8月に紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演されるこまつ座第147回公演『闇に咲く花』。山西惇さん、松下洸平さん、浅利陽介さんらを迎え、太平洋戦争敗戦後の日本に生きる庶民を描きます。

戦争の記憶と葛藤する青年を描く『闇に咲く花』

1983年、作家・劇作家の井上ひさしさんが座付作家として立ち上げ、井上ひさしさんに関わる舞台を専門に作り続けるこまつ座。『闇に咲く花』は1987年に昭和庶民伝三部作の第二弾として初演を迎えた作品です。三部作の第一弾は、2023年4月にも上演された『きらめく星座』。今年はこまつ座40周年ということで、昭和庶民伝三部作が2作連続で上演されることとなります。

『闇に咲く花』の舞台は、敗戦から2年経った1947年の神田。空襲で焼け落ちてしまった愛敬稲荷神社の神主・牛木公麿(山西惇さん)はお面工場を経営しながら日々を生き延びています。そんな中、戦死したと思われていた1人息子の健太郎(松下洸平さん)が帰還。記憶を失ったまま捕虜収容所で過ごしていたのですが、学生時代に打ち込んでいた野球をきっかけに記憶を取り戻します。

プロ野球選手を目指して第二の人生を歩み始める健太郎。しかし一戦犯容疑にかけられたショックで、再び記憶障害に陥ってしまいます。

舞台・映画・ドラマで活躍する実力派俳優が集結

演出を務めるのは、『ピアフ』『夏の砂の上』などを手がけ、こまつ座に欠かせない存在である栗山民也さん。本作は井上ひさしさんとの初めての新作だったそうで、「この作品を再演するたび、初演の時のピリリとした感覚を思い出す」のだとか。栗山さんの大学の卒論が能だったことから、世阿弥の複式夢幻能の構造を土台に作られたと言います。

思い出深い作品の上演にあたり、「日本の戦後という不確定な時代を問う物語は、わたしたちの現在に繋がれている。愚かな戦争によって死んだ者たちの声が、そのドラマから聞こえてきた」とコメントしています。

牛木公麿を演じるのは、舞台・ドラマ・映画と幅広く活躍し続ける山西惇さん。こまつ座『イーハートーボの劇列車』(長塚圭史さん演出)、『木の上の軍隊』(栗山民也さん演出)で、2020年第27回読売演劇大賞優秀男優賞受賞。ケラリーノ・サンドロヴィッチさん作・演出の『世界は笑う』や宮本亞門さん演出のミュージカル『生きる』、ドラマ・映画『相棒』シリーズなどに出演しています。

NHK連続テレビ小説『スカーレット』で一躍注目を集め、ドラマ『最愛』で日本中の視聴者の心を掴んだ松下洸平さん。栗山民也さん演出の『母と暮せば』『スリル・ミー』で第26回読売演劇大賞 杉村春子賞・優秀男優賞を受賞しており、大きな飛躍を遂げた松下さんと栗山さんの再びのタッグに期待が高まります。

健太郎の親友・稲垣善治役を務めるのは、浅利陽介さん。映画『空飛ぶタイヤ』『ウェディング・ハイ』、ドラマ『コード・ブルー~ドクターヘリ緊急救命~』シリーズ、NHK大河ドラマ『麒麟がくる』、『相棒』シリーズなどに出演し、幅広い役柄をこなす実力派俳優の浅利さんは、意外にもこまつ座初参加。ノスタルジーを感じつつも現代にも通ずるメッセージを投げかけてくるこまつ座でも、確かな存在感を放つこと間違いなしです。

そのほかの出演は、尾上寛之さん、田中茂弘さん、阿岐之将一さん、水村直也さん、増子倭文江さん、枝元萌さん、占部房子さん、尾身美詞さん、伊藤安那さん、塚瀬香名子さん。

8月4日(金)から30日(水)まで紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで上演、その後愛知・大阪・福岡公演が行われます。前売り開始日は5月13日(土)です。スケジュールの詳細は公式HPをご確認ください。

Yurika

『きらめく星座』ではコミカルなシーンもありながら、現代にも通じる、戦争が日常に与える影響について深く考えさせられました。今回は「記憶」がテーマということで、さらに思いを巡らせる作品となりそうです。