2022年に世界初演を迎えた舞台『千と千尋の神隠し』。2024年に再演・全国ツアー・ロンドン公演と新たな展開を迎えます。3月11日(月)、帝国劇場にて開幕した舞台『千と千尋の神隠し』をゲネプロ写真と共にご紹介していきます。

人間の温かみが創り上げる湯屋の世界

宮﨑駿監督の不朽の名作『千と千尋の神隠し』をジョン・ケアードさんの翻案・演出によって2022年3月に舞台化。初舞台・初主演となった橋本環奈さんと、上白石萌音さんによるWキャストで千尋が演じられ、上白石さんは読売演劇大賞最優秀女優賞を最年少で受賞。上演関係者一同が菊田一夫演劇大賞に選ばれるなど、高い評価を受けました。

そして2024年は新たなキャストを迎え、帝国劇場での上演を皮切りに全国ツアー、そして日本人キャストでは異例のロンドン・ウエストエンド公演へ。千尋役は橋本環奈さん、上白石萌音さん、川栄李奈さん、福地桃子さんの4名が演じます。

原作映画から飛び出してきたかのような物語の世界観を、帝国劇場のステージ隅々まで使って表現。台詞の多くは原作そのままに再現され、能舞台を彷彿とさせる湯屋「油屋」のセットは壮観な景色です。役者たちも舞台の端から端まで走り抜け、エネルギッシュに本作の世界を生きていきます。

春日様やおしらさまも原作のイメージそのままに登場。おしらさまは迫力の大きさで、ゆったりと舞台を動き、千尋とともにエレベーターに乗り込みます。青蛙や坊ネズミは可愛らしいパペットで。6本の腕を持つ釜爺も役者たちが腕を操り、そのアナログさが各キャラクターの息遣いと温かさを演出してくれます。

カオナシはダンスを取り入れ、異質な存在感を舞台らしく表現。空を飛ぶキャラクターたちによって、劇場全体に作品の世界が包まれていくのを感じます。映画同様、久石譲さんの音楽も物語を美しく彩ります。

ゲネプロにて千尋役を演じた上白石萌音さんは、磨き込まれた圧巻の演技力で魅了。不貞腐れてばかりで鈍臭い10歳の幼い女の子が、油屋で様々な出会いを経て成長していく姿を隙なく演じていきます。ハクにおにぎりを渡されて涙を流すシーンでは、気丈に振る舞っていた彼女の感情の爆発が見え、花々も見守る美しい場面に。

ハク役の増子敦貴さんは千尋に優しく寄り添いながらも、軽やかでダイナミックな身体表現でハクの人間離れした存在感を描き出していきます。(ハク役は醍醐虎汰朗さん、三浦宏規さんのトリプルキャスト)

千尋は油屋の人々に「人間の匂いがする」と煙たがられますが、彼女は出会う人々・神々・生き物たちに平等に接し、嫌がらせを受けても真正面から向き合い、匂いが酷いオクサレ様も懸命にもてなします。彼女の真っ直ぐさと力強さが道を切り拓き、徐々に味方を増やしていくのだと感じさせられます。

演劇的な人間の温かみ溢れる表現によって、非日常の世界観が目の前に広がる舞台『千と千尋の神隠し』。原作同様、海を超えて世界中の人々に愛される作品になっていくことでしょう。舞台『千と千尋の神隠し』は3月11日から30日まで帝国劇場で上演。その後全国公演と並行して、4月30日から8月24日までロンドン・ウェストエンド最大級の劇場ロンドン・コロシアムでの海外公演が行われます。作品公式HPはこちら

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Yurika

巨大な油屋のセットが回転しながら物語が展開していく様は壮観です!