年度毎の上演作品にテーマを設け、シーズン制を導入しているKAAT神奈川芸術劇場。2023年度のテーマである「貌(かたち)」を締めくくるのが、2月16日(金)より上演される一人芝居『スプーンフェイス・スタインバーグ』です。英国の人気劇作家が描いた生きる意味を問う少女のドラマを、ぜひ劇場で体感してはいかがでしょうか?

ユニークな名前の少女が語る一人芝居

本作を書いたのは、リー・ ホール。彼はミュージカル『ビリー・ エリオット〜リトル・ダンサー〜』や映画『戦火の馬』、映画『ロケットマン』の脚本を手掛けたイギリスの劇作家です。

『スプーンフェイス・ スタインバーグ』は、元々1997年にイギリスで放送されたラジオドラマ用の一人語りの脚本でした。その面白さが反響を呼び、1998年にはテレビドラマ版、2000年には舞台版が制作されます。

舞台初演版では、野田秀樹さん作の英語戯曲『THE BEE English Version』にも出演していた実力派女優、キャサリン・ハンターがタイトルロールを演じました。日本では2010年にリーディング公演が上演され、KAAT神奈川芸術劇場の現芸術監督である長塚圭史さんの演出の下、麻生久美子さんが出演しています。

タイトルは、主人公の女の子の名前から。スプーンフェイス・スタインバーグはオペラが大好きなユダヤ人の少女で、顔がスプーンのように丸いため、このように名付けられました。

癌に侵され死期が迫っている彼女は、齢7歳の短い人生を振り返りながら、生きる意味と命の終わりについて思いを巡らせます。自閉症のスプーンフェイスは、実際には言葉にできない感情も、頭の中でなら自由に語ることができるのです。

両親やお手伝いさんなど周りの大人たちをじっくりと観察し、小さな頭の中で人生とは何かと考えます。

暗くて悲しそうなお芝居だな・・・と思った皆さん、ご心配なく。スプーンフェイスがお気に入りのマリア・カラスの歌声に乗せて語る独白は詩的でユーモアがあり、その火花のような輝きにきっと心を奪われることでしょう。

片桐はいり&安藤玉恵のダブルキャスト、小山ゆうなの演出にも注目

©Tadayuki Minamoto

今回の『スプーンフェイス・ スタインバーグ』は、片桐はいりさんと安藤玉恵さんがダブルキャストで挑みます。舞台でも映像作品でも、存在感を放つ個性派女優のお二人。

同じ台本で共に稽古しても、片桐さんと安藤さんの演じるスプーンフェイスはアプローチが全く異なっているといいます。演者の持ち味がキラッと光る2人のスプーンフェイスは、ぜひどちらも見たいものです。

演出は『チック』、『ロボット・ イン・ザ・ガーデン』、『ファインディング・ネバーランド』などを手掛け、演劇・ミュージカル界で目覚ましい活躍を見せる小山ゆうなさん。KAAT神奈川芸術劇場では、2022年に上演した戯曲『ラビット・ ホール』においても息子の死に向き合う夫婦の物語を繊細に描きました。

人間の生と死を見つめる作品を再び演出することになった小山さんが、本作をどのように捉え、作り上げているのかも見どころです。

『スプーンフェイス・ スタインバーグ』は、2024年2月16日(金)から3月3日(日)まで横浜・KAAT神奈川芸術劇場にて上演。2月22日(木)の夜公演、3月1日(金)の昼公演では、終演後にアフタートークショーも開催予定です。キャストスケジュールやチケットの詳細は、作品HPから確認できます。

さきこ

死が迫っている彼女の目には生きる事と死ぬ事がどのように映っているのか。リー・ホールが紡ぐスプーンフェイスの独白には、私達の心を明るく照らす言葉が隠れていそうですね。