7月24日(水)に開幕するブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』。今年で44年目を迎える伝統ある作品で、昨年に引き続いて山﨑玲奈さんが11代目ピーター・パンを務めます。本作にウェンディ役で初出演する鈴木梨央さんに本作の魅力を伺いました。

こうと決めたら揺るがないのは、ウェンディとの共通点です

−出演前と、カンパニーに参加してみて、『ピーター・パン』という作品や演じるウェンディというキャラクターの印象は変わりましたか?
「ウェンディはピーター・パンに憧れを抱いている乙女な女の子というイメージがずっとありました。でも自分がウェンディとして寄り添っていくにつれて、それだけではなく、自分とピーターを照らし合わせて、自分もピーターのように自由に生きてみたいと思う気持ちがあるんだなと感じるようになりました」

−ウェンディに共感する部分はありますか?
「自分がこうと決めたら絶対に揺るがない部分は、私自身と近いのかなと感じます」

−ロストボーイズのお母さん役を演じるなど、ウェンディは他の子どもたちとはまた違う存在ですよね。
「子どもらしい部分もありながら、ロストボーイズの面倒を見ようとする感覚は子どものままでいるピーター・パンとは対照的に描かれているのかなと思います」

−子どもから大人になっていくウェンディに対して、鈴木さんご自身が重なることはありますか?
「そうですね。役者として、子どもの頃は監督やお母さんが求めるものをいかにすぐに対応できるかが求められていたと思うのですが、自分の経験や知識が増えていくにつれて、自分が役についてどう思うか、自分の気持ちを伝えなければいけないと感じる場面が増えていきました。自分なりの考えや意見が出てくるところがウェンディの成長と重なるのかなと思います」

−ビジュアル撮影などで、ウェンディの衣装に身を包んでみていかがでしたか。
「可愛らしいドレスを普段着ることがないので、まだ着慣れないのですけれど…でもウェンディの衣装を着ると、自然とピーターに寄り添いたくなる気持ちが増している気がします」

−先日はキッザニアのパレードに参加するという、本作ならではの体験がありましたね。
「子どもたちが、“ピーターだ!”“ウェンディだ!”と言ってくれたので凄く嬉しかったですし、より一層頑張らなきゃなと思いました。公演にもお子さんがたくさん来てくれると思うので、ウェンディみたいになりたいと思ってもらえるような、ウェンディでありたいなと思います」

日々、ピーターとの愛を深めているところです

−長谷川寧さんの演出はいかがですか?
「稽古が始まる前にワークショップに何回か参加させていただいたのですが、その時にどうしてその台詞が出るのか、どう感情が動いて動きに繋がるのか、感情の部分でのサポートをたくさんしていただきました。稽古でも、動きが心地悪いなと感じるとすぐに気づいてくださって、“この感情はこう動かないね”と一緒にその感情によって出る動き方を考えてくださるんです。そうやって動き方を変えてみると自分の気持ちも動くので、寧さんの身体表現の凄さというのを実感しています」

−パルクールも取り入れた疾走感のある演出ですよね。
「私自身はパルクールには参加しないですが、稽古で見ていると思わず“頑張れ”と声が出てしまいます。熱意や表現したいという気持ちが直に伝わってきて、言葉だけでは伝えられないことが、身体表現にはたくさん詰まっているんだなと、日々発見する毎日です」

−フライングについてはいかがですか?
「体幹が大事で、少し気を抜いてしまうとすぐに体が斜めにぶれてしまうので、難しさを実感しています。でもフライングによってよりネバーランドの世界に行くワクワク感を描いていきたいです」

−ピーター・パン役の山﨑玲奈さんはどのような印象ですか?
「活発でエネルギーに満ち溢れている方で、一緒にいるだけでパワーをもらえます。年齢も近いので、笑いのツボが一緒だったり、仕草がハモっちゃう時もあったり。私たち似ているかもねって言いながら日々楽しく過ごしています。稽古場でも席が近いですし、帰り道が一緒になることも多いので、ピーターとウェンディのシーンについて話し合うことも多いです。日々、ピーターとの愛を深めているところです(笑)」

お客さんの反応を生で感じながら演じられるのは、舞台の魅力

−鈴木さんは映像作品でも多数ご活躍ですが、舞台ならではの魅力を挙げるとしたら何でしょうか。
「5年ほど前に初めて舞台に出演させていただいて、実際に目の前にいる方々に作品を届けるというのがいかに素晴らしいことなのかを実感しました。拍手や笑いや、鼻を啜る音が聞こえてきて、それを生で感じながら演じられるというのは、舞台の魅力だと思います。一番後ろのお客様にまで伝えるぞという気持ちを持つので、より広い視野を持ってお芝居をする感覚があります」

−稽古期間があって、毎日公演があるということで、役の深め方は変わりますか?
「そうですね。同じことを繰り返しているのに、その中でお芝居の仕方や感じ方が変わっていくので、それを感じられるのは凄く楽しいです。最初は今までと違う感覚になった時にびっくりした自分もいたんですけれど、公演を重ねていくうちにそれを楽しめるようになってきました」

−ミュージカル作品は、ストレートプレイ作品とは違う感覚はありますか。
「初めてミュージカルに出た時に、 “歌を歌う”というより、“セリフが歌である”ということを実感して、その表現方法に凄く引き込まれました。演じていても気持ちがより入るので、そこが楽しいです。『ピーター・パン』も楽曲が1つ入るだけでシーンがとても華やかになるので、やっぱり音楽って素晴らしいなと思います」

−観客として作品を観劇しに行くことはありますか。
「先日は吉田羊さんが出演されていた『ハムレットQ1』を観劇しました。ミュージカルは『キンキーブーツ』が好きで、今度また日本でも上演があるので楽しみです」

撮影:山本春花

−ミュージカル『ピーター・パン』ではどのようなことを大切に演じていきたいですか?
「そのシーンごとのウェンディの気持ちが皆さんに伝わるように演じていきたいです。そして、子どもたちには一緒に空を飛んでネバーランドに行く感覚で楽しんでもらいたいですし、ピーターやウェンディを、身近に感じてもらえたら嬉しいです。また子ども達だけでなく、親御さんにも、子どもの頃に感じていた想像力や、色々なことへの探求心を思い出していただけるような時間になったらもっと嬉しいです。ダンスや歌も注目していただきたいのですが、ピーターとウェンディの心情の対比も感じてもらって、観終わった時に誰かに共有したくなるような作品になったら良いなと思います」

青山メインランドファンタジースペシャル ブロードウェイミュージカル『ピーター・パン』は7月24日(水)から8月2日(金)まで東京国際フォーラム ホールCにて上演。その後、愛知・広島・魚津・大阪公演が行われます。詳細はこちら

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Yurika

子役時代から数々の作品に出演してきた鈴木梨央さん。19歳と大人の階段を登られている鈴木さんが、子どもたちに夢を与える『ピーター・パン』で躍動します。撮影・インタビュー時は朗らかに、かつ的確にご自身の考えをお言葉にされるため、思わず「さすがですね」と言葉が出てしまいました。