6月17日(日本時間)に行われた第77回トニー賞授賞式。ミュージカル作品賞にはアンジェリーナ・ジョリーがプロデューサーを務めた『アウトサイダー』が選ばれ、映画『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフが『メリリー・ウィー・ロール・アロング』でミュージカル助演男優賞を初受賞しました。

アリシア・キーズ&ジェイ・Zも登場!

第77回トニー賞にて、ミュージカル作品賞に選ばれたのは『アウトサイダー』。フランシス・フォード・コッポラ監督が映画化したことでも知られる S・E・ヒントンの青春小説を原作に、アンジェリーナ・ジョリーがプロデューサーを務めた作品です。

両親を事故で亡くした14歳の少年と、家族のように支え合ってきた少年たちの物語で、雨が降る演出や、土・砂利(に見せたゴム製のセット)をステージに敷いた演出など、観客を世界観に誘う仕掛けが詰まっています。

本作はミュージカル演出賞、ミュージカル照明デザイン賞、ミュージカル音響デザイン賞も受賞。演出家のダンヤ・テイモアは、ノミネート5名中4名が女性という女性の躍進が見られたミュージカル演出賞での受賞に喜びを表し、ヒールを履いて歩けないと片手にヒール靴を持ってスピーチするというチャーミングさも。

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ミュージカル・リバイバル作品賞は日本でも上演された『メリリー・ウィー・ロール・アロング』が選ばれました。さらに本作はミュージカル主演男優賞をジョナサン・グロフ、ミュージカル助演男優賞をダニエル・ラドクリフが受賞。本作はウエストエンドを代表する大女優マリア・フリードマンが手がけた新演出版で、2021年には本バージョンにて日本でも上演されています。日本では平方元基さん、ウエンツ瑛士さん、笹本玲奈さんがトリプル主演を務めました。

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スティーブン・ソンドハイムが作詞・作曲を手掛け、“かつて親友だった3人”がなぜ離れ離れになったのかを、時間を遡りながら描くミュージカル作品。ダニエル・ラドクリフは受賞スピーチでメモを持つ手を震わせながら周囲の人々への感謝を伝え、ジョナサン・グロフが主演男優賞を獲得した際は2人の熱いハグが見られました。

演劇作品賞を受賞した『ステレオフォニック』は、人気ロックバンド、アーケイド・ファイアの創始者であるウィル・バトラーが楽曲を書き下ろし 70 年代のロックバンドがスターダムにのし上るまでを描いた作品。

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レコーディングスタジオで新しいアルバムのレコーディングをしている様子を、レコーディングスタジオ内のバンドと、外にいるスタッフとの2場面・同時並行で描くというドキュメンタリー的な演出が大きな評価を得ました。セットには実際に使用されているレコーディングスタジオが使われ、バンドと共にスタジオに篭っているような体験ができる作品となっています。

演劇作品としては史上最多の10部門で13ノミネートを受けており、作品賞、演劇演出賞、演劇助演男優賞など全体で最多の5部門で3受賞しました。

トニー賞の見どころと言えば、各作品によるパフォーマンス。サーカスの超人技が取り入れられた『サーカス象に水を』や、『アウトサイダー』は本作の見どころである雨のシーンも披露。『ファンタスティック・ビースト』シリーズのエディ・レッドメインは『キャバレー』で圧巻の存在感を示しました。

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女性の参政権獲得に向けた活動を題材にし、ミュージカル脚本賞とオリジナル楽曲賞の2 部門で受賞を果たしたミュージカル『サフス』は、プロデューサーを務めるヒラリー・クリントンがパフォーマンスのプレゼンターとしてサプライズ登壇。社会に変化をもたらすことの難しさについて言及しつつ、女性参政権獲得のために戦った人々を称賛し「選挙の年だからこそ、投票の重要性を感じてほしいと思います」と呼びかけました。

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そして今回のトニー賞で一番の熱狂を生み出したのは、『ヘルズ・キッチン』。ブロードウェイのすぐそばで生まれ育ったアリシア・キーズがプロデューサーを務め、自身の半生をミュージカル化した作品で、ミュージカル主演女優賞、助演女優賞を受賞。パフォーマンスでは主演のマリア・ジョイ・ムーンらキャスト陣に加えて、アリシア本人も登場し、同作のフィナーレを飾る「Empire State of Mind」を披露。客席にいるブロードウェイのスターたちも立ち上がって彼女を迎え、共に合唱しました。さらにアリシアと共に同曲をリリースして第53回グラミー賞で最優秀ラップ・ソング賞など2部門を受賞したジェイ・Zがサプライズ登場し、会場は熱狂に包まれました。

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また、チタ・リベラ追悼パフォーマンスでは彼女が出演した数々の名作の楽曲が歌われ、彼女の功績が語られました。彼女の代名詞でもある『ウエスト・サイド・ストーリー』アニータ役を2021年に演じ、3年連続でトニー賞授賞式のホストを務めるアリアナ・デボーズも「America」を踊り、特別なシーンとなりました。

主な部門受賞結果はこちら。
演劇作品賞 『ステレオフォニック』
ミュージカル作品賞 『アウトサイダー』

演劇リバイバル作品賞 『アプロプリエイト』
ミュージカル・リバイバル作品賞 『メリリー・ウィー・ロール・アロング』

演劇演出賞 ダニエル・オーキン 『ステレオフォニック』
ミュージカル演出賞 ダンヤ・テイモア『アウトサイダー』

演劇主演男優賞 ジェレミー・ストロング『民衆の敵』 ※初受賞
演劇主演女優賞 サラ・ポールソン 『アプロプリエイト』 ※初受賞

演劇助演男優賞 ウィル・ブリル『ステレオフォニック』 ※初受賞
演劇助演女優賞 カラ・ヤング 『パーリー・ヴィクトリアス:ア・ノン・コンフェデレート・ロンプ・スルー・ザ・コットン・パッチ』 ※初受賞

ミュージカル主演男優賞 ジョナサン・グロフ『メリリー・ウィー・ロール・アロング』 ※初受賞
ミュージカル主演女優賞 マリア・ジョイ・ムーン 『ヘルズ・キッチン』 ※初受賞

ミュージカル助演男優賞 ダニエル・ラドクリフ『メリリー・ウィー・ロール・アロング』 ※初受賞
ミュージカル助演女優賞 キーシャ・ルイス『ヘルズ・キッチン』 ※初受賞

トニー賞は「生中継!第77回トニー賞授賞式」がWOWOW オンデマンドで配信中。(6/23(日)午後2:59まで)また「第 77 回トニー賞授賞式 字幕版」が6/23(日)午後 3:00~ WOWOW ライブで放送、WOWOW オンデマンドで配信(7/8(日) 午前8:59まで)されます。公式HPはこちら

Yurika

『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフと、『ファンタスティック・ビースト』シリーズのエディ・レッドメインが同年のトニー賞にノミネートにされるという激アツな展開!エディ・レッドメインは受賞こそ逃しましたが、ニュートとは全く異なる妖艶なパフォーマンスに惹き込まれました。『アウトサイダー』は日本でも上演されそうな予感ですね。