俳優兼クリエイター・ 西川大貴さん(作詞)とジャズピアニスト・桑原あいさん(作曲)による新作のソングサイクル・ミュージカル『雨が止まない世界なら』。これまでにポエトリーリーディング、ワークショップ公演、コンセプトアルバムと様々な形で発表してきました。そして、1月6日(金)に『雨が止まない世界なら』のコンサートが開催されました。出演者などについて詳しくはこちらから。

俳優・バンド・観客が一体に!

2020年、コロナ禍で演劇界が公演中止などに追い込まれてしまった時に、ミュージカル俳優・西川大貴さんが書き始めたのが『雨が止まない世界なら』というソングサイクル・ミュージカル(1曲が1話として完結し、楽曲がオムニバス形式で繋がっていくもの)です。ロックダウンで“世界が止まってしまった”状況を、“雨が止まない世界”と表現しています。

開演前から会場では雨の降る音がBGMで流れ続けています。昼公演ではカーテンが閉ざされていた大きな窓ですが、夜公演では始めからフルオープンで大手町の美しい夜景が見える中コンサートが行われました。

コンサートから本作品に参加したのは、染谷洸太さんと清水美依紗さん。

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

染谷さんは「狐雨の頃」を、清水さんは「海に潜ったクジラ」「空に飛ばす手紙」を披露しました。
清水さんが歌った2曲は“ちいちゃん”という女の子が主人公の歌で、かなり物語性が強い楽曲です。

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

そのため、「役として舞台上に立てるから、オープンに表現ができる」と清水さんと西川さん。コンサートではありますが、役者自身ではなく、役として曲を歌うというのはソングサイクル・ミュージカルならではですね。


西川さんは、「今回のコンサートでは、物語性の強い楽曲と、ライブ感の強い作品を混ぜこぜに構成した」と話します。

ライブ感の強い作品、「知ろうとしない」を鈴木壮麻さんが披露。鈴木さんが登場しただけで、会場が怪しげな雰囲気に包まれます。CDの収録ではマイクと正対して呟くように歌っていたという鈴木さん。今回はコンサート形式で観客もいるため、「客席に向かって“知らないでしょ”と歌いかけることができるのが快感」と話しました。

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

続いて「正気を気取った狂人」を歌ったのは、塚本直さん。コンセプトCDでは内藤大希さんが歌われていました。
CDの際は5歳の男の子が歌っているという裏設定があったそうですが、今回は塚本さんが歌うということで、性別も変わったことから、「講談師」のようにストーリーテラーとしてこの物語を語ってほしいという西川さんからのオーダーがあったそう。
ミラーボールが光ったりとかっこいい照明に加え、会場の手拍子も加わり、アーティストのライブに来ているかのような曲に仕上がっていました!

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

そして、一部の最後に元気いっぱいに登場したのは昆夏美さん。CDでは子供達と歌っていた「We’re Singin’ in the Rain」を、昆さんとバンドメンバーのみなさんが一体となって披露しました。

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

本作の世界から言葉を借りるとまだ「雨が止まない」状態の世の中。以前のように一緒に口ずさむことはできませんが、手拍子やその場1回限りのライブ性によって、一緒に楽しむことが出来てとても楽しい楽曲でした。

大手町の夜景をバックに歌う「東京漂流」

15分の休憩を挟んで二部が始まります。2幕の1曲目は独特の世界観が魅力的な「Blue Blue Earth」。
歌うのは雨が止まない合唱団の子供たち!子供たちに「学ばない」と歌いかけられ、ゾクっとした大人の方々は多いのではないでしょうか。西川さんの構成力とアイデア力に脱帽しました。

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

「東京漂流」を披露したのは咲妃みゆさん。ご自身のコンサートや、昨年11月の『THE PARTY in PARCO劇場』でもこの楽曲を歌っており、思い入れのある楽曲です。
声を上げる人々や変わっていく世の中に対して「私は私のままじゃダメですか」と歌うこの楽曲に共感する方は多いのではないでしょうか。

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

咲妃さんも「自分とこの歌の主人公はにていないようでも、同じような部分はどこか抱いていて、そういうところを突っついてくれる」と涙ぐみながら歌う場面も。

実はこの楽曲は大手町を想定して書いていたという西川さん。ビルが立ち並び忙しなく人々が動く街で聞くこの楽曲は、CDで聞いていた時よりも心に訴えかけてくるものがありました。

そして、なんと言っても素晴らしいバンドメンバーによる「NEWS!NEWS!NEWS!」の演奏!歌唱はなしで演奏だけで聴かせるコンサートバージョンにアレンジされており、大迫力の演奏に拍手喝采でした。

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

「CDで聞いていた時に想像していた登場人物たちが目の前に現れた!」という感動の体験となりました。楽曲のアレンジや、CDとは違うメンバーでの歌唱、そしてなんと言っても会場全体で空気を共有して、手拍子などで盛り上がることが出来て、コンサートならではの楽しみ方が出来て嬉しかったです!

写真:KOSUKE USHIZIMA(MASH management)

『雨が止まない世界なら』 in Concert は2月17日(金)までアーカイブ配信中です。詳しくは公式HPをご覧ください。

ミワ

コンサートホールならではの照明が美しく、中でも塚本さんの歌う「正気を気取った狂人」のかっこいいパフォーマンスに圧倒されました。『雨が止まない世界なら』が今後どのような展開をしていくのか、これからも楽しみです!