日々、多くの作品が上演されている小劇場演劇。どれを観たらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。今回は、演劇を愛するAudience編集部が独断と偏見で、7月に上演している作品の中からおすすめ作品を3本セレクトしてみました!

無差別殺人を犯した実行犯と、彼と向き合う弁護士との対話を描くヒューマンドラマ 舞台『サイレントヴォイス』

『サイレントヴォイス』は、2021年に上演された同名の朗読劇を、無差別殺人を犯した実行犯と、彼と向き合う弁護士との対話を描くヒューマンドラマとして、新たに2人芝居としてリメイクした作品です。

白昼の小学校に男が侵入して、多数の児童を殺傷する無差別殺人事件が発生し、弁護士・平健吾は、その事件の実行犯・佐久田冬馬の弁護を担当する事に。

道理なき供述を繰り返す佐久田に振り回され、乱されながら、それでも佐久田を理解しようとする平。「弁護」とは、被告の「声無き声」とは、一体なんなのでしょうか。

脚本を務めるのは、「InnocentSphere」主宰で、ミュージカル『憂国のモリアーティ』の脚本・演出や、『僕のヒーローアカデミア』の脚本、文化庁芸術祭・演劇部門優秀賞を受賞した歌舞伎座『荒川十太夫』の演出など、幅広い作品を手掛ける西森英行さん。

演出を務めるのは、ミュージカル『ダブル・トラブル』やミュージカル『刀剣乱舞  千子村正  蜻蛉切双騎出陣』にて演出補佐を、舞台『黄昏』、 『ライカムで待っとく』では演出助手を務めた、新進気鋭の若手演出家、相原雪月花さんです。

弁護士の平健吾役には、ブロードウェイミュージカル『ハネムーン・イン・ベガス』やミュージカル『アンドレ・デジール最後の作品』等に出演し、10〜11月には『セツアンの善人』への出演が控えている小柳友さん。芯のある演技に定評があります。

被告の佐久田冬馬役には、得意のダンスを武器に『ALTARBOYZ』、ミュージカル『るろうに剣心 京都編』、『ヒプノシスマイク – Division Rap Battle-』Rule the Stageや、地球ゴージャス『星の大地に降る涙 THE MUSICAL』等に出演し、柔軟な演技で高い評価を受ける松浦司さんです。

濃密な空間で上演される骨太な対話劇、舞台『サイレントヴォイス』は、7月31日(水)〜8月4日(日)に東京・浅草九劇にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

「願いを叶えるクジラ」から始まる1つの物語 ももちの世界『日曜日のクジラ』

「ももちの世界」は、社会の歪みや軋みを精緻に描く真摯な姿勢が魅力。近年は、ろう俳優と協働し、手話表現を取り入れた作品づくりに精力的に取り組んでおり、第66回岸田國士戯曲賞最終候補作品にも選出された『華指1832』、プロボクサーを目指すろう者の物語『あと9秒で』を上演。

昨年上演された手話裁判劇『テロ』では演出を担当し、第一回関⻄えんげき大賞の最優秀作品賞、観客投票ベストワン賞を同時受賞しました。また、⻘年座への書き下ろし作品『燐光のイルカたち』、東宝『町田くんの世界』など、外部への戯曲提供も積極的に行っています。

「ももちの世界」主宰で、脚本・演出を務めるピンク地底人3号さんは、生者と死者の境界を曖昧にしながら社会を描く、苛烈な会話劇を得意としています。

『日曜日のクジラ』の上演にあたって、以下のようにコメントしています。
「本作の舞台のモデルとなった海辺の町、宮津は演劇的な魅力でいっぱいです。海の向こうには朝鮮半島とユーラシア大陸があり、山では古くから猪と猿がその覇権を二分しています。浦島太郎伝説もあれば龍神伝説もあります。明智光秀の三女、細川ガラシャが幽閉され、神に出会い、キリシタンになった場所でもあります。そしてご存じのように隣町には自衛隊の基地…
どの要素を取り出しても一本の戯曲が書けるでしょう。

