1月10日(水)から日生劇場で開幕する日本初演ミュージカル『トッツィー』。売れない中年男優が女装してオーディションを受けたところ、一躍大人気女優になってしまう…というコメディミュージカルです。主人公を演じるのは、山崎育三郎さん。開幕前に行われた囲み会見とゲネプロの様子をお届けします。

「コメディ上手すぎて僕ら引いています」

2019年のトニー賞で11部門にノミネートされた大人気ミュージカル『トッツィー』が、ついに日本上陸。主人公のマイケル・ドーシー(ドロシー・マイケルズ)を演じる山崎育三郎さんは艶やかなドレス姿で製作発表に登場し、「お客様が入ってようやく完成する舞台なので、皆さんがどうやって受け止めてくださるか楽しみ」と期待を語ります。

日本初演となる本作では、台詞の1つ1つがコメディとして日本で受け入れられるかどうかのディスカッションが日々行われ、日本人にピンとくる名前や言葉への変更があったそう。クリエイティブチームとキャストがテーブルを囲み、「劇団のように」ディスカッションを重ねながら台本を創り上げたと言います。

山崎さんは「コメディですから、こちらの日本を代表する芸人のお2人に…」とエハラマサヒロさん、おばたのお兄さんのお2人を見やると、「いやいや、違います!ちょっとユニークなことも言うミュージカル俳優です!」(エハラさん)「吉本のミュージカル班です!」(おばたのお兄さん)と2人は大慌て。

「2人に間の取り方やお笑いとはこういうふうに作っていくんだよという講義もしていただいて…滑ったらこの2人のせいです」と山崎さんがニヤリと語ると、「いやいやそんなことしてない!変なこと言うのやめて!」とエハラさんツッコミ。

むしろお笑い好きの山崎さんの案が採用されたことが多かったようで、「そのうちルミネで“山崎育三郎寄席”があるんちゃうかな」とエハラさん。おばたのお兄さんも、「(山崎さんが)コメディ上手すぎて僕ら引いています。ある種、意外すぎて、そこは必見です!」と力を込めました。

人気女優ドロシー・マイケルズとして女装するシーンも多い山崎さん。ドロシーをオーディションで見出す敏腕プロデューサー・リタを演じるキムラ緑子さんは、「ドロシーを稽古場で長いこと観ていると、途中で男性に戻る時に“あ、こっちが本当の育ちゃんだった”となるくらい、ドロシーが馴染んでいた」と言います。

マイケルが恋する女優ジュリーを演じる愛希れいかさんも「稽古場ではドロシーと接している時間しかないので、不思議と女友達のように思っちゃっていました」とコメント。女性陣とグッと距離が縮まった稽古時間だったようです。

さらにドロシーを演じる中で日常生活への影響を聞かれた山崎さんは、「足がガニ股じゃいられなくなってくる。テレビ番組出させていただいた時も、ずっと男性の格好をしているのに足をそろえて座っていたの。手も胸の前にないと落ち着かなくて」と会見上で綺麗な足を見せながら実演してくださいました。

そして注目の早替えは本番中になんと30回!着替えの最速時間が約40秒、長くても1分30秒程度とのことで、「舞台裏をみんなに見てほしいくらい。F1のピットみたいにスタッフさんがメイクやネイル、イヤリングまでやってもらうので、舞台裏が本当に大変です」と山崎さんが苦労を明かしました。

「こんなに稽古場でずっと笑っている作品は初めて。通し稽古は何回もやっていて、何回も見ているはずなのに面白くて笑えるんです。お客様が笑って反応してくださったらより楽しめる、ある意味参加型のミュージカルになっていると思うので、参加してください」と語ったのは、マイケルの元カノ・サンディ役を務める昆夏美さん。

このサンディ役については愛希さんが「いつもやっている役より弾けた昆ちゃんが見られると思います。とってもぶっ飛んでいる役なんだけれども、必死な姿にグッとくる瞬間があって。泣く場面ではないんですけれど、うるっときてしまうんです。それが素敵だなと思います」と言うと他のキャストの皆さんも「わかる!」と共感。個性溢れる愛らしいキャラクターが揃った作品であることが垣間見えました。

