11月3日からシアタークリエにて開幕する喜劇作家ニール・サイモンの自伝的戯曲『ビロクシー・ブルース』。1943年、第二次世界大戦中の新兵訓練所を舞台に、若者たちの青春ドラマが描かれます。本作でユージンを演じる濱田龍臣さん、エプスタインを演じる宮崎秋人さんにお話を伺いました。

「自分の芯を持っている人」「凄く優しい方でほっとしました」

−出演が決まった時の心情は?
濱田「ニール・サイモンの自伝的作品の主演をさせていただく、自分が一番年下というお話を聞いて、直近は年下の方との共演が多かったので、今回は改めて兜の緒を締めてやらなければいけないなという思いでした。演じるユージンはストーリーテラーの役割もあるので、難しい部分もたくさん出てくると思うけれど、ユジーンとしてただただやりきろうという覚悟が決まったという感じです」

−どういった部分に難しさを感じましたか?
濱田「ユジーンは現在進行形でのストーリーテラーとなっていて、過去を回想しながらではなく、起こっていることに反応しつつ伝えていくというのが初めての経験なので。そこを自分の中でどう落とし込んでいくかが課題だなと思っています」

−宮崎さんはいかがでしたか?
宮崎「台本を読んでみて、エプスタインという役が今まで演じてきた役とはかけ離れた役なので、どう演じようか、自分が演じているエプスタイン像が想像できないな、というのが率直な思いです。稽古が始まって、演出・小山さんとお話ししたり、共演者の皆さんの芝居の中に自分の身を置いてみて見えてくれば良いなと思っていますが、今回は挑戦だと思っています」

−どのような部分が糸口になりそうでしょうか?
宮崎「“僕”という一人称の中には体が弱いキャラクター性が反映されているとか、台詞の中に情報が詰まっているので、それらを1つ1つ納得して、焦らずに作っていこうかなと思っています」

−初共演のお二人。共演前のお互いの印象と、会ってみての印象について教えてください。
宮崎「顔つきが優しい可愛らしい印象なので、そういうイメージで台本を読んでいたんですけれど、会ってみると考え方に骨太な部分があって、自分の芯を持っている人だなと。そう思うとユージンも自分が勝手に想像していたのとは全く違うだろうなと感じ、稽古が楽しみになりましたね」

濱田「秋人さんは僕より10歳上で、舞台でのご活躍がすごいので、どんな方なのか緊張していたんです。僕は今まで映像作品がメインで、3年ほど前から舞台に出させていただく機会を頂いていますが、まだまだなところがたくさんあるので、そわそわしながら来たんですけれど。凄く優しい方なのでほっとして、稽古で色々と聞きながらやっていくと思うので、とにかく“よろしくお願いします!”という気持ちです」

完璧を求めなくて良いよと言ってくれるような、救いのある作品

−台本を読んでみて、『ビロクシー・ブルース』のどういった部分に魅力を感じましたか?
宮崎「ニール・サイモンの構成力が素晴らしいなと思いましたね。最初はエプスタインに対しても、“こんな嫌な奴やるの?”と思いながら読んでいたのですが(笑)、全員愛せるキャラクターとして作られていて、みんなに長所も短所もあるのが魅力的な作品だなと感じました。主人公のユージンも、“全部日記に書いているのはどうなの?”と思うし(笑)。人間的に描かれていて、みんな隙があるのが良いですよね」

濱田「人間らしさが滲み出ていて、完璧じゃないし、完璧を求めなくて良いよと言ってくれるような、救いのある作品だと感じました。ユージンは作中で3つの夢を掲げていますが、夢に向かっていく力強さを感じるし、夢が叶っても終わりじゃないということも感じて。漠然とした夢じゃなく、現実的な夢って何だろうと自分自身も考えられました。若い年代の役だからこそ、お客様にぶつけられるところなのかなと思いましたね」

−ニール・サイモンの戯曲、言葉はいかがですか?
宮崎「言葉の持つ力が強いなと思います。以前シェイクスピア作品をやった時、演出家に“お前の感情を見せなくても良い”と言われたことがあって。はっきり綺麗に聞かせてくれれば言葉が全部持っているから、気持ちを込めなくてもこっちに伝わると。それを言われて凄くハッとしたんです。もう出来上がっている完璧な言葉をお客様に届ければ、最低限成立する。じゃあなぜ自分がやるんだろう、とそこからスタートしていくと思うので、まず言葉にこだわりたいなとは思いますね」

