宝塚歌劇団退団後も舞台を中心に活躍する美弥るりかさんが、主演を務めるミュージカル『ヴェラキッカ』。ほかにも松下優也さんや平野綾さんなどそうそうたるメンバーが出演することでも話題になっています。同作は、脚本・演出家の末満健一さんによる「TRUMPシリーズ」の最新作。しかし、そもそも「TRUMPシリーズ」とは何ぞやという方もいることかと思います。そこで今回は「TRUMPシリーズ」のイロハをお届けします。

吸血鬼が存在する世界で描かれるさまざまな人間模様

「TRUMPシリーズ」は、末満さんのライフワークとして2009年から上演されている舞台作品。全ての吸血鬼の始まりで、永遠の命を持つとされる「TRUMP」を中心に、吸血鬼たちの愛憎乱れる物語が描かれています。

シリーズとはいうものの、ストーリーは1作品ごとに完結。どの作品から見ても楽しめる作りになっています。ただ、「A」という作品と「B」という作品には実は関連性がある、など、複数の作品を見ることで得られる情報も多く存在します。劇中では「繭期」「イニシアチブ」など専門用語が多数飛び交うこともありますが、作品ごとに必ず解説シーンが入るため、初めて見る方でも安心して楽しむことができますよ。

過去にはD-BOYS、ハロー!プロジェクトメンバーなども出演

シリーズ作品の中からいくつかご紹介しましょう。まずは、シリーズの原点ともいえる作品『TRUMP』。廃墟にたたずむ1人の少年が、自身の過去を観客に語りかける形で描かれる青春と絶望の物語です。同作はさまざまなメンバーで上演され、2013年には志尊淳さん、山田裕貴さんら当時のD2(現:D-BOYS)メンバーで上演されています。

続いては『グランギニョル』。特権階級の生まれで、吸血鬼を統括する職務でありながらも、“人間と関係を持った”と疑いをかけられ停職になった主人公。しかしそれは建前で、秘密裏に「ある事件」の解決に挑むことになります。2017年上演の作品で、染谷俊之さん、三浦涼介さんらが出演。衣装が非常にきらびやかで重厚な印象の強い作品です。

最後にご紹介するのは、2014年の上演時、明確に「TRUMPシリーズ」の作品であると明かされておらず、ファンが混乱に陥った『LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-』。舞台は、雨が降り続く森の中にあるサナトリウム。主人公の少女が感じた小さな異変をきっかけに、彼女らの残酷な真実が明かされていく物語です。出演者は全て当時のハロー!プロジェクトメンバー。主演の1人を現在も俳優として活躍している鞘師里保さんがつとめ、ほかにも工藤遥さん、田村芽実さんらが出演しています。

最新作は「シリーズ初の恋愛喜劇」

最新作『ヴェラキッカ』は、同名の一族を中心に、美弥さん演じるノラを「熱烈に愛する」人々の物語。そこへ新たに平野さん演じる「キャンディ」が養子として迎えられることから物語が始まります。

末満さん曰く、同作は「シリーズ初の恋愛喜劇」とのこと。しかし、ストーリーについては先に記載した程度しか明かされておらず、まだまだ未知数な部分が多いです。さらに「TRUMPシリーズ」の作品は、人間関係が一筋縄ではいかないのも特徴です。同作は「一族の話」とあって、特に人間関係がこじれていきそうな雰囲気を感じます。

「TRUMPシリーズ」は、現在一部作品がBlu-ray化の真っ只中。筆者のイチオシは、2021年12月と2022年1月にそれぞれBlu-ray化される『COCOON』2部作です。もちろん今回ご紹介した『TRUMP』などもおすすめなので、『ヴェラキッカ』前に1度見てみてはいかがでしょうか。