2021年に初演され好評を博した、鴻上尚史さんワールド全開の一筋縄ではいかない家族の物語。『アカシアの雨が降る時』が10月から東京より再演され、12月まで兵庫・石川・岩手・愛媛・大阪へと巡演します。

祖母の病気をきっかけに、時と記憶を巡る三世代の家族物語

三世代の家族が織りなす物語は、桜庭⾹寿美が倒れるところから始まります。孫の陸、息子の俊也が駆けつけ、見守るなか目覚めた⾹寿美は、自身を20歳の大学生、陸を自分の恋人、俊也を恋人の父親と思い込み挨拶をします。

⾹寿美は病気であるため、妄想を否定してはいけないという医者のアドバイスから、陸と俊也は⾹寿美の妄想に沿って演技を続けることを決意。こうして、⾹寿美の青春時代だった70年代を共に過ごす旅が始まります。

青年と中年の世代が、現代の悩みを抱えながら、70年代に多くの若者たちが抗議活動に参加した「戦車闘争」や、当時の若者のバイブルだった高野悦子著「二十歳の原点」など、当時の文化を体験することで違いを理解し合おうとします。リアルとファンタジー、笑いと涙を巧みに操りながら、普遍的な社会を炙り出す鴻上ワールド全開の物語です。

鴻上ワールドを竹下景子・鈴木福・松村武の個性豊かな三名が演じ切る

本作は、早稲田大学在学中の1981年に劇団「第三舞台」を結成以後、数々の作品を発表し、岸田國士戯曲賞をはじめとした演劇賞を受賞してきた、鴻上尚史さんが作・演出を手掛けています。鴻上さんといえば、AERA dot.で連載されている「鴻上尚史のほがらか人生相談」に代表されるように、お悩み相談のイメージをもつ方も多いのではないでしょうか?

人間関係などの悩みにすっと寄り添う鴻上さんの言葉は、今回の家族をテーマにした物語でも舞台のセリフからも感じることができるかと思います。

主演の桜庭⾹寿美役には、映画『男はつらいよ』シリーズで三度ヒロインを好演し、近年も連続テレビ小説『おかえりモネ』などのTVドラマや、今年6月には舞台『ジン・ゲーム』への出演など精力的に活動する、竹下景子さん。

孫の木村陸役は、TVドラマ『マルモのおきて』で一躍人気を博した後も、報道番組でのコメンテーターや、今年7月・8月にはミュージカル『カラフル』で主人公を務めるなど、目覚ましい活躍を続けている鈴木福さん。

⾹寿美の息子で陸の父親である俊也役には、劇団カムカムミニキーナの主宰として作・演出を手掛け、2024年2月に新作公演を控える傍ら、NHK大河ドラマや舞台への出演など、俳優、演出、脚本家としても活躍する松村武さんが、初演に引き続き演じます。

2023年10月14日(土)~22日(日)新国立劇場 小劇場での公演後、11月に兵庫・石川・岩手・愛媛、12月に大阪と巡演します。すでに券種によっては残りわずかとなっている回もありますので、公式HPをチェックしてください!

おむ

人間関係に悩む方々に毎度ハッとする言葉をかけてらっしゃる鴻上さん。そんな鴻上さんワールドに浸ることができる本作は、今まさに家族関係に悩んでいる方の突破口にもなるのではないでしょうか。