夫イアソンの裏切りに遭い、我が子までをも殺める王女メディアの復讐劇『メディア』。脚本・フジノサツコさん、演出・森新太郎さんによる新作『メディア/イアソン』ではこのギリシャ悲劇をベースに、2人の悲劇に至るまでの前日譚と、3人の子どもたちの視点を加え、新たな物語を紡ぎます。出演は、井上芳雄さん、南沢奈央さん、三浦宏規さん、水野貴以さん、加茂智里さんの5名です。
井上芳雄×南沢奈央、“復讐”を描いたギリシャ悲劇を新脚本&新演出で
古代ギリシャの3大悲劇詩人の1人・エウリピデスが執筆した、ギリシャ悲劇『メディア』。メディアはギリシャ神話に登場するコルキスの王女で、若返りの魔法や眠りの魔法に長けていたとされる人物で、彼女の復讐劇を描いた作品です。
ギリシャ神話の秘宝・金羊毛を奪いにやってきたイアソンを助け、結婚した2人は2人の子どもに恵まれます。しかしコリントスの王クレオンが自分の娘婿としてイアソンを望み、権力と財産に惹かれたイアソンはそれを快諾してしまいます。復讐を決意したメディアはクレオンとその娘、さらには自分たちの子ども2人をも殺してしまうという悲劇です。
新作『メディア/イアソン』ではこの悲劇の前日譚である、若き日の二人の出会いと愛情に満ちた日々を鮮やかに照射し、太陽のような存在であった二人がなぜ悲惨な結末を迎えるに至ったのかを、二人の間に産まれた三人の子供たちの視点を通して描いていく物語。
脚本を手がけるのは、森新太郎さんが主宰する「モナカ興業」の脚本家であるフジノサツコさん。そして、演出を『管理人』『エレファント・マン THEELEPHANTMAN』などで世田谷パブリックシアター公演に携わってきた森新太郎さんが手がけます。
そしてイアソン役を務めるのは、ギリシャ悲劇には初挑戦となる井上芳雄さん。『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』『ラグタイム』『ベートーヴェン』とミュージカル界のトップランナーとして活躍しながら、2022年にはKERA・MAP #010『しびれ雲』に出演するなど、ストレートプレイにも活躍の場を広げています。
井上さんは本作について「人間の根本は変わらず、人の弱さや狡さ、それゆえに生まれる喜びや苦しみなどの感情は、時空を超えて普遍的で、リアルに伝わってくるのだと驚きました」と語り、森さんについては「様々なアプローチで幅広い演劇作品を創造し、演劇界に衝撃を与える演出家」だと表現。森さんによって井上さんの新たな一面が引き出されそうです。
そして壮絶な復讐を遂げる王女メディア役は、南沢奈央さん。映画『赤い糸』や舞台『血の婚礼』『セトウツミ』などに出演し、読書家で自身の連載や書評なども手がけています。
「メディアというと凄惨な復讐劇というイメージが強くありますが、この『メディア/イアソン』ではそれだけではなく、イアソンとの恋や冒険など、様々なエピソードが盛り込まれるとのことなので、現代を生きる私たちも共感できるメディア像を築けるのではないかと思っています」とコメントしています。
イアソンとメディアの間に産まれた三人の子どもたちを演じるのが、三浦宏規さん、水野貴以さん、加茂智里さん。
『千と千尋の神隠し』『キングダム』『のだめカンタービレ』『赤と黒』と躍進の続く三浦宏規さんは、初めてのギリシャ悲劇、初めての森さん演出。子どもの役以外にも複数役を演じる予定となっており、「「何でもやります!」という意気込みで、恐れず、森さんと共演者の皆様と一緒の船に乗り込み、世界へ飛び出していくような気持ち」と意気込みます。
水野貴以さんは、森新太郎さん演出の『パレード』『奇跡の人』『モンスターと時計』に出演、森作品に欠かせない俳優の一人。加茂智里さんは森さんの演出作品にスウィングとして関わった際、森さんがその才能を高く評価し、本作への出演に繋がりました。
『メディア/イアソン』は3月12日(火)から3月31日(日)まで世田谷パブリックシアター、4月4日(木)から4月6日(土)まで兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールにて上演が行われます。東京公演の一般チケット発売は1月14日(日)から。チケットの詳細は公式HPをご確認ください。
若き日のメディアとイアソンを描くことで、より悲劇性・復讐心が高まりそうですね。人間の本質を描き、現代に通じる大きな議題を投げかけてくれそうです。