PARCO PRODUCE『粛々と運針』や、まつむらしんご監督によって映画化された『あつい胸さわぎ』の戯曲を手掛けた横山拓也さん。そんな横山さんの演劇ユニットiakuの次回公演『あたしら葉桜』が4月15日に開幕します。

岸田國士の名戯曲『葉桜』を現代の恋愛観でアップデート『あたしら葉桜』

「iaku」は、劇作家・演出家の横山拓也さんによる演劇ユニット。鋭い観察眼と綿密な取材を元に立ち上げられている緻密な会話劇が特徴です。

代表作に、第15回日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞した『エダニク』、第65回岸田國士戯曲賞にノミネートされた『The last night recipe』、PARCO PRODUCE『粛々と運針』。そして、まつむらしんご監督によって映画化された『あつい胸さわぎ』などがあります。

『あたしら葉桜』は、劇作家・岸田國士さんの初期の名作『葉桜』を原案に、現代の母娘像を描いたという40分程度の短編作品。『葉桜』の朗読との2本同時上演で約70分と、観やすい上演時間となっています。

『葉桜』は、大正時代、岸田國士が妹のお見合いを題材に書いたと言われる戯曲です。
娘の見合い相手の態度が気に入らない母。娘の気持ちも煮え切らない。母の部屋で、娘の結婚を巡ってとりとめのない会話が繰り広げられるという内容。

『あたしら葉桜』では、『葉桜』が発表された大正時代の恋愛観やタブーを現代に置き換え再構築。
娘にはパートナーである恋人がいて、その恋人がドイツへ赴任するのに付いていくかどうかを母親に相談するという設定に翻案されています。

横山さんは「口語セリフの第一人者とも言われる岸田國士。彼の初期作品の数々から、当時に生きる人たち(庶民よりは少し裕福な人たち)の日常のニオイが嗅げる面白味は、戯曲が時代を越えて存在する意義を感じさせてくれます。『葉桜』(朗読)と『あたしら葉桜』の連続上演は、二つの時代と、二人の作家を並べて見つめる企画です」と公式HPでコメントしています。

横山さんのコメントにもあるように、岸田國士さんは口語セリフのパイオニア。横山さんによって描かれる関西弁口語の戯曲と並べることで、エンタテインメント作品として昇華します。

岸田國士さんは、大正〜昭和時代に活躍した劇作家・小説家・演出家です。
一度は父親と同じ軍人を志し、陸軍士官学校に進みましたが、文学に親しみ、軍隊生活に反発。
退役し、東京帝国大学仏文科へと進学。その後、フランスに近代演劇の研究のため留学しました。

帰国してからは、フランスで学んだ演劇観を日本へと持ち込みます。
1937年に文学座を創設。新劇運動の指導者として大きな功績を残したため、新潮社が「岸田演劇賞」を創設。第8回から白水社に移り「岸田戯曲賞」に変わり、現在も新人劇作家の登竜門となっています。岸田國士戯曲賞についての記事はこちら

『チロルの秋』『紙風船』『牛山ホテル』『沢氏の二人娘』などの戯曲を発表。『由利旗江(ゆりはたえ)』『暖流』といった小説の執筆や、フランス戯曲の翻訳も多く残しています。

演出を務めるのは、iakuで何度も横山さんとコンビを組んできた上田一軒さん。
上田さんは、俳優としてNHKの連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』 に出演したり、自身の劇団「スクエア」では演出家としても俳優としても活躍しています。

出演者は、関西の実力派女優の林英世さんと、松原由希子さん。
林さんは、第20 回(2017 年度)関西現代演劇俳優賞・女優賞を受賞。舞台『セパレートテーブルズ』『FATZER』『メアリー・ステュアート』、NHK連続テレビ小説『カーネーション』『舞いあがれ!』、映画『パッチギ!』などに出演しています。
松原さんは、第20 回(2017 年度)関西現代演劇俳優賞・女優賞の奨励賞を受賞。舞台 朗読劇『アネト~姉と弟の八十年間の手紙~』、壁ノ花団『ランナウェイ』、 NHK連続テレビ小説『おちょやん』ドラマ『探偵ロマンス』『科捜研の女』などに出演しています。

舞台『あたしら葉桜』は、4 月15 日(土)~4月23 日(日) に東京・三鷹市芸術文化センター 星のホール、4 月28 日(金)~4月30 日(日) に大阪・in→dependent theatre 2ndにて上演です。公式HPはこちら

ミワ

古い作品で名戯曲と聞くとなんだか畏まってしまいますが、現代戯曲へと翻案されることで作品へと触れやすくなりますね。