8月3日にシアタークリエにて開幕する音楽劇『ライムライト』。チャールズ・チャップリンの晩年の傑作映画を元に、老芸人の儚い宿命と、残酷なまでに美しい愛を描いた物語です。『ライムライト』が「チャップリン映画の”マイ・ベストワン”」と語る石丸幹二さんが、老芸人・カルヴェロ役に三度目の出演となります。開幕を前に、本作の公開稽古と囲み取材が行われました。
バレエシーンや「テリーのテーマ」を歌唱する2幕冒頭を披露
公開稽古では、2幕冒頭のシーン披露が行われました。1幕で落ちぶれた老芸人のカルヴェロ(石丸幹二さん)は、人生に絶望し自殺しようとしていたバレリーナ・テリー(朝月希和さん)を助けます。そしてカルヴェロの懸命な支えによって回復したテリーは、2幕でエンパイア劇場の舞台のオーディションに挑みます。
劇場の演出家ボダリンクを演じる植本純米さんと、支配人ポスタントを演じる吉野圭吾さんはコミカルにオーディションを展開。作曲家・ネヴィル(太田基裕さん)もテリーのオーディションを見守ります。朝月さんは華麗に軽やかに舞い、まさに美しきバレリーナ・テリーの姿そのものです。
テリーは無事にオーディションに合格。彼女がスターへの一歩を踏み出した姿を、カルヴェロは優しく、そしてどこか切なげに見守ります。石丸さんの柔らかな声で歌われる「テリーのテーマ(“エターナリー”)」は、本番ではより深みのあるシーンになることでしょう。夢を叶えたテリーはカルヴェロに愛の告白をし、求婚しますが、カルヴェロは、自分はもう老人だと取り合いません。
数日後、ネヴィルはテリーに話しかけ、2人は幼い頃に想いを寄せ合っていた仲であったことが分かります。しかしテリーは結婚する予定であることをネヴィルに告げるのでした。
「演劇人として残したいメッセージをこの作品に書き記している」
囲み取材には石丸幹二さん、朝月希和さん、太田基裕さんが登壇しました。石丸さんは本作に3度目の出演。初演時は喜劇王チャールズ・チャップリンの名作の舞台化ということで、上演に漕ぎ着けるまでに大変な道のりがあったようです。
「この作品を演劇として上演するということは世界初でした。それは色々な方の力添えがあってのことで、チャップリンのご遺族の方がそうそう許可しないことなんです。でも日本チャップリン協会・大野裕之さんが熱い想いを持って通ってくださいまして、理解をしていただき、世界初演で上演することができました」と振り返ります。
そしていざ本作に挑むにあたり、「私もいちチャップリンファンではあったのですが、いわゆる髭を生やしてステッキを持って、帽子をかぶって歩いているチャップリンさんのイメージが非常に強かったんです。でも『ライムライト』を改めて見て、演劇人として残したいメッセージをこの作品に書き記しているのだと感じ、それを後世に伝えるのが私たちの役目なんじゃないかという想いを持って上演したのを思い出します」と想いを語ります。
また「1回やって終わりではなく、何度でもお客様に訴えかけていきたいという想いが働き、ことあるごとに再演ができたら嬉しいと言っていた」と念願の再演であることを明かしました。
そして本作に初出演、石丸さんと初共演となる朝月希和さんについては、稽古前に宝塚時代の映像を見られ、「とても踊り・歌・お芝居が熱くて、色々なキャラクターを演じ分けられる彼女と出会えるんだとワクワクしていた」のだそう。そして稽古場でトゥシューズを履いて踊る姿を見て、「本当にびっくりしたんです。誰もが言っていましたけれど、上手い。プリマバレリーナそのものだと実感しました」と絶賛。
朝月さんは恐縮されつつも、本作の出演にあたって「大変光栄で嬉しくてすごく身の引き締まる想い」と語ります。またバレエシーンは公開稽古で「本日初めて皆様の前で踊らせていただいて、本当のオーディションのような感覚になりまして。こういう緊張感があって、胸の高鳴りやソワソワ感があるのかと実感して学ばせていただきました。これを活かしながら、1幕では足が動かなかったテリーが2幕で動く喜びを表現できるようにお稽古していきたいなと思います」と意気込みました。
太田基裕さんと石丸さんはミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』(2016年)以来の共演。石丸さんは太田さん演じるネヴィルについて「とってもチャーミングで、今までのネヴィルとは全然違うキャラクター。作っているというよりも、湧き出している。ご自身のものが上手く役に乗っかって、こういう力を彼は持っているんだなと実感しています」と語ります。
一方、太田さんも「幹二さんが演じるカルヴェロは、幹二さんが重なって、そのものみたいな感覚がありまして…勝手ながら一生カルヴェロやってほしいなと思っちゃうくらい、そこに存在する感じがします。温かい現場で共演させて頂けて感謝の気持ちでいっぱい」と共演の喜びを語りました。
最後に石丸さんから「前回とはまた一味違う、(演出の)荻田浩一さんがかなりタッチを入れていますので、全く同じセリフを喋って同じ歌を歌っているにも関わらず動きが違ったりするので、そういうところも楽しんでいただければ。初めてご覧になる方には、これぞチャップリンが残したかった作品、言葉だと。それを受け取っていただけるよう、私たちも精進していきます」と想いが語られ、会見が締め括られました。
音楽劇『ライムライト』は8月3日(土)から18日(日)までシアタークリエにて上演されます。公式HPはこちら
アカデミー作曲賞を受賞した名曲「テリーのテーマ」やバレエシーンなど、美しさが詰まった作品だと感じました。ここに照明やセットが加わり、作品が完成するのが楽しみです。