2021年からシーズン制を導入しているKAAT 神奈川芸術劇場では、9月からメインシーズンが開幕予定!今年度から、メインシーズンをさらに前期と後期に分け、複数演目のチケットをセットで購入できるお得なチケットが販売されます。メインシーズン前期の9月〜12月に上演されるのは、『アメリカの時計』『SHELL』『ジャズ大名』の3作品です。
2023年度メインシーズン「貌」開幕!
KAAT 神奈川芸術劇場では、劇作家・演出家の長塚圭史さんが芸術監督に就任した2021年度以降、劇場の存在を広く街の方々に知ってもらうことを目標に、シーズン制を導入しています。4月から8月までのプレシーズンでは、より“ひらかれた”劇場となるべく、キッズ・プログラムの上演など、舞台に触れることの少ない方々にも観劇体験を提供することを目的としたプログラムを上演しています。
9月〜翌年の3月までのメインシーズンには、シーズンタイトルが設けられています。3年目となる2023年度メインシーズンのシーズンタイトルは、顔だちや容姿、物のすがた、外観と言った意味を持つ「貌(かたち)」です。
今年度から新たな取組として、メインシーズンのプログラムを前期と後期に分け、複数演目のチケットをセットで購入できる KAAT オリジナルグッズ付き「シーズンチケット」の販売が決定しました。各公演の先行発売に先駆け最速でチケットが購入できるだけでなく、神奈川県在住・在勤以外の方も「神奈川県民割引」と同額の割引料金で、お得にチケットを購入することができます。
また、シーズンチケット<前期><後期>両方を購入した方は、2024年度ラインアップ発表会(2024年2月中旬実施予定)への招待があります。(※応募者多数の場合は抽選となります。)シーズンチケットは、7月15日(土)に発売開始を予定。チケットかながわの電話・窓口・WEBにて購入が可能です。(※前売のみ・枚数限定)
1929年世界恐慌を生きた人々の人間ドラマ。アーサー・ミラー『アメリカの時計』
メインシーズン「貌」の幕開けを飾るのは、アーサー・ミラーの『アメリカの時計』。世界的な劇作家として知られるアーサー・ミラーの作品は、代表作の『セールスマンの死』をはじめ、『るつぼ』『橋からの眺め』『みんな我が子』など、近年でも多くの作品が日本で上演され続けています。
演出を手がけるのは、長塚圭史さん。本作の上演にあたって「ミラーはアメリカ社会に根付く本音と建前、そして資本主義(あるいは民主主義)を冷徹に見つめます。この視点は残酷なほど現在にも通じます。私たちは環境保護やグローバリゼーションなどと綺麗事を並べ立てながらも、現実には経済成長を掲げたまま、やがて砕け散るとも知れぬ社会の上に立っています。生々しく描かれる日常の崩壊を前に、我々は果たして何を信ずるべきかが問われます」とコメントしています。
『アメリカの時計』の舞台は1929年のアメリカ。株式市場を襲った大暴落は、裕福なボーム家にも大打撃を与えました。父親モウ・ボームは剛直な実業家でしたが、株に打ち込みすぎて、市場の崩壊とともに財産を失ってしまいます。母親のローズは、家族が生きるために、宝石類を現金に換える日々…。息子のリーは、人々が職にあぶれて飢えていく様を目の当たりにしながら、自身の人生を歩んでいきます。
1929年の世界恐慌を扱ったアメリカ史劇で、株の大暴落により富の頂点にあった“アメリカの貌(かたち)”が崩れ去っていく姿が描かれています。と同時に、世界恐慌の時代を生きた、ある家族の人間ドラマの物語でもある作品です。
翻訳は、昨年小田島雄志翻訳戯曲賞を受賞し、演出家の通訳としても精力的に活動する髙田曜子さん。美術・映像は、NHK連続テレビ小説『らんまん』の冒頭の映像や、ナイロン100°C、劇団☆新感線、大人計画、宝塚歌劇団、歌舞伎などの映像デザインを手掛けている上田大樹さんが担当します。
また、50数名に及ぶ登場人物を、たった13人の役者で上演するのも本作の見どころのひとつ。
本作で描かれる主人公の一家・ボーム家の息子リー・ボームを演じるのは、矢崎広さん。近年は舞台『ジャージー・ボーイズ』、『鬼滅の刃』、『バンズ・ヴィジット 迷子の警察音楽隊』『ダーウィン・ヤング 悪の起源』、映画『あなたの番です 劇場版』と数々の話題作に出演しています。
母親のローズ・ボーム役には、4月にPARCO 劇場開場50周年記念シリーズ『ラビット・ホール』に出演、2024年3月にはブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』への出演も決定しているシルビア・グラブさん。
