変なことは盛りだくさんだと思いますけれど(笑)、とても楽しみです。初演ですし、試行錯誤が続く日々になるとは思います」

−前作(『ねじまき鳥クロニクル』)も初演に出演されていますが、作品作りは大変でしたか?
「やりたいことが膨大な分、稽古場でどんどん広がっていくので、どう削ってブラッシュアップするかという作業が大変でした。全部が宝物みたいに大事だから、それをいかに削っていくのか。ダンサーや音楽チームもいて様々なセクションが携わっているので、そのすり合わせには時間がかかりますね」

−インバル・ピントさんの演出作品はダンスや音楽が重要なので、ストレートプレイの作品よりも調整箇所が増えますね。
「ただ、素材を200、300出して100にしていくことは舞台において必要だと思っています。『未来少年コナン』においてもアニメ版のダイジェストにしても意味がないし、お話を復習する時間だけになってはいけない。膨大に広げてエッセンスだけを残すためには、まず広げないとエッセンスは見えてこないと思います。だから削る部分も勿体無いものではなく、それをみんなで共有していないと削ることもできない。そういった余白の部分をいかに稽古場で作るかが大切になってくるかなと感じています」

−インバル・ピントさんが創る世界観には、どのような魅力があると思われますか?
「いち観客としての感想で言うと、言葉って無力だなと。彼女たちは日本語が分からないので、日本語のセリフの下に英語訳があって、それを見ながら演出するんです。それでも細かい日本語のニュアンスは分からないじゃないですか。だから言葉の言い方について演出するよりも、それ以外の部分を見ているのだと感じます。身体表現も含め、抽象的なものなのに、具体的な言葉で並べるよりなんでこんなに腑に落ちるんだろうという奇跡みたいな瞬間がたくさんある。それが魅力だと思います」

−確かに『ねじまき鳥クロニクル』でも身体表現や芸術的に楽しめる部分が多い一方で、物語が分かりやすいという印象も受けました。
「インバルは美術も衣装プランも自身で作るので、全てがインバルの頭の中にある表現なので、とっても統一感があるんです。一見変わったようなことをしている舞台かもしれないんですけど、変わっているという印象で終わらず、空間の中に全てが美しく収まっているのは、インバルが全部作っているからだと思います」

−インバルさんは全てのセクションを細かく見られるのでしょうか。
「はい。衣装も全部自分でデッサンされて、素材集めや“ここを1センチ短く”など全てにこだわりが詰まっています。だから観ている人に余分なものを感じさせないのかなと思いますね。頭の中どうなっているんだろうと本当に思うのですが、子どもみたいな遊び心もあって、私たちに任せてくるところもあるんです。そうやってカンパニーが補い合っている関係性も良いですね」

舞台に求めるのは「舞台に立つ時の心高鳴る瞬間」

−映像作品でも日々ご活躍の門脇麦さんが、舞台作品だからこそ求めるものはありますか?
「カメラ前で撮影するのと、お客様の前でパフォーマンスするのは全然違います。バレエをやっていた経験もあるので、舞台に立つ時のワクワク感、心高鳴る瞬間はずっとあって。緊張というよりも、たぎる感覚。それは舞台だからこそですね」

−毎日の公演でもその感覚は変わらないですか?
「全然変わらないですね。体調のコントロールは慎重になりますけれど、毎日の公演で飽きるということがないんです。毎回新しい発見があるし、毎回怖い。慣れるということがないですね」

−映像と舞台での創作活動としての違いはありますか?
「舞台は本番までに時間をかけられるので、表現を試行錯誤して、追求する時間は長いですよね。自分の中での細かい匙加減を修正していけるので、役者としてストレスが少ないというのはありがたいです」

−最後に、舞台『未来少年コナン』をどのように楽しんでいただきたいでしょうか。
「アニメのファンの方にも楽しんでもらいながら、自分たちが見たことのない、インバルが見るコナンの世界に、お客さんも一緒に連れて行ってくれるので、ぜひ体験していただきたい。舞台『未来少年コナン』を、体験してください」

撮影:山本春花、ヘアメイク/伏屋陽子(ESPER)、スタイリスト/渡邉恵子(KIND)
衣裳:ワンピース41800円/デボーションツインズ(ノウン)イヤリング5400円/アビステ、シュー
ズ/スタイリスト私物

舞台『未来少年コナン』は5月28日(火)から6月16日(日)まで東京芸術劇場 プレイハウス、6月28日(金)から30日(日)まで梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演されます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

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Yurika

『未来少年コナン』の世界観をインバル・ピントさんがどのように表現されるのか、楽しみですね。お得に観られるU-25、20歳以下のYシートや、高校生以下は1,000円で観られるチケットもあるので、初めての観劇にもおすすめです!