日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、12月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

“学校嫌い”な代理教員を中心に学校の仕組みを問い直す 鵺的『天使の群像』

「鵺的」は脚本家の高木登さんによるオリジナル作品を上演することを目的とした演劇ユニットです。 現代社会の歪み、そこを生きる人間の姿、新しい人間関係の在り様などを、慎重に大胆に追究しています。前作『デラシネ』では、ハラスメントと家父長制の問題を取り上げました。 新作公演『天使の群像』は、“学校”という仕組みそのものに焦点を当てる作品です。生徒のみならず教師が学校にいけなくなるという事例もあるほど、学校をめぐる問題が複雑化している現在。劇中では、学校嫌いを明言する1人の代理教員・道原さとみを中心とした物語が展開していきます。

道原さとみは、小さな商社に勤めていましたが、倒産の危機に直面。成り行きで取得していた教員免許で、公立高校で臨時教職を得ることに。自身の学生時代とは少し変わったように感じられる学校の空気と、変わらず社会の歪みを背負わされるかのように存在しているさまざまな生徒たちの姿を目にして…。

「学校」という誰もが通る閉鎖的な枠組みに問いかける、鵺的『天使の群像』は、12月21日(木)~12月29日(金)下北沢ザ・スズナリにて上演です。詳細は公式HPにてご確認ください。

とある家族の100年を描くささやかな大河劇 20歳の国『長い正月』

2012年に石崎竜史さんがソロユニットとして立ち上げた「20歳の国」。誰もが通ってきた「青春」をモチーフに、「ベタな物語からもポストドラマからも取りこぼされる、ありふれた高校生」を描いた青春群像劇を多く発表してきました。近年は、テーマを青春に限定せず「ありふれた人生」に劇的を見出す演劇を創作しています。

主催の石崎竜史さんは、2019年からは東京芸術劇場主催・東京演劇道場に参加し、野田秀樹さん作・演出の舞台『赤鬼』にも出演。「ドラマチック界隈」というワークショップの企画もされています。

そんな「20歳の国」の6年ぶりとなる劇場公演。とある家族の1924年から2024年までの“正月”を定点観測する、ささやかな大河劇です。舞台は東京の多摩村。神社のとなりのちっぽけな酒屋には、家をどうにか守りながら新年を迎えようとする家族がいて…。

石崎さんは上演について、「青春劇ばかりをお届けしていた私たちも、家族について考える歳になりました。生きるのがヘタな家族のありふれた正月の中に、”劇的”を見出そうと思います。よいお年をお迎えできる演劇に、あけましておめでたい演劇にしますので、劇場でも配信でも、世界中どこからでもご来国くださいませ」とコメントしています。

近年よく耳にする「家族の形」。とある家族の100年を覗き見させてもらうことで、新年からあたたかなきもちになれるのではないでしょうか。20歳の国『長い正月』は、12月29日〜1月8日に東京・こまばアゴラ劇場にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

世界初?!“蚤”が主役のオリジナルミュージカル Ukiyo Hotel Project トライアウト公演『ジル・ド・レ~吾輩は娼館の蚤である~』

神奈川県の横浜や川崎を中心に、オリジナルミュージカルの上演を続けている、Ukiyo Hotel Project。2021年には、横浜元町にあるダンスホール「クリフサイド」にて歌とダンスの公演『Ukiyo Hotel Bar』を上演。2022年には、横浜の歴史を題材にした短編ミュージカル集『YOKOHAMA Short Stories』を上演しました。

Ukiyo Hotel Projectの企画・製作を担う河田唱子さんが、新作公演『ジル・ド・レ ~吾輩は娼館の蚤である~』の脚本を担当します。第一次世界大戦を背景とした、大人向けのファンタジー作品となっています。

世界初の蚤が主人公のオリジナルミュージカル。寿命1年の蚤「ジル・ド・レ」が、蚤の目を通して見た人間の世界で、自由を勝ち取る様子を通し小さき者が世界に与える大きな影響を描きます。

作詞を務めるのは、藤倉梓さん。脚本・作詞・作曲・演出・翻訳・訳詞・ピアニスト・俳優と多彩に活動しています。ブロードウェイミュージカル『ジャニス』では演出を、Ukiyo Hotel Project『YOKOHAMA Short Stories』の作品の1つ『周ピアノ』では主演を務めました。

演出を務めるのは、俳優としても活躍している菊地創さん。Ukiyo Hotel Project『YOKOHAMA Short Stories』でも演出を務め、好評を博しました。

主人公ジル・ド・レ役には、2.5次元ミュージカル等で活躍する岡本悠紀さんが初主演を務めます。共演には、青野紗穂さん、エリザベス・マリーさん、大音智海さん、金子大介さん、小西のりゆきさん、栗山絵美さん、田中惇之さん、まどかさんとミュージカル界で活躍している俳優陣が名を連ねました。

音楽は、6名編成のバンドによる生演奏。今回のトライアウト公演を経て、更にブラッシュアップし、来年以降に本公演として本格上演を目指します。常に面白い試みに挑み続けているUkiyo Hotel Projectの新作公演に注目です!

Ukiyo Hotel Projectトライアウト公演『ジル・ド・レ~吾輩は娼館の蚤である~』は、12月28日(木)〜12月31日(日)に神奈川県・ラゾーナ川崎プラザソルにて上演です。詳細は公式HPをご覧ください。

ミワ

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