シス・カンパニーが9月に上演するのは、「夫婦善哉」の主人公柳吉とお蝶をモチーフに、北村想さんによって書き下ろされるオリジナル戯曲『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』。演出・寺十吾さんとのタッグにより、予測不能な物語が展開します。本作でシス・カンパニー作品に初出演となる福地桃子さんにお話を伺いました。

シス・カンパニー作品ならではの楽しみを見つけられたら

−『夫婦パラダイス~街の灯はそこに』の脚本を読んでみていかがでしたか?
「最後まで緊張感のある作品で、一気読みしてしまいました。登場人物のキャラクター性がとても豊かなので、数ヶ月後に舞台上でこの作品のセリフを言うんだと思うととても楽しみです。シス・カンパニーさんの作品に出るのは今作が初めてなので、シス・カンパニー作品ならではの楽しみを見つけられたらと思います」

−シス・カンパニーの過去の作品で、印象に残っている作品はありますか?
「2023年の舞台『帰ってきたマイ・ブラザー』を世田谷パブリックシアターで観劇しました。お客様と、舞台にいる皆さんのエネルギーに溢れた作品でした。その後、舞台『橋からの眺め』で高橋克実さんとご一緒し、稽古場で長い時間をご一緒したので、そういった思い出も含めて印象に残っています」

−『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』で演じる静子というキャラクターの印象はいかがですか。
「これから稽古に入るので、きっと印象は変わっていくのだろうと思うのですが、内に秘めた想いがたくさんあるキャラクターなのかなと感じています。セリフを読んでいると、これはどっちの感情でも言えるな、というものも多いので、これから稽古を通して作っていくのが楽しみです」

−役作りをする際に大事にされていることはありますか?
「本番でどういう衣装になるかはまだわからないのですが、ビジュアル撮影で身につけた衣装が、走りやすそうな靴だったり、機能性の高そうな服だったりしたので、そこから彼女の生活を想像したりしています」

−尾上松也さん、瀧内公美さんにはどのような印象をお持ちですか。
「お2人が出演されている作品というのはこれまでに拝見しているので、ご一緒するのが楽しみです。本作では2人の正反対に見えて噛み合ってくる会話がとても面白いと思うので、放って置けないけれども、見守っておきたくなるような2人になるんじゃないかなと思っています。今回はキャストが6名と少人数なので、より集中して時間を過ごせるように思うので嬉しいですね」

“どうぞ”と背中を押される時、毎回引き締まる思いに

−2023年に『橋からの眺め』で舞台初出演をし、2024年には『千と千尋の神隠し』に出演と、舞台作品が続いた近年ですが、舞台ならではの魅力はどういったところにあると感じられていますか?
「何度やっても緊張するところ(笑)。裏で演出部の方に“どうぞ”と背中を押される時、毎回引き締まる思いがするんです。それは何度やっても、昨日同じことをやっていても緊張する。でも、”どうぞ”の手からも勇気をもらえるし、互いにその日のコンディションを探るコミュニケーションになっているような気がします。それはプラスに働いている緊張でもあると思うので、舞台の魅力なんだと思います」

−舞台作品に出演したことで、俳優としての変化はありましたか。
「舞台に実際に立ってみて、お客様が運んできてくださる空気やエネルギーも含めて、作品の空間を作っていく凄さというのはとても感じました。言葉を紡いでいく緊張感はありますが、お客様の存在が助けてくれることの方が多い。ちょっとした反応、呼吸も感じられるからこそ、どう感じられているかは分からないけれど、“何かが届いている”と実感できるので、それが私の助けになりました」

−『千と千尋の神隠し』ではロンドン公演に出演されました。日本の作品を海外のお客様に観ていただくというのは、どんな経験でしたか?
「反応が大きいという違いはあるんですけれど、言語は違っても、お客様の心の動きというのは同じように感じられるし、作品が届くんだなということに感動しました。『千と千尋の神隠し』では特に、様々な技術が進んでいる中であえて役者が体を動かして表現することが多く、それにとても反応してくれているように感じたので、とても私たちのモチベーションにもなりました」

−福地さんが今まで魅了された舞台作品はありますか?
「東京芸術劇場 プレイハウスで2022年に上演された『外は、良寛。』です。ただ立っているだけでも吸い込まれる存在感、圧倒的な力強さに惹かれるものがありました。翌年に『橋からの眺め』で東京芸術劇場 プレイハウスの舞台に立たせて頂いたので、同じ場所でも演出や美術、衣装も含め、その場の空間づくりによって様々な色や音を想像することが出来るんだと実感しました」

−『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』ではどのような経験を得たいと思われますか?
「紀伊國屋ホールは歴史のある劇場で、初めて立たせて頂く劇場なので、劇場やお客様に受け入れて頂けるよう、一生懸命やりたいなと思います。魅力的なキャスト、北村想さんと寺十吾さんのタッグ、シス・カンパニー作品と、凄く恵まれた環境にいさせてもらえる機会だなと思います」

撮影:晴知花、ヘアメイク:曵田萌恵、スタイリング:梅田一秀
衣装:moil(ピアス ¥19,800、右手リング ¥33,000、左手人差し指リング ¥28,600、薬指リング ¥24,200)

『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』は2024年9月6日(金)から19日(木)まで紀伊國屋ホールで上演。その後、9月22日(日祝)から23日(月休)まで愛知・穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール、9月26日(木)から27日(金)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演されます。公式HPはこちら

Yurika

ゆったりと和やかにお話しされるインタビュー時と、グッと世界観に入り込んだような表情を魅せてくださった撮影時のギャップが印象的だった福地さん。『夫婦パラダイス~街の灯はそこに~』ではどのような表情や佇まいを魅せてくださるのでしょうか。