「子どもの体験格差」が問題視されている昨今。開館時から子どもたちに向けたワークショップを多く展開しているのが座・高円寺です。毎秋行われている「劇場へいこう!」プログラム、今年は『夏の夜の夢』『小さな王子さま』の2作品を上演します。

座・高円寺 あしたの劇場「劇場へいこう!」

開館時より、子どもたちに向けたワークショップや親子で楽しめる公演や、絵本の読み聞かせなど、子どもを軸にしたプログラム「あしたの劇場」を行なっている座・高円寺。「劇場へいこう!」は、子どもたちに優れた舞台芸術を見てもらうために、毎年秋に行なっているプログラムで、中学生以下の子どもは無料で観劇でき、子どもたちが等しく芸術に触れる機会を創出しています。

今年は、岩崎う大さんが上演台本を手掛け、シライケイタさん演出による新作『夏の夜の夢』と、一昨年に発表したイタリアの演出家テレーサ・ルドヴィコさんの作・演出による『小さな王子さま』を上演。 

「あしたの劇場」では「劇場へいこう!」のほかにも、絵本の読み聞かせや子ども向けのワークショップなど、年間を通してさまざまなプログラムを行なっています。

本当に大切な人と人のつながりを訴える2作品

9月21日 (土)まで上演中の『夏の夜の夢』は、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を原作とし、2年連続岸田國士戯曲賞にノミネートされ演劇界で注目されている「かもめんたる」の岩崎う大さんがコメディ要素たっぷりに脚色。そして、昨年7月に座・高円寺の芸術監督に就任した、シライケイタさんが演出と作詞を務めています。

月夜の森を舞台に、恋と妖精と魔法を通して、多様な価値観を描いています。台本を担当した劇団かもめんたるの岩崎う大をはじめ、出演者の出自もさまざま。観た後で、楽しいけれど、人と人との関係や、人が生きる社会について考えるきかっけにできるような、ユニークな作品をめざしています。

主のシーシュースの結婚式が間近にせまるアテネのお屋敷。そこに家来がやってきて、自分の娘ハーミアが親の希望とは違う男と結婚するので、罰してほしいとたのみます。シーシュースはハーミアに、自分の気持ちを通すか、あきらめるかを選ばせようとするのですが…。 

『小さな王子様』はサン=テグジュペリの『LE PETIT PRINCE』をもとに書下ろした作品。イタリアの演出家テレーサ・ルドヴィコさんと美術家ルカ・ルッツァさんにより、2022年に誕生しました。

撮影:梁丞佑

地球温暖化、経済中心社会、同年に始まったロシアのウクライナへの侵攻など、人の存在が希薄になってきている社会に向け、人と人との交わりの大切さ、暖かさ、想像することの大切さを子どもたちに伝えるために、やさしさと強さをもって問いかける作品です。

無限な宇宙をイメージしたシンプルで美しい舞台、身体性豊かな出演者の表現力、カラフルな照明で、物語世界をスペクタクルに描き出します。

撮影:梁丞佑

小さな星に住む小さな王子さまは、他の世界を知るために、自分の星にたった一輪のバラを残して旅立ちます。長い旅の途中で王子さまが出会ったのは、いばりんぼうの王様、うぬぼれ屋、ビジネスマン、点灯夫、学者、種をまく人、たくさんの動物たち。

感じたこと、考えたこと、たくさんの話を飛行士とするうちに、王子さまが気づいたのは…。小さな星に住む小さな王子さまが、子どもも大人も「目には見えない大切なもの」を探す旅へと誘います。 

座・高円寺 秋の劇場15 あしたの劇場「劇場へいこう!」、『夏の夜の夢』は9月21日 (土)まで上演中 。『小さな王子さま』 は9月27日(金) から10月12日(土)まで座・高円寺1にて上演されます。詳細は公式HPをご確認ください。

ミワ

子どもたちのみならず大人にとっても、演劇に触れて、お芝居のことから発展して、自分達の暮らしのことまで考える良い機会になるといいなと思います。