咲妃みゆさん、松岡広大さんらが出演する、別役実さんの傑作童話を原作にした音楽劇『空中ブランコのりのキキ』が8月6日から世田谷パブリックシアターで上演されます。演出には快快の野上絹代さん、サーカス演出監修には目黒陽介さんを迎えます。

不条理でどこか不思議、楽しくも切ない音楽劇『空中ブランコのりのキキ』

音楽劇『空中ブランコのりのキキ』では、中学校の国語の教科書にも掲載されていた「空中ブランコのりのキキ」、童話集「山猫理髪店」より「愛のサーカス」などサーカスをテーマとした作品数本、「丘の上の人殺しの家」と、どれも別役実さんの傑作と言われる、不条理でどこか不思議な作品を一本の音楽劇として再構築します。

別役実さんは、カフカ、サミュエル・ベケットにつながる日本の不条理劇を確立し、A,B,Cと名付けられた無名の登場人物たちを主人公に、小市民の日常に潜む不条理を描き、多くの演劇人に影響を与えてきました。
1960年代の大学生たちの政治闘争を背景として生まれた小劇場演劇第一世代を代表し、鈴木忠志さんらと劇団早稲田小劇場を創設。また、1961年の処女作『AとBと一人の女』以来、『象』や『マッチ売りの少女』『不思議の国のアリス』など130作にも及ぶ戯曲を発表しています。

原作となる童話「空中ブランコのりのキキ」。そのサーカスで1番人気があったのは、三回宙がえりのできる空中ブランコのりのキキでした。どこの町へ行ってもキキの三回宙がえりを一目見ようと、サーカスはいつでも大盛況。

しかし、キキは、もし他の誰かが三回宙がえりをはじめたら、自分の人気はおちてしまうのではないかという不安がありました。
「お客さんに拍手してもらえないくらいなら、わたしは死んだほうがいい……」
けれども予感は的中し、ある日、他のサーカスでも三回宙がえりが成功してしまうのでした。

他に、童話「愛のサーカス」(山猫理髪店より)。
港町にいかだで流れ着いた、象と、小さな象使いの少年。どこから来たのか、どうやって来たのかはわからず、少年も話すことはありません。街の人々は、象と少年に眠る場所を与え、彼らの生活を見守っていると、少年や象のちょっとしたしぐさや表情に感動し、彼らを思いやる気持ちが、街全体をなごやかにしていました。そんなある日、“金星サーカス”の団長を名乗る紳士を乗せた大きな黒い箱馬車が街に乗り込んできて…。

そして、絵本「丘の上の人殺しの家」。〈人殺しのメニュー〉を沢山用意しているのにも関わらず、もう12年も誰も訪ねてこない〈人殺しの3兄弟〉の元に、「ぜんぶやってみてもらいたいんだよ」という老婆がやってきて…。

この3作品を元に、演劇・歌・音楽・サーカス・ダンス・アクロバットを融合し、楽しくも切ない新作として立ち上げます。さまざまなアートの要素が詰まった、「アートファーム」な作品に期待が高まります!

咲妃みゆ×松岡広大、日本サーカス界を牽引するサーカスアーティストも多数出演し、よりリアルなサーカスの世界観を構築 

脚本を手掛けるのは、劇団「快快」の脚本家・演出家であり第57回岸田國士戯曲賞・最終候補となるなど気鋭の北川陽子さん。そして、同じく「快快」の俳優・振付家・演出家であり劇団活動のみならず演劇・ファッション・ダンスをまたにかける鬼才・野上絹代さんが構成・演出を務めます。

音楽を手掛けるのは、オオルタイチさん。バンドサウンド・ワールドミュージック・雅楽・エレクトロ・打ち込みなどジャンルを逸脱した特異なセンスを持ち、私立恵比寿中学や水曜日のカンパネラなど多くのアーティストやメディアに音楽・リミックス提供し活躍しています。

サーカス演出監修に、ジャグリング&音楽集団「ながめくらしつ」主宰の目黒陽介さん。
異なるジャンルのアーティストとのコラボレーションにも積極的に取り組んでおり、日本では数少ない現代サーカスカンパニーとして評価され、大道芸フェスティバルからワークショップ、アートイベントや舞台公演、学校公演までさまざまなフィールドで活動しています。

2014年に日本人初となる公共劇場との提携公演としてシアタートラムで2部構成の『誰でもない/終わりをみながら』を上演。2016年には同劇場で『心を置いて飛んでゆく』、2018年には夏休みこどもプロジェクト『うらのうらは、』を上演。2019年にはまつもと市民芸術館主催公演として新作『距離の呼吸』を上演しました。

別役作品に登場する、少し不思議で、可笑しくも愛おしいキャラクターを演じる出演者には、『少女都市からの呼び声』でのガラスの肉体を持つ少女・雪子役の演技で第31回読売演劇大賞・優秀女優賞を受賞した咲妃みゆさん。
舞台『ねじまき鳥クロニクル』や8月公開の映画『赤羽骨子のボディガード』に出演の松岡広大さん。咲妃さんと松岡さんはブロードウェイミュージカル『ニュージーズ』で共演経験があります。

玉置孝匡さん、永島敬三さん、田中美希恵さん、谷本充弘さん、馬場亮成さん、山下麗奈さん、そして瀬奈じゅんさんといった魅力的なキャストが揃いました。

更に、フランス発祥とされ、天井から吊るされた布を用いた華麗なアクロバティックパフォーマンスのエアリアルのパフォーマーに吉田亜希さん、長谷川愛実さん。ブランコにはサカトモコさん、ジャグリング、綱渡りには吉川健斗さん、オリジナルのオブジェ、“テトラポット” を用いて、独特の世界観を醸し出す目黒宏次郎さんといった、日本サーカス界を牽引するサーカスアーティストの皆さんも出演し、世界観を確立します。

今回、18歳以下の方々は各回100枚限定、先着順(要予約)で無料招待となっています。※当日要年齢・本人確認。世田谷パブリックシアターチケットセンターおよびオンラインチケットのみ取扱いです。

音楽劇『空中ブランコのりのキキ』は8月6日(火)~ 8月18日(日)に世田谷パブリックシアターにて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

昨年唐十郎さんの作品『少女都市からの呼び声』で読売演劇大賞・優秀女優賞を受賞した咲妃さんの、別役実さん作品への挑戦。繊細かつダイナミックな咲妃さんのお芝居に今回も目が離せません。