韓国ミュージカル『ラフヘスト〜残されたもの』が、avex live creativeとconSeptによる共同プロジェクト・belle wavesシリーズの第1弾として2024年7月に上演されます。2人の天才芸術家を支えた女性、キム・ヒャンアンの人生を描き、韓国のミュージカル授賞式にて主要部門3冠に輝いた傑作の日本初公演です。
芸術を愛したキム・ヒャンアン女史の暖かく美しい軌跡
『ラフヘスト〜残されたもの』は、2022年に韓国で創作されたミュージカル。2023年に再演し、2024年に開催された第8回韓国ミュージカルアワードで作品賞と脚本賞、音楽賞の主要3部門に輝きました。
韓国ミュージカルといえば、ドラマ性が強いストーリーや、見ていてハラハラするような人間関係を描いた作品が多い印象です。しかし本作は心にじんわりと染みるような穏やかさとチャーミングさが話題となり、韓国では10点満点の観客評価点において9.9点という異例の高評価を得ています。
主人公は、韓国の随筆家であり芸術評論家、画家でもあるキム・ヒャンアン女史。最期が迫ったヒャンアンは、これまでの人生を振り返ります。
本名のトンリムを名乗っていた頃に出会い、最初の夫となった自由奔放な詩人イ・サンのこと。彼の死後、喪失した心を解かし、2人目の夫となった画家のキム・ファンギのこと。
タイトルは、「人は去っても芸術は残る(Les gens partent mais l’art reste)」というフランス語に由来しています。夫を支える良き妻を務めながら彼らの才能を開花させ、自身の才能も輝かせたヒャンアンの人生を史実に基づいて描いた作品です。
実在した3人の韓国人芸術家
物語の中心となるのは実在の韓国を代表する天才芸術家の2人の男性、そして彼らを夫に持ったキム・ヒャンアンです。
梨花女子専門学校の学生だったキム・ヒャンアン、本名ピョン・ トンリムは、21歳で作家のイ・サン(本名キム・ヘギョン)と結婚します。3か月後、夫は東京へ留学。さらに1か月後にイ・サンは病に倒れ、トンリムに看取られながら26歳の短い生涯を閉じました。
イ・サンはその難解な作風から生前はあまり評価されませんでしたが、現在では韓国近代文学の発展に貢献した韓国文学史の先駆者と称されています。
イ・サンの連作詩『烏瞰図 詩第15号』にインスパイアされた韓国ミュージカル『SMOKE』が日本でも2021年から上演されているので、彼の名前にピンときた方も多いのではないでしょうか。
トンリムは随筆家になりしばらく1人で活動しますが、知り合いから男性を紹介されます。その男性こそ、韓国を代表する西洋画家のキム・ファンギです。
トンリムは彼と愛し合い、両家の反対を押し切り再婚。ファンギの当時の雅号であったヒャンアンを貰い、キム・ヒャンアンというペンネームを名乗るようになります。
夫妻はニューヨークに拠点を移し、ヒャンアンは美術評論家へと転身してファンギを支えました。東京、パリ、ブリュッセルなどで個展を開き活躍したファンギは、61歳で亡くなります。
ヒャンアンは彼の死後は画家となり、創作の傍らでファンギ財団を立ち上げ、韓国に美術館を設立。ペンネームを与えてくれた夫のために生きるという信念を貫き、2004年に88歳で亡くなりました。
主演・訳詞は、韓国ミュージカル初出演のソニン
日本公演の演出を担当するのは、戯曲『加担者』、舞台『幽霊はここにいる』の演出で2023年に読売演劇大賞の優秀演出家に選出された稲葉賀恵さん。丁寧に作品を読み解き、心地よいテンポ感をもたらす演出に定評のある稲葉さんがミュージカルを演出するのは、今回が初めてとなります。
キム・ヒャンアンを演じるソニンさんは、韓国ミュージカルに初出演。主演だけではなく、上演台本を手掛けるオノマリコさんと共に訳詞を担当し、クリエイターとしても作品に深く関わっています。
ヒャンアンが愛した二人の天才芸術家は、キム・ファンギ役がダンスボーカルユニットLeadのメンバーでありミュージカル界でも活躍する古屋敬多さん、イ・サン役が繊細な演技が魅力の相葉裕樹さんです。
ヒャンアンの若かりし頃であり、イ・サンと恋に落ちるトンリムは、『SPY×FAMILY』や『ヴァグラント』など話題のミュージカル作品に出演する山口乃々華さんが演じます。
『ラフヘスト〜残されたもの』は2024年7月18日(木)から28日(日)まで、東京芸術劇場 シアターイーストにて上演。公演とチケットの詳細は、作品HPよりご確認ください。
同一人物の人生をヒャンアン役のソニンさんが現在から、トンリム役の山口さんが過去からそれぞれ演じるという構成がユニークで気になります!ヒャンアンとトンリムの共通点、相違点にも注目したいところですね。