タカラジェンヌを養成する宝塚音楽学校は入学試験の競争倍率が高いことで知られ、毎年春になると合格発表の様子がニュースになりますよね。めでたく狭き門を通過した少女たちには、2年間の寮生活と努力の日々が待っています。そんな宝塚音楽学校を連想させるアニメが、架空の歌劇学校を舞台にした『かげきしょうじょ!!』です。

銀橋を夢見る乙女たちの青春ストーリー

未婚の女性だけで結成され、その華やかな美しい舞台で大正時代から今も愛され続ける「紅華歌劇団」。その紅華歌劇団の団員を育成するのが、作品の舞台である「紅華歌劇音楽学校」です。高い競争倍率をくぐり抜け、記念すべき100期生として入学したのは、生まれも育ちもバラバラな少女たち。

物語は、2人の主人公をメインに進みます。主人公の1人である渡辺さらさは、178cmというずば抜けた高身長の持ち主。ベルばらのオスカル役を夢見る天真爛漫なさらさは、入学式でもう1人の主人公である奈良田愛と出会います。愛は国民的アイドル・JPX48の元メンバー。アイドル時代に男性嫌いが原因でトラブルを起こし、男性がいない世界を求めて紅華に入学しました。

人付き合いが苦手で紅華歌劇団にもあまり興味がなかった愛でしたが、さらさと交流することで「彼女と一緒に銀橋(公演のフィナーレで歌劇団のスターが通る特別な通路)を渡りたい」という夢を持ちます。さらさと愛を中心に、個性豊かな100期生たちの成長と奮闘ぶりを描いた青春ストーリーです。

少女漫画に見えて、実はスポ魂!?

歌劇学校というと可憐で優雅なお嬢様の学校を想像するかもしれませんが、実際は非常にストイックな世界。紅華歌劇音楽学校では、入学すると予科生として歌やダンスの稽古に励み、もちろん勉強の成績も落としてはいけません。学校寮で生活し、学校では教師たちからは表現技術を、1年上の本科生からはマンツーマンで礼儀作法を徹底的に叩き込まれます。

とある生徒は、やや太り気味であることを講師に指摘されて過食嘔吐を繰り返すように。「家に帰りたい」とふさぎ込んでしまいますが、自分の歌声に才能を見出してくれた講師と同級生の励ましで奮起し、エトワール(ショーのフィナーレでソロを歌う役割)を目指します。

文化祭の余興で「ロミオとジュリエット」を演じることになった際は、予科生40人の中からたった4人の配役をオーディションで競います。それぞれの持ち味を互いに讃えながら、役を射止めるために表現力の追求に勤しむ生徒たち。ふわふわとした少女漫画の世界に見えて、意外とスポ魂要素が強い作品だからこそ、彼女たちの奮闘ぶりから目が離せなくなるのです。

舞台好きが思わずうなるリアルな歌劇学校の世界

「予科生」、「ベルばら」、「銀橋」などの言葉から、宝塚っぽさを感じた人も多いのではないでしょうか?『かげきしょうじょ‼』にはかなりリアルな歌劇学校の世界が投影されています。紅華歌劇団、紅華歌劇音楽学校の設定は、宝塚歌劇団とほぼ同じ。紅華歌劇音楽学校の生徒も卒業したあとは春、夏、秋、冬という劇団内のいずれかの組に入団しますし、特定の組に属さない専科も存在しています。

「みんなは紅華でなんの役をやりたい?」と聞かれた時のさらさたちの答えは、『ベルサイユのばら』のオスカルや『エリザベート』のトートなど。実在する作品の役名たちです。

また、学校の講師陣の中には元俳優の講師もいます。さらさの担任である演劇講師の安道先生は、劇団四季を彷彿とさせるミュージカル劇団「颯」の元劇団員。在団当時の当たり役が『オペラ座の怪人』のファントムであったことから、生徒たちからは「ファントム」と呼ばれています。現実の演劇界に通じるリアルさは、舞台好きなら引き込まれること間違いなしです。

さきこ

アニメ『かげきしょうじょ‼』は、シーズン1まで全13話のエピソードがAmazonプライムビデオやHuluなどの見放題コンテンツで配信中。スターを夢見る少女たちの青春と情熱、宝塚を彷彿とさせるリアルな世界観は、思わず胸が熱くなりますよ。原作漫画のコミックスは白泉社の漫画雑誌「メロディ」で連載。アニメを見てさらさや愛の活躍ぶりを追いかけたくなったら、ぜひ漫画もチェックしてみてくださいね。