アートチーム・エリア51で演劇作家として活動している神保治暉さんが新たに劇団“じおらま”を立ち上げ。ハラスメント・ポリシーとクリエイティブ・ポリシーを策定し、安全で豊かな演劇創作を目指します。現在劇団員(俳優)を募集しています。
ハラスメントのない、安全で豊かな演劇創作を!
アートチーム・エリア51で演劇作家、演出家として活動している神保治暉さん。演劇人コンクール 2021 奨励賞や第 12 回せんがわ劇場演劇コンクール劇作家賞といった受賞歴を持ちます。
神保さんが今回新たに立ち上げるのが、劇団“じおらま”。“じおらま”はハラスメントのない、安全で豊かな演劇創作をめざす劇団です。
じおらまの名前の由来ですが、ジオラマとは「舞台装置や劇空間」そのものを指します。英語表記にすると「diorama」で、中には「drama=物語(生き様)」が隠れています。残ったスペルの「iとo」は「in /out=呼吸」を表します。
「舞台装置や小道具などの痕跡が終演後も残っていて、残像や残響としての物語が立ち上がっているような、作品づくりを目指したい。終演後、その場で作品について観客と対話するようなことが定例化できたら」という想いを語っています。
神保さんは、「演劇創作は“初めまして”の状態から、限られた期間で共同制作者の懐に深く踏み込んで 知り合わなければならない作業もあり、危険と隣り合わせだと常々感じている」と言います。そこで、「踏み込まなく」ても「多くのことを了解し合っている場」を作れないかと考え、立ち上げたのが“じおらま”です。
近年議論が加熱している「演劇界のハラスメント問題」に対して、安全で豊かな創作環境の土壌を作ることに興味のある人で集まっての創作活動が必要だと考えたと言います。
劇団ではハラスメント・ポリシーとクリエイティブ・ポリシー の二つを定めています。( “じおらま”のポリシーはこちらから)
ハラスメントポリシーには
Ⅰ 権力関係の悪用による故意の暴力や搾取を「事件」、不慮の暴力や搾取を「事故」と定義する。
Ⅳ 権力関係の悪用による事件や事故の告発が発生した場合、必ず創作を中断し、関係者全員の調整がつくまで再開しない。作品の公開が危ぶまれたとしても調停を最優先する。
じおらまのハラスメント・ポリシー[4. 事件・事故発生時の対応]
と明記されています。万が一のことが起きてしまったら、「創作を中断する」ということがあらかじめ取り決められていることは、安心して創作できる土壌づくりの第一歩なのではないでしょうか。
また、クリエイティブポリシーには
Ⅰ 演劇の創作動機として、様々な手法や技法を「探す」ことに主眼を置く。
じおらまのクリエイティブ・ポリシー[1. 演劇の志向性]
Ⅲ 演出者は作品内の演出においてのみ決定権をもつ。演出者は「演出権」と「決定権」を持っており、強く発動できる権限は、「決定権」のみである。演技の方法や考え方を強要するような「命令権」をもたない。
じおらまのクリエイティブ・ポリシー[2. 演出と稽古]
との記載があります。演出家がトップダウン式に「命令」を行うことがないということは、俳優としてはとても安心できる稽古場だと思います。
“じおらま”は、創作に携わる全ての人の尊厳を守ることを最重要視し、ケア(相互扶助)と対話を重んじるクリエイションを試みる演劇創作を目指しています。また、なるべく自由に読むことができるテキストづくりや、不要な拘束のない、アイデアの相互作用を重要視する稽古の方法も模索します。
旗揚げ公演『たいない』に出演する俳優(劇団員)を募集中
“じおらま”旗揚げ公演として、神保さんが演劇人コンクール 2021で奨励賞を受賞した『胎内』(作・三好十郎)を新演出で再演します。
「本作品は“分け合う”ことへの強いメッセージがあり、新たな環境で、もう一度、この作品と向き合ってみたいと思った」と神保さん。群読や一つの役を複数人で演じるなど様々な手法を模索したいと考えているそうです。
旗揚げ公演『たいない』は、2023 年5月19日(金)〜5月28日(日) 東京・こまばアゴラ劇場で上演予定です。それにあたり、出演する劇団員(俳優)の募集を行っています。劇団員募集の書類応募期間は、12月6日(月)〜25日(日) まで。募集要項詳細はこちら。
とても丁寧な話し合いを行い、対等に作品作りを行う神保さん。新たな劇団でも、安全な環境で豊かな発想の演劇作品が生まれることが楽しみです。