4月に幕を開けるシス・カンパニー公演『カラカラ天気と五人の紳士』は、現代の劇作家に大きな影響を与え続けている別役実さんが書いた作品です。堤真一さんや藤井隆さん、溝端淳平さんをはじめとする超豪華俳優たちが出演し、気鋭の加藤拓也さんが演出するこの舞台について、紹介していきたいと思います。

シス・カンパニーにとって初挑戦の、別役実作品。

シス・カンパニーは、1980年代の人気劇団「夢の遊眠社」のマネージメント部門が、1989年に法人独立してできた会社です。劇団解散後は、幅広い分野におけるアーティストを加えるようになりました。2002年からは独自での舞台制作を本格化させ、幾度にわたっても紀伊國屋演劇賞や読売演劇大賞などを受賞しています。

年間平均4~5本の作品を発表しているシス・カンパニーですが、今回は日本演劇界における巨星、別役実さんの作品に初挑戦する形となります。

五人の紳士たちを待ち受ける、予測不能な展開。

『街と飛行船』や『ジョバンニの父への旅』など数えきれないほどの代表作や受賞歴を誇る別役実さんは、学生時代にベケットやカフカらの不条理劇から影響を受けています。彼が執筆した通称「五人の紳士もの」と呼ばれるシリーズには、どこからともなく現れた五人の紳士が、とりとめのない会話を重ねていくうちに思いもよらぬ方向へと進んでしまうという設定の戯曲が収録されています。

この「五人の紳士もの」は過去に他のカンパニーで何回か上演されていますが、今回シス・カンパニーが上演するのはこのうちの『カラカラ天気と五人の紳士』です。

物語は、五人の紳士が棺桶を担いでやって来るところからはじまります。五人のうちの1人が懸賞のハズレくじでひいた景品だというこの棺桶。せっかくの貰い物だから、誰かひとりが死んで中に入ることで役立てよう、死ぬなら死を意識せず痛みを感じる前に死ぬ方が良い・・・と、奇妙で真剣な議論が交わされます。そうしているうちに、ショッピングバッグを抱えた不思議な女性二人組と遭遇。彼女たちこそ、懸賞の当たりくじの当選者でした。その一等賞の景品とは・・・?

次代を担う演出家と、超豪華俳優陣。

演出を手がけるのは、演劇と映像の両方面で目覚ましい活躍を遂げている加藤拓也さんです。17歳でラジオ・テレビの構成作家として活動し始めた加藤さんは、18歳でイタリアに渡り映像制作を手がけ、帰国後20歳で「劇団た組」を立ち上げました。舞台では三島由紀夫没後50 周年企画『MISHIMA2020』(日生劇場)での『真夏の死』、映像では『俺のスカート、どこ行った?』の脚本など数々の作品で注目を集めています。シス・カンパニーとのタッグは今回で5回目となり、その才能で別役実さんの世界観をいかに表現するかが楽しみです。

また、多くのアーティストのコンサートライブ、テレビ番組などでレコーディングに参加している徳高真奈美さんがヴィオラ演奏を担当します。ヴィオラで語られるものに耳を傾けてみてください。

そして、この公演を語るうえで欠かせないのが出演者の豪華さです。五人の紳士を演じる堤真一さん、溝端淳平さん、野間口徹さん、小手伸也さん、藤井隆さんは、ドラマ・映画・舞台など幅広い分野で日本のエンターテイメント界を牽引する錚々たる顔ぶれ。女性二人組は、劇団☆新感線に所属し数々の公演を支えてきた高田聖子さんと中谷さとみさんです。名前が並んでいるだけでもわくわくしてしまうほどの豪華俳優陣が、『カラカラ天気と五人の紳士』をどのように形づくり彩るのか、期待が高まるばかりです。

不条理が生み出す、おかしな劇空間。

別役実さんがこの世に遺した不条理劇が、加藤拓也さんの演出と超豪華キャストによって、今までの上演とはまた異なる新たな姿で私たちの前に現れます。その実におかしな劇空間を、ぜひ劇場に体験しに行ってみてはいかがでしょうか。

この作品の東京公演は、2024年4月6日(土)から4月26日(金)までシアタートラムにて行われます。一般前売は3月9日(土)から開始です。

また5月には岡山公演、大阪公演、福岡公演が予定されています。詳しくは公式HPをチェックしてください。

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個人的に、この贅沢なキャスト陣が集まるだけで、絶対に面白いことが起きるに違いないと想像してしまいます。そんな彼らの会話劇が、別役実さんの世界観、加藤拓也さんの手腕と掛け合わせられるのを、劇場で直接目の当たりにしてみてください。