三浦大輔さんが2年ぶりに書き下ろす舞台『僕らの時代じゃない』が、2026年10月に東京で上演されます。今を生きる大人3人が居酒屋に集い、やがて語り出す“本当”とは何か、その目で確かめてみませんか。

居酒屋での会話から人間の存在意義を問う意欲作

舞台『僕らの時代じゃない』は、令和に生きる大人たちが時代の価値観の狭間でもがきながら、対話を通じて“本当”をさらけ出していく様子を描いた会話劇です。

三者三様の人生を歩んできた高校の同級生3人が40代になって再会し、居酒屋で飲み始めるところから物語は始まります。馴染みのある人も多いだろう居酒屋を舞台に、ワンシチュエーションで繰り広げられるのは、些細でとりとめのない会話。本作では、その何気ないやり取りから「時代」の真意に迫り、「人間」の根源的な存在意義を探っていきます。

<あらすじ>
東京のとある駅近くの平凡な居酒屋。そこに正装姿の40代らしき男女、菅原裕一(森田剛)、鈴木里美(鈴木杏)、今井伸二(峯田和伸)が現れる。彼らは高校の同級生・加藤勇と橋本香の結婚式と2次会に出席した後、たまたま目に入ったこの居酒屋にやってきた。

加藤と香は、ともに国民的な人気芸能人。かつては妬みややっかみからSNSで激しい誹謗中傷を受けるも、そんな出来事を乗り越えたビッグカップルの結婚はマスコミも大いに取り上げ、世間を賑わせていた……。

飲み物が来るまで、それぞれの近況を報告し合う3人……。

俳優の夢をあきらめ結婚するも離婚し、シングルマザーとして子供たちと生活する里美。

プロのミュージシャンを目指すもバンドが解散し、東京から遠く離れた実家の自営業を手伝っている今井。

そして自主映画の監督でありながら、バイトで生計を立てている菅原。

高校時代、特段、仲がいいというわけではなく、どことなく気まずい空気が流れる中、店員が飲み物を持ってきてぎこちなく乾杯。

居酒屋に寄ったのは、実は里美と今井が菅原に聞きたいことがあったからだった。

そんな3人が並んでいる光景は、かつてのテレビ番組「ボクらの時代」を想起させ……。

作・演出は鋭い感性で人間の本質に迫る異才・三浦大輔

本作は、演劇と映像の両分野で才能を発揮する三浦大輔さんの最新作です。

脚本家・演出家として現代人の抱える葛藤や苦悩、欲望など人間のリアルな内面を鋭く追求し、観客の心を揺さぶる作風が持ち味。1996年に結成した演劇ユニット「ポツドール」では全ての本公演にて脚本・演出を担当し、2005年の舞台『愛の渦』で第50回岸田國士戯曲賞を受賞しました。

また、2021年の舞台『物語なき、この世界。』や2022年に再演された舞台『裏切りの街』など多数の外部作品に携わりながら、海外での演劇祭にも参加して高い評価を得ています。

一方で、自身の作・演出による『愛の渦』や『そして僕は途方に暮れる』といった舞台作品については、監督と脚本を務めて映像化に挑戦。表現の媒体を問わず、創作活動に力を注いでいます。

三浦さんは2024年に作・演出を手掛けた『ハザカイキ』にて、芸能界を舞台にマスコミやタレントなど“時代の価値観の変容に踊らされる人々”の揺れ動く心情を、独自の視点で浮き彫りにしました。

それから2年、今度は普通の生活を送る一般人や世間に目線を合わせ、人間を翻弄する「時代」というものに一層深く向き合います。玉石混交の情報が氾濫するなか、アップデートされる価値観に適応していくことが求められる現代社会。本作の登場人物たちはなにも特殊な能力や経歴を持っているわけではなく、目まぐるしく変容する社会の“どこにでもいる誰か”です。

そして、居酒屋という限定的かつ身近な空間に置かれるからこそ、彼らの語る“本当”が切実にリアリティを帯びていきます。観客はまるで自分が居酒屋にいる他の客、あるいは4人目として、会話に耳を澄ませているかのように感じることでしょう。

演出家が太鼓判を押す俳優3名が初共演

キャストには、作・演出の三浦さんが「この挑戦的な作品にふさわしく、演技力はもちろん唯一無二な個性と各々確固とした軸のある理想的な3人」と評する顔ぶれが揃いました。それぞれ個性の光る3名が初めて共演するのも、本作の大きな見どころです。

自主映画の監督兼フリーターの菅原裕一役は、ジャンルを問わず多彩な作品で存在感を放つ森田剛さん。2005年に劇団☆新感線の舞台『荒神〜AraJinn~』で初主演を果たして以来、舞台から映像作品に至るまで幅広く出演を重ねています。また、2016年に単独主演した映画『ヒメアノ〜ル』は国内外で高い評価を獲得しました。近年の出演作に2024年の映画『雨の中の慾情』や2025年の舞台『ヴォイツェック』、2026年の舞台『砂の女』など。2026年10月には主演映画『見上げてごらん』の公開が控えています。

シングルマザーの鈴木里美を演じるのは、ドラマに映画、舞台と多岐にわたって活躍する鈴木杏さんです。これまで、蜷川幸雄さんやケラリーノ・サンドロヴィッチさん、松尾スズキさんなど著名な演出家の作品に登場し、確かな実力を示してきました。2020年の舞台『真夏の夜の夢』と一人芝居『殺意 ストリップショウ』での演技が評価され、第28回読売演劇大賞の大賞・最優秀女優賞、第55回紀伊國屋演劇賞の個人賞、さらには第71回芸術選奨 文部科学大臣新人賞を受賞。本作で約2年半ぶりに舞台の世界に戻ってきます。

森田さんと鈴木さんが三浦さんの作品に出演するのは、今回が初めて。2人とも卓越した表現力の持ち主だけに、演出とどんな化学反応を起こすのか楽しみになります。

夢破れて田舎の家業を手伝う今井伸二役は、ロックバンド「銀杏BOYZ」のボーカル・ギターであり俳優でもある峯田和伸さんです。音楽活動と並行して数々の映像作品に参加しており、直近では2026年3月に公開された映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』に出演していました。実は、峯田さんが初めて舞台に立った作品が、三浦さんの作・演出による2014年の舞台『母に欲す』。2021年の舞台『物語なき、この世界。』に続き、三浦作品への出演はこれで3回目とあって、お互いに厚い信頼を寄せています。

舞台『僕らの時代じゃない』は、2026年10月8日(木)から27日(火)まで東京・紀伊國屋ホールにて上演されます。11月には愛知と京都にも巡演予定です。公式HPはこちら

もこ

舞台が居酒屋であること、登場人物が紆余曲折を経ながら現実世界でなんとか生きていることに鮮烈なリアリティを感じました。彼らの会話を聞いた時、自分の内側からどんな感情が沸き上がってくるのか確かめてみたくもあり、少し怖くもあるのですが、皆さんはどうでしょうか。