最後に山崎さんから「今年2024年は震災がありまして、被災された皆さんには、1日も早く心穏やかに過ごせる日々が来ると良いなと本当に心から祈っております。僕たちは明日初日を迎えますけれど、当たり前にある日々というのは当たり前ではなくて、もし明日がなくても今日の公演でやり切ったと思えるような公演を目指して、1公演1公演、演じていきたいと思っております。そして『トッツィー』カンパニーとして、日生劇場に募金箱を置かせていただきますので、少しでも寄り添うことができたらなと思っています。3月30日の岡山公演まで、最後まで走り抜けられるように、たくさんのハッピーと笑いを届けたいと思いますので、ぜひ最後まで応援してください」と思いを込めた挨拶で製作発表が締め括られました。

ミュージカル界の頂点へ、ヒールで駆け上がる!

舞台はニューヨーク・ブロードウェイ。エンターテイメントの聖地でスターを夢見るマイケル・ドーシー(山崎育三郎さん)は演技へのこだわりが強いあまり、演出家とすぐに喧嘩してしまいます。業界中の人々から嫌われ、マイケルとは二度と仕事をしたくないと疎まれ、ついにはエージェントのスタン(羽場裕一さん)にも匙を投げられてしまうマイケル。

売れない劇作家で同居人のジェフ(金井勇太さん)と、売れない役者で元カノのサンディ(昆夏美さん)と共に、冴えない現実から抜け出せない毎日に焦りを募らせます。そんなある日サンディが、新作ブロードウェイ・ミュージカルの臨時オーディションを受けることを話します。

チャンスを掴もうと、女優“ドロシー・マイケルズ”としてオーディション会場に乗り込んだマイケルは、個性的な立ち振る舞いと美しい歌声で敏腕プロデューサー・リタ(キムラ緑子さん)に気に入られ、なんとオーディションに合格!

有頂天で稽古場に向かったマイケルですが、そこには演出家・振付家のロン(エハラマサヒロさん)によるなんとも個性的なストーリーや演出と、演技経験のないタレント・マックス(岡田亮輔さん・おばたのお兄さんのWキャスト)が待ち構えていました。

マイケルは作品でヒロインを務めるジュリー(愛希れいかさん)と一緒に、作品をより良い方向へと変えていけるよう奮闘。2人の仲が深まっていくにつれて、マイケルはジュリーに惹かれていってしまいます。心配するジェフの声には耳を傾けず、プレビュー公演を見事成功させたマイケルは“もう誰も止められない!”と人気女優への道を駆け上がっていきますが…。

マイケルからドロシー、ドロシーからマイケルと、次々に早替えしていく姿が楽しく魅力的なのはもちろん、ブロードウェイ・ミュージカルに挑む役者たちの世界をコミカルに描いた本作。厄介な演出家ロンの独特すぎる振り付けは、だんだんクセになってきます。

イケメンで肉体系、ちょっと頭は弱めなマックスも稽古場を引っ掻き回します。しかもマックスはドロシーに恋をしてしまい…。さらにプロデューサーのリタも業界を生き抜いてきただけあって、なんだか個性的。マイケルの元カノ・サンディはいつも情緒不安定で、早口でこれから先自分の身に起こりうる最悪な展開の妄想をし続けます。

どのキャラクターもコミカルで愛らしく、それを見事に魅せきる実力派カンパニー!客席の拍手や笑い声が重なることで、更なる名作に仕上がっていくことでしょう。

ミュージカル『トッツィー』は1月10日(水)から30日(火)まで日生劇場にて上演。その後、大阪・名古屋・福岡・岡山公演が行われます。詳細は公式HPをご確認ください。

撮影:山本春花
Yurika

「エネルギーが満ち満ちていて、観ている人を元気にし、幸せにし、明日頑張ろうという気持ちになっていただける作品」とキムラ緑子さんが語った通り、華やかで明るい空気が劇場を包む作品になっています!