濱田「言葉の並びが綺麗なので、そこを崩さないように。自分は今まで台詞を100%そのまま覚えるというより、日本語としてニュアンスが伝わることを優先してきたのですが、それは日本人が作っている作品だからこそだったと思います。海外の戯曲は既に翻訳というフィルターを通しているので、そこに自分の解釈を勝手に入れすぎないように、というのは大切にしたいと思っています」

−それぞれが演じるユジーンとエプスタインという役柄についてどう解釈されているか、またご自身が共感する部分を教えてください。
濱田「“すっごい自己顕示欲強いなこいつ”というのがユージンに対しての最初のイメージです(笑)。僕も初めましての人に対してどういう人なんだろうと想像することはあるので、そこは共感できるのですが、それを日記に書いちゃうんだと思いますし、意外に嫌な奴ですよね。でもどこか憎みきれない部分があるからこそ、人として輪の中にいてもなんとかなるんでしょうね。少し鼻につくような役との出会いは面白いなと思いますし、自分がどうやって表現していくのかは楽しみです」

宮崎「人の輪から少し外れているけれど、外れようとは思っていなくて、輪の中にいる必要性を感じていない人間なのかなと思っています。マイペースな役で、本が大好きな男の子なので知識も豊富です。彼なりの芯が1本しっかり通っている人物だなと思いますね。実は腹の中で違うことを思っていたり、思っていることを言っているようでもう一段階腹の中にあったりする部分は、自分と似ていますかね。表面的な部分は全く似ていないので、どう演じようかなと思っています」

日常の中に戦争がある。その異常さが作品の面白さに

−1943年、第二次世界大戦中で、新兵として訓練中という時代背景があります。どのようにキャラクターに反映し、作品の空気を作っていこうと思われていますか?
宮崎「同じような時代の日本兵の役はやったことがあるのですが、アメリカ側の視点というのは初めてです。長い間戦争をしているので、もう彼らの日常の中に戦争が組み込まれているのだろうなと想像しています。だから青春をしていられるのだと思うし、その異常さは彼らの中にあるだろうなと思いますね。ある意味、逼迫していなさが作品の面白さになってくると思います」

濱田「台本を読んでいると、戦争をしているという時代背景を忘れる瞬間があるんですよね。だから秋人さんがおっしゃった通り、戦争が日常になっているのだと思います。ユージンには兄がいるので、きっと兄も徴兵されているでしょうし、そんな中で6人がなぜこんなに素でいられるのかを探っていかないといけないですね。彼らは戦地にいるのではなく、訓練所というある種、安全圏にいられる存在だということも想像しようと思います」

−お二人とも映像作品でのご活躍も目覚ましいですが、改めて感じる舞台の魅力とは?
濱田「会話のテンポ感じゃないでしょうか。映像ではカット割で色々と変わっていきますが、舞台ではずっと引きの絵で、全身を見られながら会話をしていくので、どれだけ全員が役としての解釈を持って喋り続けることができるかというのは、ある種、映像では出しにくい難しさであり面白さなのかなと思います」

宮崎「舞台では、誰を見るか、何を感じるかはお客さんに委ねられている部分だと思うんです。自分がずっと喋っているからと言ってお客さん全員が自分を見ているわけではない。逆に誰かが喋っている時でも端で何か動きを入れると、見てくれる方もいて、演じるキャラクター性を表現することもできます。そういった空間をみんなで作れるというのがとても楽しいですね」

『ビロクシー・ブルース』は2023年11月3日(金)から19日(日)までシアタークリエにて上演されます。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。

撮影:山本春花
濱田龍臣ヘアメイク:白銀一太(TENT MANAGEMENT)
濱田龍臣スタイリスト:前田順弘
濱田龍臣 衣装協力:VICTIM(VTM)、CASPER JOHN(Sian PR)
宮崎秋人ヘアメイク:野中真紀子(éclat)
宮崎秋人スタイリスト:上田△リサ
宮崎秋人 衣装協力:ANEI
Yurika

『23階の笑い』『おかしな二人』など日本でも上演の多いニール・サイモン。三谷幸喜さんも影響を受けた作家として名前を挙げています。