父親のモウ・ボーム役には、主演映画『堕ちる』でバレンシア国際映画祭 La Cabina2017 にて最優秀俳優賞を受賞するなど、映像での評価も高い中村まことさん。近年の出演作に舞台『ブレイキング・ザ・コード』、『老いと建築』、ドラマ『岸辺露伴は動かない』『にんげんこわい』などがあります。
そして全編に登場する語り部に、圧倒的な存在感と演技力でシェイクスピア作品や野田地図などに多く出演している河内大和さんと、魅力と情熱にあふれた俳優陣が集結します。
ミラーの作品の中でも上演される機会が少なく、今回が貴重な機会となる『アメリカの時計』は、9月15日(金)〜10月1日(日) KAAT 神奈川芸術劇場大スタジオにて上演です。公式 HPはこちら。
脚本・倉持裕×演出・杉原邦生×新進気鋭の若手音楽家・原口沙輔が作り上げる摩訶不思議な世界『SHELL』
続いて幕を開けるのは、年齢も性別も違ういくつもの人生を、いくつもの顔をもって同時に生きる特異な人々が登場する摩訶不思議な世界を描く新作公演『SHELL』。
本作の脚本を務めるのは、KAAT 神奈川芸術劇場で上演された人気作品『HEADS UP!』で脚本を手がけ、『ワンマン・ショー』で第48回岸田國士戯曲賞を受賞した倉持裕さん。近年の作品に、人気の鎌塚シリーズ最新作『鎌塚氏、羽を伸ばす』や『お勢、断行』、『阿修羅のごとく』、『歌妖曲〜中川大志之丞変化〜』があります。また、映画『アイアム・まきもと』が9月に公開、TV『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』の脚本を担当するなど、幅広く活躍しています。
倉持さんは本作について、「一言で言うと、姿かたちを変えながら生きている若者と、それを見破ることができる若者の話」と言います。「若い時期ではないと得られない熱気あふれる若者たちの世界を描いてほしい」という長塚芸術監督の依頼により、倉持さんの持ち味であるシュールさで高校生を中心とする現代の世界をリアルに描きます。
演出を務めるのは、『パンドラの鐘』『血の婚礼』、木ノ下歌舞伎、スーパー歌舞伎などで高い評価を得ている杉原邦生さん。杉原さんは新作の上演ということで、「“演劇”が生み出されるその最初の瞬間に立ち会えているような、驚きと興奮と喜びがあり、刺激に充ち溢れている」と言います。
作品について、「誰しもそれぞれ持っている幾つもの〈顔〉とその役割についての物語です。そしてこの物語が、蒼き時期(あおきとき)の只中にいる高校生の視点で描かれることで、その切実さはさらに色濃く迫ってくるように思います。その切実さが現代社会へ投げかける“問い”は決して小さくない意味を持つんじゃないか、そんな気がしています」とコメントしました。
音楽は、杉原さんたっての希望で、SNSを通じて国内外から注目されている20歳の新進気鋭の若手音楽家・原口沙輔さんが手がけます。原口さんは、10歳でニューヨーク・アポロシアターの「アマチュアナイト」に出場し日本人最年少で優勝。14歳の時に原宿で披露したフィンガードラムの路上パフォーマンスをきっかけに、様々なメディアに取り上げられ話題になりました。東京2020パラリンピック閉会式では音楽制作・出演を行っています。
本作の音楽を担当するにあたり「脚本を読んだ後、もう既にこの作品が頭から離れず、その世界にまるで自分も居るかのような気分になっています。その余韻や感情や世界観を遂に自分の頭から外に出せる。それを最高の形で皆さんにお届けできるよう腕によりをかけるつもりです。好きになった作品に直接音を付けられる機会をいただけてとても嬉しく思っています」とコメントしました。
『SHELL』の主人公・未羽は、ある日通りがかったビルからマネキンが落ちてくる現場に遭遇します。マネキンを抱きかかえていたのは中年男の高木でしたが、未羽には高木でもあり希穂の顔にも見えるという不思議な体験をします。
「同じ人間がいくつもの“顔”を持っている」と言う世界は、一部の者だけが知っている世界。しかし、未羽にはそれを見抜く力があったのです。顔を持つ人々、顔を見抜き「絶対他者」を繋げてしまう未羽、そして全く分からない人々との間に摩擦が生じて…。
主人公の高校生キャストには、石井杏奈さん、秋田汐梨さんが決定しています。
2012年の女優デビューから注目作に次々出演し注目を集める石井杏奈さん。2015年に第58回ブルーリボン賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『ホムンクロス』『砕け散るところを見せてあげる』や、ドラマ『シェフは名探偵』『金魚妻』、舞台『リトル×ゾンビガール』などがあります。
