童話作家デビッド・カリさん著、セルジュ・ブロックさんが絵を担当した絵本『ボクの穴、彼の穴。』(出版社:千倉書房)。日本語翻訳は、劇団・大人計画の主宰であり、多数の作品で作・演出・出演している、松尾スズキさんが担当し話題となりました。子どものみならず、大人にも「戦争」について考えさせられる物語となっており、その後2016年、2020年とPARCOプロデュースにて舞台化。そんな作品が今年再演されます!初演・再演に引き続き、今作も翻案・脚本・演出をノゾエ征爾さんが担当。2チーム・ダブルキャストで上演される『ボクの穴、彼の穴。W』を取り上げます。

戦っているのは人対人。それを考えさせてくれる作品。

舞台は、戦場。そして、登場人物は二人の兵士”ボク”と”彼”。二人は穴の中で同じく息を潜め相手の出方を探っていました。

ボクが頼るものは戦場に向かう時に渡された1丁の銃と“戦争マニュアル”。そのマニュアルには、『彼は血も涙もない、本当のモンスターだ』と書かれていました。二人は空腹に耐え、星空に癒され、家族を想いながら、戦友も亡くしもう随分長く独りぼっちになっています。やがて限界が訪れ、ボクは相手の穴に向かいます。

「敵を 殺さなければならない。でないと敵に殺されるからだ。」と考えながら彼の穴に到着したボク。しかしそこに彼の姿はありません。見つけたものは自分が持っているものと全く同じ“戦争マニュアル”。そこには“ボクがモンスターだ”と書かれていました。「ボクは人間だ!モンスターじゃない!ウソばかり書いてある!」と衝撃を受けるボク。

そしてもう一つ見つけたものは、彼の家族写真。楽しい温かい家族写真でした。そこでボクは彼を想像し、こんな家族が待っている人間が、女や子供を殺す?ボクと彼は、同じウソをつかれているということだろうか・・・と。

劇場と出演者を新たに再演!2チーム・ダブルキャストで表現される二人の兵士の物語

翻案・脚本・演出には、劇団「はえぎわ」主宰のノゾエ征爾さん。2012年に第23回はえぎわ公演『○○トアル風景』が第56回岸田國士戯曲賞を受賞、近年も『ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~』(作・演出・出演)、『マクベス』(上演台本・演出)など数々の作品を手掛け、卓越した発想力とユーモアに富んだ演出で奇想天外な世界観を愛情一杯に描いています。

出演者は「ボクチーム」「彼チーム」という2チームのダブルキャストで上演されます。「ボクチーム」は、2008年映画『トウキョウソナタ』で複数の新人賞を受賞して以来、近年も映画・ドラマの話題作に引っ張りだこの井之脇海さん。そして大人計画に在籍、舞台活動を続けながら、大河ドラマや朝ドラにも出演する実力派、上川周作さんのペア。

「彼チーム」は、モデルや俳優として活躍しながら、5月には初主演映画も公開し、着実に瑞々しい存在感を放っている窪塚愛流さん。そして上川さんと同じく、大人計画に在籍、俳優業の傍ら、短編映画の監督や、バンド「貉狢幼稚園」でギター・ボーカルおよび作詞・作曲を担当するなど、幅広い才能をみせる篠原悠伸さんのペア。2チーム交互で上演されることによって、より俳優陣の息遣いや演技が鮮明になり、違う魅力を堪能することができます。

『ボクの穴、彼の穴。W』は東京・スパイラルホールにて、2024 年 9 月 17 日(火)〜9 月 29 日(日) 、大阪・近鉄アート館にて、2024年10月4日(金)〜10月6日(日) まで上演されます。

今回、2チーム・ダブルキャストということで、東京公演のみになりますが、同日の「ボクチーム」「彼チーム」両公演の指定席を割引価格でご購入できる「同日セット券」が販売されます!各日限定数になりますので、どちらのチームも楽しみたい方はぜひご検討ください。その他にも、22歳以下を対象とした「ヤング券」も販売されます!公式HPはこちら

おむ

戦場が舞台の本作、この時代に観ることが凄く大事なタイミングになると感じています。もし迷っている方はぜひ。