そんな中、僕が注目したのは、室町時代から江戸時代にかけて盛んに行われていた捕鯨です。若狭湾に迷い込んだクジラを、100隻以上の船に乗った漁民が総出で追い込み、銛で仕留めたそうです。夜通し、町には太鼓の音が鳴り響きました。今はもう見られない、その情景を夢想していた時、一つのアイデアが生まれました。
もしクジラが今も、宮津に現れたら?
もしそのクジラが願いを叶えるクジラだったら?
この突飛な着想から物語は始まり、そして思わぬ結末を迎えます」

『日曜日のクジラ』の舞台は架空の日本。
経営者の桐野京子はすでに亡くなった夫の健人から、海岸沿いの国道にある「MOTEL」を引き継ぎ、慎ましやかに暮らしていました。
京子の溺愛する息子・桐野ひかるは自衛官で、第11飛行隊のパイロットでした。しかし、ひかるはある日、飛行中に行方不明になってしまいます。

それから3年の月日が流れたある日、京子の暮らす港町で、神の使いである「願いを叶えるクジラ」の噂が流れ始めます。
「ひかるを私の元に帰してほしい」という願いを叶えるため、京子はクジラを見つけようと、以前、世話をした三人のヤクザ者を街に呼び出します。
神の奇跡に翻弄され、やがて京子は自身の罪を隠し切れなくなり…。

昨年上演された『皇帝X』リーディング公演に出演していた10名の俳優たちが立ち上げる、ももちの世界『日曜日のクジラ』は、7月25日(木)〜30日(火)に東京・雑遊にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

唐十郎の傑作を上演!劇団唐ゼミ☆『少女仮面』

紅テントで知られる唐十郎さんの傑作戯曲『少女仮面』は、1969年に、鈴木忠志さんが主宰する早稲田小劇場に書き下ろされました。『少女仮面』は、唐作品の中でも人気が高く、岸田國士戯曲賞を受賞している作品です。

伝説の大スター・春日野八千代(かすがのやちよ)が営む、地下の喫茶店「肉体」にやってきた、宝塚歌劇団に憧れる少女・貝(かい)と老婆。貝は、喫茶店のお客を装いながら新人女優として入門を果たそうと意気込みますが、そこには困難が待ち受けていました。

店を差配するボーイ主任は、スパルタ演出家のようにボーイたちを叱責し、厳しく歌とダンスを仕込んでいます。貝は、覚悟を決めて春日野の入門を切り出しますが、主任によって一蹴されてしまいます。

しかし、実際に春日野本人が現れると、相手役として見初められ…。

演出の中野敦之さんは、「氷のように燃えている」と題して、上演にあたり以下のようにコメントしてます。
「唐十郎が旅立ってから、新聞にもSNSにも武勇伝が溢れている。
ケンカ、乱闘、機動隊、海外遠征、拳銃、いかにも物騒で血湧き肉おどる。
一方、私が直に接する唐さんはいつも細心で、周到で、心配性で、生真面目のかたまり。
『少女仮面』には、その両方が激しく競り合っている。
まるで、氷と炎の中に交互にこぶしを突っ込むことで必殺の拳を磨くカンフー映画のように。
熱狂の裏に隠された唐十郎の冷静は、初演を託された早稲田小劇場の鈴木忠志さんを、唐さん自身をも抉(えぐ)りながら
劇を鍛えたに違いない。間近に接してきた唐さんの、暑さのうちに秘められたとびきりの冷たさを伝えたい。
氷と炎で研ぎ澄まされた芝居がさらに鋭く、観る人の胸をつらぬくように」

腹話術にタップダンス、能や宝塚歌劇団が意識された場面など、盛りだくさんな作品、劇団唐ゼミ☆ 第32回公演『少女仮面』は、7月25日(木)〜  7月28日(日)に  恵比寿・エコー劇場にて上演です。詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

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