人気韓国ミュージカル『ファンレター』の日本初公演チケットが、いよいよ7月に一般発売されます。9月からの上演を前に早くも注目を集める本作の人気ぶりと魅力、期待が高まる日本公演のキャストについてまとめました。
韓国を代表する人気創作ミュージカル、待望の日本初演
『ファンレター』は、韓国を代表する創作ミュージカル。2016年の初演以来何度も再演を重ね、中国でも14都市で上演されている話題作です。韓国公演には英語、中国語、日本語の字幕が用意されていたことから、既に現地で観てハマったという日本人のファンも多く、待ちに待った国内初演と言えるでしょう。
魅力的な登場人物が紡ぐ美しいストーリー、甘美で叙情的な台詞とメロディーが人気を博し、演劇プロダクションのみならず、香港映画の巨匠ウォン・カーウァイ氏が映画化したいと絶賛するなど、大きな話題を呼んでいます。
1930年代、日本の植民地下にあった京城(現ソウル)。
主人公のチョン・セフンは、小説家キム・ ヘジンと正体不明の女流作家ヒカルの共作小説が出版されるという噂を聞き、ヘジンの友人である文豪イ・ユンを訪ねます。
とある理由からセフンはこの小説の出版を止めて欲しいとイ・ユンに頼みますが、彼はこれに応じず、それどころかヘジンがヒカルに宛てた最後の手紙を持っている、ヒカルの謎を明かさないと手紙を読ませないとセフンを揺さぶります。
観念したセフンは、真実を語り始めました。セフンがヘジンへのファンレターを書くときに使っていたペンネームがヒカルであったこと、そしてヒカルは、セフンがもう1人の自分として作り出した女性であったことを ・・・。
セフンとヘジンの背後にある時代の影
小説家志望の青年セフンが、ファンレターをきっかけに京城の文人団体「七人会」の作家たちと交流を深めていく本作。七人会のメンバーであるキム・ヘジンの詩に感銘を受けたセフンは、「ヒカル」という名前で彼にファンレターを送ります。
やがてセフンは七人会の事務所で小間使いとして雇われ、憧れのヘジンと対面することに。そこでヘジンがヒカルのことをこの世で唯一自分を理解し、愛してくれる「女性」だと思い込んでいることを知るのです。
民族意識が抑圧されていた植民地時代の韓国では朝鮮語の使用が許されず、セフンが日本人名のヒカルを名乗り始めたのも、朝鮮語で文章を書くときに怪しまれないようにするためでした。
セフンが敬愛するヘジンは作品が日本政府に検閲されないよう、恐れながら筆を執ります。不自由さを抱えて活動しているときに、本当の自分を理解してくれるヒカルが現れたら・・・恋に落ちるのは無理もありませんよね。
セフンとヘジンの愛しくも切ない関係には当時の時代背景も関わっていて、それが作品に一層深みを持たせていることも、観る人を引きつけます。
実力派俳優陣・演出家が挑む日本版『ファンレター』
日本初の『ファンレター』を上演するにあたり、実力派のキャストが集います。ヘジンに憧れる孤独な青年セフン役は、7月末までミュージカル『この世界の片隅に』に出演中の海宝直人さん。
セフンの分身的存在であるヒカルを演じるのは、先日『レ・ミゼラブル』の現帝劇ラスト公演にファンテーヌ役で出演が発表された木下晴香さん。
ヒカルはセフンの心の変化に合わせて少年から大人の女性へと姿が変わるので、その変貌ぶりも見どころの1つです。
ヘジンの親友イ・ユン役は『レ・ミゼラブル』の木内健人さん、七人会のメンバーのイ・テジュン役は『20世紀号に乗って』の斎藤准一郎さん、キム・スナム役は『トッツィー』の常川藍里さん、キム・ファンテ役は『LUPIN ~カリオストロ伯爵夫人の秘密~』の畑中竜也さんと、話題作への出演が記憶に新しい俳優陣がそろい踏み。
そしてキム・ヘジンは、『モンパルナスの奇跡~孤高の画家モディリアーニ~』で主演を務めた浦井健治さんが演じます。
演出を手掛けるのは、日本の演劇界を代表する演出家の栗山民也さんです。
ミュージカル『ファンレター』は、2024年9月9日(月)から30日(月)まで日比谷シアタークリエにて上演。チケットの一般発売は、7月6日(土)からです。10月4日(金)から6日(日)にかけて、兵庫県でのツアー公演も予定しています。公演日程とチケットの詳細は、作品公式HPよりご確認ください。
登場する文人たちは1930年代の京城で活動していた実在の文人団体「九人会」の文人達がモデルになっていて、彼らのセリフには実際の文学作品が引用されています。 作品の背景となった時代設定や文学を知ることで、本作が持つ暖かさにひときわ感動できるかもしれませんね。