集英社「Seventeen」の専属モデルとしてティーンエイジャーに支持され、女優としても活躍が目覚ましい秋田汐梨さん。ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』で連続ドラマ初出演。映画『惡の華』や、ドラマ『賭ケグルイ双』などに出演。舞台作品では、『目頭を押さえた』ではW主演、昨年は『幽霊はここにいる』に出演するなど活躍の場を広げています。
そして映画『THE3名様』、舞台『私の一ヶ月』『歌うシャイロック』、ドラマ『風間公親 教場0』などに出演し、今年芸能生活30周年を迎える岡田義徳さんが加わり、本作の不思議な世界観を舞台上に立ち上げます。
『SHELL』は、11月11日(土)〜26日(日) KAAT 神奈川芸術劇場ホールにて上演です。公式 HPはこちら。
千葉雄大×藤井隆の軽妙な掛け合い!音楽とダンスの狂乱とともに筒井康隆の傑作小説『ジャズ大名』が令和に蘇る
2023年度メインシーズン前期のラストを飾るのは、『時をかける少女』や『パプリカ』で知られる筒井康隆さんの傑作小説でもある『ジャズ大名』の舞台化。1986年の岡本喜八監督、古谷一行さん主演による同名の映画でも有名な作品です。
今回は、小説から新たに上演台本を書き起こしての上演。物語の舞台を原作の九州の小藩から、実在した神奈川・小田原藩の支藩、荻野山中藩に置き換え、神奈川の史実を織り込んだアレンジを加え、神奈川拠点のKAATならではのオリジナル作品として創ります。
上演台本・演出を務めるのは、深い人間洞察をオブラートに包んで表現する演出を得意としている福原充則さん。『あたらしいエクスプロージョン』で、第62回岸田國士戯曲賞を受賞。『俺節』や『衛生』、『閃光ばなし』の脚本・演出を手掛けています。
音楽は、テューバ奏者、リコーダー奏者でジャズ音楽家の関島岳郎さんのもと、ユニークなミュージシャン達が集結し、生演奏を繰り広げます。リズミカルな躍動感の群舞が期待される振付を担うのは、ダンスカンパニーBaobab主宰で、俳優4人の演劇ユニット「さんぴん」メンバーとしても活動している北尾亘さんです。
『ジャズ大名』の舞台は江戸末期。アメリカの南北戦争が終結し、解放された黒人奴隷が故郷のアフリカを目指して船に乗り込みますが、日本の小藩へと流れ着いてしまいます。
しかし、日本は鎖国中。外国人の扱いに困る藩の役人たちは彼らを座敷牢に閉じこめます。ところが、好奇心旺盛な藩主・大久保教義が彼らの奏でる楽器の音に夢中になり、家老・石出九郎左衛門の制止も聞かずに、次第に城中を巻き込んでジャム・セッションを繰り広げていきます。
音楽好きの荻野山中藩の藩主・大久保教義役に、映画『もっと超越した所へ。』など映像作品だけでなく、近年は『ポーの一族』『世界は笑う』と舞台での好演も記憶に新しい千葉雄大さん。
家老・石出九郎左衛門役に、芸人・歌手・俳優としてマルチに活躍し、舞台ではストレートプレイからミュージカルまで欠かせない存在となっている藤井隆さん。
藤井さんとの共演を千葉さんは「俳優を始める前からファンなので本当に贅沢だな、と。子供の頃の僕に教えてあげたいです」と喜びを語りました。
また共演には、近年、舞台『サンソン-ルイ 16 世の首を刎ねた男-』、奏劇 vol.2『Trio~君の音が聴こえる』『気づかいルーシー』『パンドラの鐘』などに出演し、強烈な印象を残している大鶴佐助さん。
元 DA PUMPのメンバーで、現在は俳優活動の傍ら自身が脚本、出演、編集するSNSコンテンツ「純悪」のプロデュースにも尽力している山根和馬さん。
抜群の演技力で着実にキャリアを積み重ね、ドラマ『だが、情熱はある』で南海キャンディーズの“しずちゃん”を熱演。若手俳優の中で最も活躍が期待される女優の一人である富田望生さん。
「劇団健康」(現 ナイロン 100°C)に旗揚げより参加、音楽活動も積極的に行う大堀こういちさん。
数多くの話題作に出演し続ける板橋駿谷さん、北尾亘さん、永島敬三さん、福原冠さん、今國雅彦さん、佐久間麻由さんといった個性的な面々。
さらに、日本に流れ着く黒人役を、ソフトバンクのCM「白戸家シリーズ」の白戸小次郎役でお馴染みのダンテ・カーヴァーさん、モデルとして活躍しているイサナさん、モーゼス夢さんが演じます。
幕末にあったかもしれない歴史の一コマがコメディタッチで描かれる『ジャズ大名』は12月9日(土)〜24日(日) KAAT神奈川芸術劇場ホールにて上演です。公式 HPはこちら。
シーズンチケットは、神奈川県民でなくても、「神奈川県民割」と同じ値段で購入できるとのこと。 上演作品もバラエティ豊かで豪華なラインナップと言うこともあり、これは使わない手はないですね!