「人生にとって本当に大切なモノとは?」そんな事をテーマに作り上げられた映画『ソング・トゥ・ソング』。音楽を中心に進むストーリーには、本物のミュージシャンらの登場や実際の音楽フェスティバルのシーンなど見どころが満載です。今回は、そんな本作の魅力に迫っていきます。

舞台は音楽の街。夢と愛の狭間で交差するそれぞれの思い

音楽の街、オースティン。何者かになりたいフリーターのフェイ(ルーニー・マーラさん)は、成功した大物プロデューサーのクック(マイケル・ファスベンダーさん)と密かに付き合っていた。そんなフェイに売れないソングライターBV(ライアン・ゴズリングさん)が想いを寄せる。一方、恋愛をゲームのように楽しむクックは夢を諦めたウェイトレスのロンダ(ナタリー・ポートマンさん)を誘惑。愛と裏切りが交差するなか、思いもよらない運命が4人を待ち受けていた…。

公式サイトより引用

まずこの物語を語る上で欠かせないのが、アーティストが集う街オースティンという場所。アメリカのテキサス州にあるこの街は「世界のライブ音楽の都」と称されているとか。それもそのはず、街中にはライブハウスが溢れ音楽のフェスティバルも1年を通して盛んに開催されているそうです。

実際に行われていたミュージックフェスティバルの撮影シーンは、オースティンという街だからこそ実現できたのかもしれません。そんなアーティスティックでミュージックシーンが活発な街で繰り広げられるストーリーは、やっぱりどこか独創的です。

現実へと向かう、揺れる大人心

夢を終わらせ、現実を生きようとする大人の絶妙な心理を巧みに描き出したのは、巨匠テレンス・マリックさん。そしてカメラマンには、数々の撮影賞を受賞する撮影監督エマニュエル・ルベツキさんです。

カメラワークもドキュメンタリーテイストで、セリフも詩的。よくあるヒューマンドラマだと期待して観ると、驚いてしまいます。しかし、この作風こそが夢からの絶望や孤独を見事に表現できている魅力のひとつでもあるのです。

名優と伝説的ミュージシャンの贅沢なコラボ

名優ぞろいの主役級の4人。このキャスティングを見ただけでも期待せずにいられません。そこに、本物のミュージシャンも登場するという豪華っぷり。

フリーターのフェイを演じたルーニー・マーラーさんは実際の音楽フェスティバルで、ロックバンドであるブラック・リップスの舞台で生演奏を。そしてパンクの女王と称されるパティ・スミスさんと一緒に演奏するシーンは、本作ならではの見どころとなっています。

また、ソングライターのBVを演じたライアン・ゴズリングさんの恋人役にはシンガーソングライターのリッキー・リーさんが。本作が初演技というリッキー・リーさんの演技にも注目です。そのほか、イギー・ポップさん、ジョン・ライドンさん、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどの豪華なミュージシャンが本人役として出演し作品を盛り上げています。

歌から歌へ、繋ぐストーリー

これまでの紹介の通り、音楽が重要なキーポイントとなっている本作。キャラクターとの接点を表す挿入歌も大切なファクターとなっています。劇中歌のプレイリストを公式サイトが公表しているので、ぜひ聞いてみてください。

 

4人の心情が静かに詩的に、そしてナレーションという表現方法を用いて映し出す。そこに流れる音楽と、切り取られたようなシーンの積み重ね。本物のフェスティバルに、本人役のミュージシャンたち。そのさまざまな要因の構築が、まさに歌から歌へと繋がるような美しい音楽の曲線のようであり、『ソング・トゥ・ソング』の魅力なのではないかと思います。

菜梨 みどり

事前にどんな作風なのか知ったうえで観たので驚きは少なかったですが、たしかにこの作風は知らずに観たら驚くだろうなと思いました。 しかし、なんといってもキャストもミュージシャンも豪華の極みです。それだけでも観る価値があります。 現実離れした詩的な台詞なはずなのに、なんだかリアルっぽい。そうさせるのはきっとナレーション形式という手法の成せる技なのかと感心してしまいました。ゆっくり流れるストーリーで、退屈してしまいそうな雰囲気も否めなかったのですが、その微かに感じるリアルっぽさにいつのまにか感情移入している自分がいました。 芸術的な感覚がお好みな方にはおすすめしたい作品です。