ロックバンド「ポルノグラフィティ」のギタリスト・新藤晴一さんがプロデュース・原案・作詞・作曲を手がけることで話題を呼んでいる、a new musical『ヴァグラント』。東京公演は明治座、大阪公演は新歌舞伎座で上演、出演者も実力派ぞろいの話題のミュージカルについてご紹介します。
今から100年前の日本。「マレビト」と呼ばれる民たちがいた
本作の舞台は、今から100年前、大正時代の日本。めでたいことや不幸なことがあった場所に赴き、歌や踊りを披露する「マレビト」と呼ばれる芸能の民たちが存在していました。マレビトはあくまで「ヒト様の人生に区切りをつける」ことを仕事としており、「ヒト様」との接触は禁じられています。
ある時、炭鉱で開かれた社長就任式に呼ばれたマレビトの佐之助は、新たに社長に就任した政則をはじめとした「ヒト様」に興味を持ち、姉貴分の桃風の言いつけも聞かず、接触を試みます。
政則は、炭鉱のあるヤマのムラで育った幼なじみの譲治とトキ子と、「このヤマを守ろう」という約束を交わしていました。しかし今、譲治は政則と対する立場の炭鉱夫、トキ子は炭鉱私設の「取締隊」の隊長とそれぞれに違った事情を抱えており、昔の約束を果たせそうにない状況。そんな3人の元に「人の正体」を知りたい佐之助が介入したことにより、彼らの物語が大きく動き出すことになります。
完全新作ミュージカルで新藤晴一がタッグを組むのは脚本・演出家の板垣恭一
ポルノグラフィティの楽曲はストーリー性にあふれた楽曲が多く、数々のドラマ・映画主題歌にも起用されています。また、シングル曲のみならずカップリング曲でも独創的な世界観を確立し、多くのファンをとりこにしています。
そんな壮大な世界観を持つ新藤さんの原案を具現化する脚本・演出を担当するのは、板垣恭一さん。ストレートプレイからミュージカルまで幅広く手がけており、近年では2019年に上演したオリジナルミュージカル『FACTORY GIRLS〜私が描く物語〜』が同年の読売演劇大賞優秀作品賞を受賞。2023年6月からは再演版が上演されています。ほかにも2017年・2020年に上演されたミュージカル『フランケンシュタイン』で脚色・演出を担当。
本作では、新藤さんの原案を踏まえて、1年以上に及ぶ綿密な打ち合わせを重ねているとのこと。どんな作品になるのか期待が高まります。
数々の作品で主演をつとめる平間壮一と圧倒的パワーを持つ廣野凌大のW主演
主演の佐之助を演じるのは、『RENT』や『キングアーサー』に出演し、卓越したダンスや歌唱を披露するほか、ミュージカル『Indigo Tomato』では自閉症スペクトラム症の青年という難役を演じた実力派俳優の平間壮一さん。
Wキャストで、ミュージカル『鋼の錬金術師』で主役のエドワード・エルリックを演じたほか、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage -track.3- で原作さながらのパワーを発揮する波羅夷空却を演じ話題になっている、若手俳優の廣野凌大さんが出演します。
トキ子はWキャストとなっており、『レ・ミゼラブル』にコゼット役で出演後、活躍の幅を広げている小南満佑子さんと、元E-girlsで現在は俳優として活動しており、近年では『SPY×FAMILY』にフィオナ・フロスト役で出演した山口乃々華さんが演じます。
その他、コメディ作品からシリアス作品まで幅広く出演し、ポルノグラフィティファンを公言する水田航生さんが政則、しなやかなダンスとたしかな歌唱力、そして見るものを引き込む演技力を持った上口耕平さんが譲治、パワフルで圧倒的な歌声や妖艶な色気と力強さを併せ持った演技が魅力の玉置成実さんがアケミ、8年ぶりの舞台出演で新藤晴一とも親交も深い平岡祐太さんが健三郎、宝塚歌劇団退団後も、『ヴェラキッカ』や『クラウディア』などミュージカル作品に多数出演している美弥るりかさんが桃風を演じるなど、さまざまなキャストが出演し、作品を彩ります。
a new musical『ヴァグラント』は、8月19日〜31日まで明治座にて上演予定。その後、9月15日〜18日まで新歌舞伎座で大阪公演を上演予定です。チケットの詳細はこちら。
ポルノグラフィティの楽曲は、筆者も昔からよく聞いていたので、圧倒的な世界観を持つ新藤さんと、数々の舞台を手がけてきた板垣さんが作り出す舞台がどんなものなのか、非常に興味があります。キャストの皆さんも魅力的で、さらに明治座、新歌舞伎座という大舞台。『ヴァグラント』で描かれる架空の大正時代を彩る舞台セットにも注目したいところです。